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2022.05.27

根菜たっぷりでお腹満足!埼玉県「かてめし」【ニッポン地元メシ#21】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

「彩の国(さいのくに)」、の愛称で親しまれている埼玉県。
この愛称は「四季折々の色彩豊かな自然に恵まれ、産業、文化、学術など様々な分野で発展する多彩な国」という意味が込められているそうです。

埼玉県といえば東京へのアクセスが良く、それでいて海に面していないからこそ山地・丘陵地・平野部の自然を堪能できるのが魅力。
また漫画やアニメの舞台となった場所が多く、県内各所に「アニメの聖地」がありますし、日本の近代の父とも呼ばれる渋沢栄一ゆかりの場所は、観光スポットとしても多くの方に親しまれています。

このように自然と文化が融合する彩の国・埼玉県には多くの郷土料理がありますが、第21回はその中でも秩父地域の「かてめし」を紹介します。

かてめしとは

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/33_6_saitama.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/33_6_saitama.html)

埼玉県の中でも、秩父地方の郷土料理として親しまれている「かてめし」。
これは、ずいきや大根、にんじん、干し椎茸などの様々な野菜や芋類が加えられた混ぜ込みご飯のことです。

主食である「米」は、かつてとても貴重なものとされていました。
稲作が盛んではない土地はもちろん、稲作が盛んな土地でも米は地代として地主に払う換金作物であったことから、作っても自分たちでたくさん食べるほど手元に残るというものではありませんでした。
そこで考えられたのが「かてめし」だったのです。

少ない米でもお腹いっぱいに

作り方は、野菜を炒めて砂糖、醤油、みりん、酒などで調味し、炊いたご飯と混ぜ合わせるだけととてもシンプルです。
野菜やきのこ、芋類が入ることでカサ増しができ、少ないお米でも満足感があるのです。

また、家庭ごとに食材やベースとなるごはんの味付けが変わるというのも特徴。
同じ埼玉県でも、北部の給食で出されるかてめしは酢飯をベースに他の食材を混ぜていくのが定番ですが、南部ではごはんや薄茶飯にずいき(里芋の茎・芋がらともいう)を混ぜたものが定番といわれています。

野菜とお米の混ぜ込みご飯と言うと日常食のイメージですが、かてめしに加える野菜類の味付けには、当時はハレの日の調味料だった醤油が使われていました。
そのため山の神(山仕事をせずに山に立ち入らない日)や桃の節句、八十八夜、お盆の入り、えびす様などの行事食として供されることが多い郷土料理でもあります。

秩父地方では山菜を混ぜ込んだ「山菜かてめし」というものが伝わっていることから、山の恵みをたっぷりと楽しむことができる郷土料理でもあります。

かてめしの栄養

まずはお米。お米にはデンプンが含まれているため、脳や身体のエネルギーとして必須の栄養素が摂れます。

ずいきやにんじん、大根等の野菜類や椎茸(きのこ類)には食物繊維が豊富。
空腹時に糖質の多いものを食べると、血糖値が急上昇・急降下し、このような状態が続くと血管へのダメージにもつながります。しかし食物繊維の多い食材を食事のはじめに食べたり、ごはんに混ぜ込めば、いつもよりよく噛んでゆっくり食べられるだけでなく、糖質の吸収を穏やかにすることができます。

さらに近年、健康意識が高まる中で重要視されているのが野菜不足。
かてめしのようにごはんに混ぜ込むことで、主食のついでに自然と野菜の摂取量が増えるのも嬉しいポイントですね。

油揚げをプラスすると、コクも加わるため、より満足感が高まる一品になるでしょう。
様々な具材を混ぜることでお米をカサ増しすることはもちろんですが、お米単体で食べるよりも様々な栄養素を摂ることができ、寒暖差の大きい土地で元気に過ごすための「糧」となっているのかもしれませんね。

埼玉県の野菜にも注目!

埼玉県では数多くの野菜が栽培されていますが、伝統野菜があるのをご存知でしょうか?
武蔵野台地では品質の高い「川越いも」、秩父地域ではシャキシャキとした食感が特徴でお漬物や炒め物にもピッタリの「しゃくし菜」、そして比企(ひき)地域では江戸時代から栽培されていた「のらぼう菜」などが主な伝統野菜として知られています。
機会があれば、このような伝統野菜も試してみてくださいね。

気温の変化や環境の変化に負けない身体づくりをするために、食事を整えるのはとても重要なことです。
野菜の摂取量をなかなか増やせない…という方は、かてめしのようにいつものごはんにひと工夫をして、野菜の摂取量を自然と増やしてみてはいかがでしょうか。
具材がたっぷりで味がついているため、普段はもちろん、行楽シーズンのお弁当にもおすすめですよ。

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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