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2022.05.02

高い致死率の麻疹。その本当の怖さと確実な予防法とは?【病のトリセツ#2】

kencom編集部

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子どもに限らず大人でも命に関わることがあるという怖い病気・麻疹(はしか)。世界保健機関西太平洋地域事務局によると、日本では麻疹の排除状態にあることが認定されていますが、今後海外との行き来が自由になると、注意が必要です。麻疹は、感染力が非常に強い上に致死率も高いので、予防には十分気をつけなくてはいけません。

自分の身を守るために、そして大流行を引き起こさないように、麻疹の概要と予防法を正しく知っておきましょう。

麻疹ってどんな病気?

麻疹は、特徴的な発疹と高熱を引き起こす感染症です。高い致死率があるのも特徴で、衛生面が整った先進国であっても患者の約0.1~0.4%が死亡するというデータがあるほど。子どもはもちろん、大人でも油断はできません。

なぜこれほど麻疹が危険なのかというと、麻疹ウイルスには、免疫細胞に感染するという特性があるのが原因。本来であれば身体を防御してくれる免疫機能が、麻疹感染によって一時的にストップしてしまうために、細菌などの二次感染を引き起こしやすく、症状が重症化する傾向にあるのです。

麻疹は空気感染・飛沫感染・接触感染を経路とし、非常に強い感染力があるため、マスクを着用していても完全に予防はできません。

麻疹の症状

潜伏期

麻疹の潜伏期間は通常10~12日間程度。この時期には自覚症状はありません。

カタル期

症状が出始めるカタル期は、一番感染力を持つ期間です。38度程度の発熱が2~4日間続きます。この時、鼻水や喉の痛み、くしゃみなどといった症状も現れます。症状は風邪に似ており、明確に麻疹とは診断がしづらい時期でもあります。

コプリック斑出現

発症してから数日過ぎると、少し熱が下がり、頬の内側に周囲が赤く腫れた白色のコプリック斑が生じます。このコプリック斑は麻疹の特徴的な症状で、これが現れたら間違いなく麻疹に感染しています。

発疹期

コプリック斑が出現した翌日頃から、カタル期よりもさらに高い熱が出始めます。また、耳の後ろや首から少し膨らんだ赤い発疹が出現し、全身に発疹が広がります。発疹と高熱は3~4日続き、一番辛い時期。そして、ここが一番命の危険があり、治療にあたる医師が一番緊張感が高まる時です。

回復期

薄い赤色の発疹は時間が経つにつれて色が濃くなり、やがて退色していきます。麻疹ウイルスは上皮にまで障害を起こすため、一時的に色素沈着が残る場合があります。

気をつけなくてはいけない合併症

一時的に免疫機能がシャットダウンされた状態になる麻疹は、細菌感染や重症化のリスクが高いのが特徴。そして、患者の約30%に、脳炎や、細菌性の肺炎・喉頭炎などの合併症がみられます。

また、麻疹発症後数年経ってから発症する「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という合併症にも注意が必要です。麻疹感染後、数年から数十年かけて脳の中でウイルスが増えていき、学力や集中力の低下に始まって様々な神経症状が現れる怖い合併症です。知能や運動機能が徐々に低下していき、どんなに健康であっても死に至る可能性があります。残念ながら、このSSPEに、現在のところ有効な治療法はありません。

麻疹の治療法

残念ながら、現時点で麻疹そのものに対する特効薬は存在しません。予防接種を受けないまま麻疹に感染してしまうと、高熱に対しては解熱剤が処方されるなど、対症療法でしのぐことになります。

麻疹の予防はワクチン一択!!

ワクチンは、麻疹の唯一の有効な予防策です。麻疹ワクチンは他の感染症のワクチンと比較して、効果も安全性も抜群に高いと言われています。

麻疹ワクチンを1回接種すると93~95%の人が免疫を獲得でき、2回目を接種することでその割合は97~99%に上がると言われています。2回接種することで、強固な免疫を獲得し、生涯を通して麻疹から身を守ることができるのです。現在日本では、1歳児と小学校入学前の1年間の2回の定期接種が導入されています。

自分のワクチン接種歴を確認しよう

麻疹ワクチンの施策は時代によって変化しています。現在は幼児期に2回の定期接種が定められていますが、年代によっては1度しか接種していない方や、未接種の方もいらっしゃるはず。特に1990年4月1日以前に生まれた方はワクチンを2回接種していない可能性があるので、ぜひご自分の母子手帳を確認してみてください。

接種歴が確認できなければ抗体検査へ

母子手帳が確認できず、接種歴が分からない場合、一度抗体検査をしてみることをおすすめします。抗体検査は医療機関で数千円で受けることが可能。

また、自治体によっては、麻疹の抗体検査が無料、もしくは助成金が出る場合もあります。不安な方はお住まいの自治体のwebサイトで補助制度があるか調べてみて。

もし麻疹患者と接触してしまったら?

もし、麻疹患者と接触して感染の可能性が高まってしまったら、どうすればいいのでしょうか?

実は、接触から72時間以内であれば、ワクチンの接種が有効です。ワクチン未接種で、麻疹患者と接触がわかったら、最寄りの医療機関で、すぐにワクチンを打ちましょう。ワクチンには高い予防効果があるので、接触後でも感染を食い止められる可能性が高まります。

不安な方は今すぐ接種を

麻疹は恐ろしい病気ですが、社会全体が十分に免疫を持っていれば流行を防ぐことはできます。自分の命の危険だけでなく、周囲に感染させるリスクからも守る麻疹ワクチン。接種歴のある人が追加接種しても全く問題はありません。不安な方はぜひ一度病院で抗体検査をうけてみましょう。

本記事は過去のkencom記事をもとに再編集・編成したものです

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