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2019.09.04

あなたの麻疹予防は万全?感染を食い止める最強のワクチンを接種しよう!

kencom公式ライター:松本まや

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2018年に沖縄県で麻疹(はしか)が流行したきっかけは、たった一人の旅行客でした。そこからあっという間に県内だけで約100人の患者に感染が広がりました。
麻疹は非常に感染力の強い病気です。一方で、ワクチンを打つことで高い予防効果が得られる病気でもあります。
大流行を引き起こしてしまわないために何をすべきか、麻疹の予防策について国立感染症研究所の竹田誠先生に詳しく教えていただきました。

■そもそも麻疹ってどんな病気?予防のためにも一読を!

感染力が高い麻疹はどう防ぐのが最善なのか

麻疹はインフルエンザ以上の感染力

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麻疹の恐ろしさは、致死率の高さに加え、空気感染、飛沫感染、接触感染と経路とする非常に強い感染力にあります。

例えば、毎年冬になると猛威を振るうインフルエンザも感染力が強いと言われていますよね。しかし、インフルエンザは感染者のくしゃみや咳で飛び散った飛沫で感染する「飛沫感染」なので、基本的にはくしゃみや咳が届く範囲にいなければ感染することはありません。
一方、麻疹ウイルスは、より広範囲にいる人にまで感染のリスクがあります。また、感染力が強いため、マスクを着用していても予防は困難です。

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では、麻疹ウイルスはどのように身体に広がっていくのでしょうか。

ウイルスはヒトや動物に感染するとき、それぞれ決まった細胞の分子に結合する特性を持っています。この特定の分子を「受容体」と言います。

麻疹の場合は、免疫細胞に発現する「SLAM」という分子を受容体とします。口から体内に入ったウイルスは免疫細胞に結合し、やがてリンパ組織を経由して全身にくまなく運搬されていきます。免疫細胞は上皮の近くにも存在するため、今度は上皮細胞の別の受容体「ネクチン4」を使って上皮でも増殖して、ウイルスが放出されやすい状態になります。

日本の麻疹は輸入感染がメイン

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では、近年国内ではどの程度流行しているのでしょうか。海外旅行先で感染し、国内に持ち込まれたというニュースを耳にした人も多いかもしれません。
実は、日本に定着している麻疹ウイルスはここ10年ほどで無くなりました。麻疹の患者は2008年時点では1万例以上が報告されていたものの、2009年には93%減少しています。
最近では海外旅行客によって持ち込まれるなどの輸入例や、輸入例からの感染事例のみが確認されるようになり、2015年に世界保健機関(WHO)によって「麻疹の排除状態にある」と認定されています。

この背景のひとつには2008年に施行された指針で、2回の予防接種の徹底が図られたことがあります。

予防・対策にはワクチンが抜群の効き目を発揮

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麻疹のワクチンは、感染症に対する他のワクチンと比較しても、効果も安全性も抜群に高いと言われており、唯一の有効な予防策です。ワクチンを1回接種すると93~95%の人が免疫を獲得でき、2回目を接種することでその割合は97~99%に上がると言われています。

1回でも95%の人に免疫がつくものの、2回目の接種が必要な理由は2つあります。1つは、残りの5%の人に可能な限り免疫をつけるため。もう1つは、接種から十数年が経過して免疫が減衰してしまうのを防ぐためです。
2回接種することでより強固な免疫を獲得し、生涯を通して麻疹から身を守ることができます。

ワクチンを接種することによって、10%前後の人に発熱、1〜5%の人に発疹が見られますが、重篤化することはほとんどなく、安全性も認められています。
現在日本では、1歳児と小学校入学前の1年間の2回の定期接種が導入されており、初回については1歳になったらなるべく速やかに受けることが望ましいとされています。

幼児はSSPEのリスクもあるため、特に周囲で麻疹の流行が起こっている時には生後6ヵ月以降であれば接種をしても問題ありませんが、体内に母親由来の抗体が残っていて十分な結果が得られないこともあるので、その場合にも1歳以降に2回受けることが必要です。

ワクチンが効かないと勘違いしがちな「修飾麻疹」とは

麻疹のワクチンを打っていても、免疫が弱まっていたり不十分だったりすると、通常より軽症で、典型的な症状とは少し異なる「修飾麻疹」を発症してしまうことがあります。
日本では現在ワクチンの接種率が高くなり、抗体を持たない人は少なくなりました。そのため、免疫がないまま感染し、真性の重症な麻疹を発症する人が少なくなり、比較的軽症の修飾麻疹が確認される割合が高くなりました。

このような事例が増えると、「麻疹のワクチンの効き目が落ちた」などと誤解をしてしまいそうになりますが、本当に怖い真性の麻疹の患者は大きく減少し、また修飾麻疹は通常の麻疹と比較して命の危険もほとんどないと言ってよく、ワクチン接種に大きなメリットがあることに変わりはありません。

麻疹の特効薬は存在しないが、ワクチンは効果的

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もしもワクチンをしていない状態で麻疹が発症してしまったら、どのような治療を受けることになるのでしょうか。残念ながら現時点で麻疹そのものに対する特効薬は存在しません。予防接種を受けないまま麻疹に感染してしまうと、高熱に対しては解熱剤が処方されるなど、対症療法でしのぐことになります。

では、麻疹患者と接触してしまったら、諦めて天命を待つしかないのでしょうか。実は接触から72時間以内であれば、ワクチンの接種が有効と言われています。
接触後でもワクチンが有効とは意外に感じるかもしれませんが、それほど効き目の強いワクチンということなのです。
もし接触が明らかになったら速やかに対応するようにしましょう。

あなたは大丈夫?予防接種の確認を!

麻疹に関する予防接種の施策は時代によってかなり変遷してきました。その結果、タイミング悪く、ワクチンを打たないままの方もいらっしゃいます。
特に、1990年4月1日以前に生まれた方は2回のワクチン定期接種の対象ではなく、1回しか接種がされていなかったり、1度もワクチンを打っていなかったりする可能性があります。

海外の流行国などで万が一麻疹に感染すると、自らの命を危険に晒すだけでなく、周りの多くの人を危険に晒すことになります。ワクチン接種をしていなかったり、接種歴が分からない人は、渡航前には必ずワクチンを打つようにしてください。

社会全体が十分に対策できていれば、麻疹の流行は完全に防ぐことができます。そのためには全員が確実に免疫を確保する必要があります。

過去のワクチン接種歴は、母子手帳を確認することで簡単に調べることができます。記録で確認できなければ、抗体検査を受けることも可能です。万が一、過去に既に接種済の人が追加で打ってしまっても全く問題ありませんので、一度病院で相談してみましょう。

竹田誠(たけだ・まこと)先生

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国立感染症研究所 ウイルス第三部 部長
1992年3月信州大学医学部卒。信州大学小児科、東京大学医科学研究所、ノースウェスタン大学/ハワードヒューズ医学研究所、九州大学大学院医学研究院を経て国立感染症研究所に入所。2009年より現職。発熱発疹性ウイルス、呼吸器感染症ウイルスを中心に研究を行っているほか、麻疹・風疹の専門家として厚生労働省などと連携し対策を講じている。

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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