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2019.09.04

「子供の病気」と侮るなかれ、実は身近な感染症「麻疹」ってどんな病気?

kencom公式ライター:松本まや

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2018年3月の沖縄県での流行や、今年に入ってから大阪府での感染確認などが記憶に新しい麻疹(はしか)。感染力が非常に強く、致死率も高いとても危険な病気です。東京五輪に向けては政府が大会関係者の予防接種を推奨するなど、対策には万全が期されています。
大流行を引き起こさないために、病気の概要と必ず知っておくべき予防法を、国立感染症研究所ウイルス第三部部長の竹田誠先生に教えていただきました。

竹田誠(たけだ・まこと)先生

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国立感染症研究所 ウイルス第三部 部長
1992年3月信州大学医学部卒。信州大学小児科、東京大学医科学研究所、ノースウェスタン大学/ハワードヒューズ医学研究所、九州大学大学院医学研究院を経て国立感染症研究所に入所。2009年より現職。発熱発疹性ウイルス、呼吸器感染症ウイルスを中心に研究を行っているほか、麻疹・風疹の専門家として厚生労働省などと連携し対策を講じている。

名前の割に知られていない「麻疹」を解説

麻疹ってどんな病気?

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麻疹は感染力の非常に強いウイルスによって引き起こされる感染症で、先進国であっても患者の約0.1~0.4%が死亡する恐ろしい病気です。患者が低栄養状態だったり、衛生状態が悪かったりする発展途上国では致死率は5%近くになると言われています。患者の20人に1人が亡くなってしまう計算です。

江戸時代には「命定めの病」と呼ばれ、天然痘と並んで大変恐れられてきました。

麻疹が危険な理由には、免疫細胞に感染するという特性が背景にあります。感染が全身の免疫臓器や組織に広がり、本来であれば身体を防御してくれる免疫機能が抑制された状態に陥ってしまうため、細菌などの二次感染を引き起こしやすく、命を落としてしまうことがあるのです。

麻疹の症状は初期の診断が難しい

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では、麻疹ウイルスに感染するとどのような症状が出るのでしょうか。
通常10~12日間の潜伏期間を経て、免疫のない人は必ずといっていいほど発症します。

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初めは38度程度の発熱が2~4日間続き、鼻水や喉の痛み、くしゃみなどといった風邪のような症状が現れます。
この期間を「カタル期」と呼びます。実はこの期間が最も感染力が強いのですが、症状が風邪などの他の病気と混同されやすく、診断がしづらい時期でもあります。

数日すると、やや熱が下がり、頬の内側に周囲が赤く腫れた白色の斑点が生じます。
これは「コプリック斑」といい、麻疹の特徴的な症状で、これが現れたら麻疹に感染したと診断できます。

コプリック斑が生じると翌日頃にカタル期よりもさらに高い熱が出て、耳の後ろや首から少し隆起したような赤い発疹が始まり、全身に広がります。
この時期を「発疹期」と呼びます。麻疹は感染するとつらい症状が長く続く病気ですが、その中でもこの時期が最も命の危険が大きく、治療をする医師にとっても緊張感が高まる時期です。発疹と高熱は3~4日続き、その後徐々に回復します。

当初薄い赤色をしていた発疹は時間が経つにつれて色が濃くなり、やがて退色していきます。麻疹ウイルスは上皮にまで障害を起こすため、弱った皮膚に一時的に色素沈着が残る場合があるのが特徴です。

死につながる危険な合併症

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麻疹に感染した場合に、特に注意すべきなのが合併症の発症です。既に説明した通り、免疫細胞が感染して、一時的に免疫機能がシャットダウンされたような状態になるため、細菌などへの感染と、感染してから重症化するリスクが高まります。
全体では患者の約30%が合併症を発症すると言われており、主な死因は脳炎や、細菌性の肺炎・喉頭炎です。

数年以上経ってから発症する合併症「SSPE」も警戒すべき

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麻疹に感染してから数年以上経って、初めて発症する合併症もあります。回復後もウイルスが脳に残留してしまったことによって発症する「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という中枢神経疾患です。
発生頻度は諸説ありますが、患者の数千人~1万人に1人程度が発症すると言われ、特に感染時に2歳未満だった場合に発症するケースが多くみられます。

脳には麻疹ウイルスが感染しやすい細胞が存在しないので、ウイルスはすぐに増殖することができません。一方で免疫細胞によって退治もされることもないため、脳の中に残り、月日をかけて少しずつ増えていき、感染したことも忘れたような頃になって発症するのです。

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SSPEを発症すると、学力や集中力の低下に始まって様々な神経症状が現れ、知能や運動機能が徐々に低下していきます。残念ながら現在根治できる治療法はなく、進行の速さは人によって異なるものの、どんなに健康だった人でも死に至る恐ろしい合併症です。

恐ろしい麻疹はワクチンで予防を!

こんな残酷な病気も引き起こしかねない麻疹ですが、高い効果を持つワクチンによって比較的簡単に予防ができます。
非常に強い麻疹の感染の仕組みと、流行を引き起こさないために誰もが接種すべきワクチンの概要や施策の変遷について、後編でご紹介していきます。

■麻疹を予防せよ!予防接種の効果と必要な施策はこちらから

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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