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2021.12.24

脳梗塞のリスクも!冬こそ注意すべき「かくれ脱水」

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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乾燥しやすい冬は、気づかないうちに水分不足になってしまう「かくれ脱水」をおこしやすいと言われています。

新型コロナウィルスの影響でマスクが必需品となった昨今。マスクをしていると喉の渇きを余計に感じにくくなりますし、外出時にマスクを外して水分補給をとることすらハードル高く感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今年の冬は「かくれ脱水」のリスクが余計増すことが予想されます。

水分は人間に欠かせない成分

水分は私たち人間の体内に最も多く含まれる成分です。

性別や年齢での差もありますが、胎児では体重の約90%、新生児では約80%、子どもでは約70%、成人では約60~65%、老人では50~55%が水分と言われています。
このように年齢を重ねるとだんだん減っていく傾向にありますが、人間の約60%は水分でできているといわれており、全体の1/3は細胞内、2/3は細胞と細胞の間に存在する細胞間液と血液に存在しています。

水分は、血液やリンパ液の中では栄養素などの多くの物質を全身に運ぶために欠かせないものです。また、あらゆるものの中でも比熱が大きく外気の影響を受けにくいため、身体をあたたかく保ってくれます。

さらに皮膚の乾燥を防いだり、冬場特に心配な細菌やウイルスの侵入を防ぐのにも一役買っているのです。

1日に必要な水分はどれくらい?

普通に生活していても、人が1日に排出する水分は約2.5Lといわれています。(尿:約1,500ml、汗・呼気:約900ml、便:約100ml)。

これを補うために、一般的な生活をしている人では食物で約1,000ml、飲料で約1,200ml、代謝水(エネルギー代謝の時に生まれる水分の事)で300mlの水分を摂取していて、合計で2.5L。ちょうどバランスがとれる計算になります。

冬は知らず知らずのうちに乾燥していく

夏場は汗をかくため、水分補給の意識も高いもの。では冬はどうなのでしょうか。

冬は気温が低く、空気が乾燥します。
人が生活していくのに快適な湿度は40~60%と言われており、冬に快適に過ごせる湿度はおおよそ50%前後と言われています。しかし湿度は1日の中で大きく変化し、最小湿度は10%~20%になることも珍しくありません。

空気の乾燥がすすむと、不感蒸泄(皮膚や呼気からの水分蒸発のこと)によって失われる水分量が増えるという報告もあるのです。汗で失われるわけではないので水分補給の意識も低くなり、結果かくれ脱水を引き起こしてしまうことがあるのです。

脱水症状による危険性

脱水症状になるとどうなるのでしょうか。
まず皮膚が乾燥しやすくなり、口腔内の乾燥、倦怠感やめまい、立ちくらみなどの症状が表れはじめます。さらに悪化すると、血管に血栓が生じるため、脳梗塞や心筋梗塞、エコノミークラス症候群などにつながる可能性もあります。
脳梗塞は1年を通しておこる病気ですが、国立循環器病研究センターでは「特に高齢者・心原性脳塞栓症・重症例では比較的寒い季節の発症が有意に多くなる」といっています。
少しでもリスクを下げるためにも、症状を感じたらこまめな水分補給が大切だということはいえるでしょう。

脱水を防ぐコツは?

それではかくれ脱水になりやすいタイミングと防ぐ方法をお伝えします

定期的な水分補給

かくれ脱水予防の基本はこまめな水分補給です。

1日1.5L程度を目安に2~3時間おきに水分を摂るように気を付けてください。
特に高齢者の場合は、喉の渇きなどを感じにくく脱水に気づかない傾向にあります。周囲の人も気を付けて意識的に水分を摂取できるようにしてください。

就寝前後の水分補給

見落としがちなのが就寝中の不感蒸泄です。

人は睡眠中に500〜600mlの水分を失うと言われています。寝る直前にこれだけの水分を摂ることは難しいですが、150~200ml程度(コップ1杯くらい)を飲んでおくと安心です。また、朝起きたときにも同様にコップ一杯程度の水をとりましょう。

朝食は大切な水分補給

朝食をとるのも大切です。

食事というと栄養素やカロリーに目がいきがちですが、水分補給という大切な役割も担っています。食材によるので一概には言えませんが野菜には90%程度、ご飯には約60%程度の水分が含まれています。食事による栄養素だけでなく、大切な水分補給の場でもあるのです。

入浴・飲酒時も忘れずに

入浴後や飲酒後なども要注意です。

入浴や飲酒でも脱水が進みます。入浴は汗をかくので分かりやすいかもしれませんが、飲酒は水分補給になっているのでは?と思う方もいらっしゃいます。
もちろん水分ではあるのですが、アルコールには利尿作用があり、水分を体外に排出してしまいます。

アルコールは体内で分解され、さらに二酸化炭素と水になり、尿や汗、呼気等になって排出されるのですが、その分解過程で必要となる酵素の働きに水が必要となるのです。そのため飲酒後は脱水になりやすく注意が必要です。

風邪予防にも◎湿度を保つ工夫を

水分補給はもちろん大切ですが、それと同時に乾燥から身を守り、水分の蒸発を防ぐということも大切です。
エアコンを使う場合は特に乾燥しやすいといわれているので気をつけましょう。加湿器を使ったり、洗濯物や濡らしたタオルを室内に干すのも有効です。

湿度を保つことは風邪予防にも。ウイルスは乾燥した状態では空中に浮遊する時間が長くなり、逆に湿度の高い状況で地面に落下すると言われています。冬は免疫が低下しやすい時期、ウイルスを体内に入れないことも大切です。湿度を保ち元気に過ごしましょう。

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前田 量子(まえだ・りょうこ)

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管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、最新著書『おうちで一流レストランの味になるロジカル洋食』(全て主婦の友社)が好評発売中。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

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