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2021.08.17

小児にも新型コロナの後遺症は起こるのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナウイルス感染症に罹患すると、しばらくの間後遺症が残るケースが多いそうですが、これは子どもにも当てはまる現象なのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2021年7月15日ウェブ掲載されたレターですが、新型コロナウイルス感染症罹患後に、持続する症状の頻度を解析した短報です。

▼石原先生のブログはこちら

だるさや微熱が持続する新型コロナの後遺症

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、だるさや微熱などの症状が長期間持続することや、肺疾患や生活習慣病などの全身疾患が、新たに生じることも多いことは、これまでにも多くの報告があります。

主にヨーロッパでは、COVID-19罹患後症候群という概念で、初発から12週間以上持続する症状を定義していましたが、以前ご紹介したアメリカの研究では、より広く発症から21日以上持続する体調不良を、シンプルに後遺症と表現していました。

それ以外にロングCOVID(long COVID)、というような表現も使用されています。要するに、まだ統一された概念ではないようです。

小児にも後遺症はあるのか

新型コロナウイルス感染症には、年齢による発症の違いがあります。ただ、この新型コロナウイルス感染症罹患後症候群に、年齢による発症の差があるのかという点については、これまであまりデータがありませんでした。

今回の研究はスイスにおいて、55か所の学校を無作為に抽出し、そこに通う6歳から16歳の小児1355名に、CIVID-19の抗体検査を施行し、陽性であった109名と陰性であった1246名の、その後の経過を比較検証しています。

その結果、抗体が陽性であった109名のうち4%に当たる4名と、抗体が陰性であった1246名のうち2%に当たる28名に、1つ以上の症状が12週間以上に渡って持続していました。抗体陽性例で持続が見られた症状は、3%でだるさ、2%で集中力の低下、2%で睡眠不足、などとなっていました。

小児の後遺症はそれほど多くなさそう

このように、今回の検証では新型コロナウイルス感染症後に持続していた症状は、6歳から16歳くらいの小児においてはそれほど頻度の多いものではなく、また、抗体陰性のコントロールと比較して、明確に上昇しているとは言えませんでした。

ただ、今回のデータは、ある時点で抗体陽性であった学生のうち、明らかに過去の感染を除外しただけなので、厳密にその時点で感染したことが、証明されている訳ではありません。

従って、今回の結果のみで小児における新型コロナウイルス感染症の後遺症は少ない、というように言い切ることは出来ませんが、現時点で後遺症が多いと言う根拠はない、という言い方はして問題はないように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36