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2021.07.30

夏こそ食べたい鍋料理!「博多水炊き」のウンチクと簡単美味しい作り方【ニッポン地元メシ#1】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

全国47都道府県の、美味しくて身体に良い郷土料理を紹介する本企画。

第1回は、濃厚な豚骨ラーメンや焼き鳥、明太子や高菜、もつ鍋など気になるグルメがたくさんある福岡県から、「水炊き」をピックアップします。

素材の味の究極形「水炊き」

水炊きとはその名のとおり「水」だけを用いて食材を煮込む鍋料理です。
中でも博多の水炊きはよく知られていますが、普通の鍋料理と大きく違うのは、スープに塩や醤油などの味を付けないということ。そのため、食材からのうまみを最大限に活かした鍋とも言えます。博多の水炊きは別名「博多煮」とも呼ばれます。

博多水炊きのルーツは、水炊きの発祥店として知られている「水月」の創業者が、料理の勉強のために行った香港で、西洋料理の「コンソメ」と中国料理の「鶏を炊き込む」を組み合わせてアレンジしたことが最初と言われています。
福岡県は日本の中でも韓国や中国と物理的な距離が近く、西洋との貿易が盛んだった長崎も近いことから、様々な国の文化の影響を受けやすい地域でもあります。

他のものを取り入れ、自分たちの口に合うように工夫をし、今でも多くの人に愛されている料理があるというのはとても歴史を感じますね。

水炊きはとってもシンプル

水炊きのルーツを知ると複雑に感じますが、実はとてもシンプルで自宅でも簡単に作ることができます。

水炊きの基本であり、鍵を握っているのが「鶏肉」。
普通のもも肉でも十分美味しいのですが、博多水炊きでは皮と骨がついたままのぶつ切り肉を使います。これはスーパーでも「水炊き用」として置いてあるところもあります。

作り方のコツ

まずは水と骨付きの鶏肉を使ってコトコトと煮込みます。少なくとも1時間以上煮込みたいところですが、時間をかけられない!とのことであれば短くてもOKです。時間をかけて煮込むと、濃厚なうま味はもちろん水炊きらしい白濁したスープができます。

骨付きの鶏からしっかりとうま味がでたスープが完成したら、鶏団子やお好みの野菜を入れていつもの鍋のように煮込んでいくだけ。とてもシンプルな鍋なのです。
どうしても鶏のぶつ切りが手に入らないという場合は鶏ガラや手羽元、手羽先などでも近いものを作ることは可能です。手羽を使うと参鶏湯のような仕上がりです。

とにかく、水炊きには「皮」と「骨」がついている鶏肉を使うということが大きなポイント。
野菜類はお好みですが、キャベツやうま味成分を含むきのこ類がおすすめです。鍋の定番、白菜は水分が多すぎてスープが薄まりがちなので水炊きではキャベツが良いでしょう。

柑橘の香り豊かなぽん酢が最高に合う!

水炊きを食べる際は、ぽん酢が一般的です。市販のぽん酢でももちろんOKですが、季節によってだいだいやカボスなど風味豊かな柑橘類を使ったぽん酢もおすすめです。

夏の時期であれば、青ゆずをキュっと絞るとさわやかに仕上がります。さらに柚子胡椒を加えてアクセントをプラスするのもお忘れなく。
スープに味を付けないので煮詰まっても塩辛くなることもなく、最後まで美味しくいただけるのも水炊きの良さです。

〆スープの一滴まで味わって

鍋料理には〆(しめ)が欠かせません。骨からじっくりと煮込んでうま味を引き出したスープが特徴の博多水炊きは、まさに最後の1滴まで味わってほしい鍋。

〆の材料はちゃんぽん麺やごはんなどお好みですが、ごはんを加えて溶き卵を回しいれるだけで、うま味をふくんだスープがごはんに染み、卵でコクをプラス。お好みで、食べるときにも使ったぽん酢を少々加えると濃厚なのにあっさりとした味わいの雑炊ができます。

またスープに溶け込んだ栄養素も余すことなく取り入れられるのも〆の良さです。

水炊きの栄養

写真提供:福岡市

写真提供:福岡市

骨付き鶏肉と野菜のみで完成するといっても過言ではない博多水炊き。

鶏肉がメインということもあり、身体の血や肉となるタンパク質がしっかりと摂れます。

一緒に加えるキャベツはビタミンCがとても豊富な野菜で、100gあたり41mgも含まれています(成人が1日に必要なビタミンCは100mg)。鍋物にすることでカサが減り量もたくさん食べられますし、スープに溶け出た栄養素も余すことなくいただくことができます。芯にも栄養が含まれているので、薄く切って鍋に加えましょう。

夏にも食べたい鍋!祭りのパワー源にも

福岡・博多の夏の風物詩として、櫛田神社の御祭神・祇園さまに奉納する神事「博多祇園山笠(はかたぎおんやまかさ)」は有名です。この時にも、男性陣のパワーの源として水炊きが食べられます。
神社では基本的に四つ足の動物を食さないということもあり、鶏肉が選ばれたのではないかという説もあるそうです。
鍋=冬のイメージですが、柔らかくて食べやすい春キャベツが出回る時期や、ここぞと力を発揮したいときにも水炊きを食べてみてはいかがでしょう!

また、夏は麺類や冷たいものばかり食べてしまったり、冷房によって知らず知らずのうちに手足が冷えていることはありませんか?身体が冷えると、体温や代謝が下がったり巡りが悪くなったりすることで免疫力低下の原因にも。
そういった現代人ならではの環境においても温かい鍋物、博多の水炊きはおすすめです。

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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