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2018.11.16

【医師監修】インフルエンザの最適な診断のタイミングと治療ホームケア<パパ小児科医の子ども健康事典 第7話>

ウーマンエキサイト

前回はインフルエンザの概要と予防法についてお話しました。では実際にかかった、もしくはかかったかもしれない時はどうすればよいでしょうか?

検査のタイミングは?

流行期に発熱があると、「インフルエンザかも?」と心配になり受診されると思いますが、まずインフルエンザウイルスの迅速検査(鼻綿棒)は発症から24~48時間が望ましいということを押さえておいてください。※1

中には、「まだ発熱したところなので検査できません」と検査を断られた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。それは発熱してから時間が経過しないとインフルエンザ検査の意義が乏しいからです。

例えば、発熱してから2時間後に受診して検査結果が陰性だった場合でも、感染しているのか、していないのか判断できません。あまりに短時間の検査では空振りが増えてしまいます。

仮に発熱してからすぐに検査をしても、陰性の場合は翌日熱があれば再検査することになり、大きな負担となります。

また受診した待合室などでインフルエンザやあるいは他の感染症をもらってしまう可能性があり、発熱してすぐの受診はリスクが高いと考えられます。

インフルエンザの検査は必須ではない

実は診断に検査は必須ではありません。鼻綿棒の検査感度も100%ではないため、流行期に発熱、関節痛や寒気などの症状があり、診察上疑わしい場合は検査せずにインフルエンザと診断することがあります。(注:医師により判断は異なります)。

治療薬の特徴は?

インフルエンザと診断された場合、さまざまな抗インフルエンザ薬がありますが、ウイルス増殖を抑制して発熱の期間を短くすることが期待できます。ウイルスが増えきってからでは効果が乏しいため、抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内の投与が原則となります。

主なお薬の特徴と副作用

主なお薬の特徴と副作用、使い所についてまとめました。

■タミフル®(オセルタミビル)

内服薬で1日2回、5日間飲みます。1歳未満でも使用可ですが、主な副作用として嘔吐(24.3%)や下痢(20.0%)といった消化器症状があります。※2 

以前は10代のお子さんでタミフル®によると思われる異常行動が心配され、厚生労働省から投与を控える措置がなされていました。しかし異常行動はインフルエンザそのものによる症状であり、タミフル®とは直接関係ないことから、今後、措置は見直される方針です。

■リレンザ®(ザミナビル)

吸入のお薬で1日2回、5日間吸入します。確実に吸うことができれば効果的ですが、吸入薬なので5~6歳以降でないと難しいものです。

■イナビル®(ラニナビル)

リレンザ同様吸入薬ですが、1日吸入してその後効果が1週間持続する便利な薬です。しかしその反面、吸入に失敗すると(例えば吸入後咳き込むなど)効果が十分得られなくなってしまうというデメリットもあります。
※吸入薬のリレンザ、イナビルに共通して言えることですが「乳糖」が添加されているため、牛乳アレルギーの場合は稀にアレルギー症状が出る場合があり注意しなければなりません。

■ゾフルーザ®(バロキサビル)

平成30年3月から発売された最も新しいお薬で、1回の内服で治療が終了する点がメリットです。今シーズンの流行で使用が増えると思われますが、新しい薬のため医師の使用経験が少ないということが一つのデメリットです(私もまだ使用していません)。

■ラピアクタ®(ペラミビル)

唯一の点滴のお薬です。1歳未満も使用できます。脳症や肺炎など入院治療が必要な場合や、基礎疾患のために内服や吸入ができない場合などに選択されます。点滴のため使用できる医療機関は限られている点に注意してください。

また漢方薬の麻黄湯を使うこともあります。上記の抗インフルエンザ薬とは作用ポイントが異なりますが、治療効果のエビデンスがあるため使用を考慮していいと思います。併用も可能です。※3

インフルエンザのお薬はさまざまあり、医師や施設によっても方針が微妙に異なります。ここにあげた情報を参考にしつつ、治療方針は担当医とご相談ください。

ホームケアと再受診のタイミング

インフルエンザにだけ特別なケアはなく、基本的には発熱時の対応と同じです。(第3話第4話参照)。

倦怠感が強く食欲が落ちるので水分をこまめに取り、脱水の対策をしてください。
タミフル®の消化器症状が出た場合は受診して薬の変更を考慮します。発熱が続く場合には肺炎や中耳炎などの合併症を伴ってきているかもしれませんし、「ぼーっとする」「わけのわからないことを言う」などの症状がある場合は、脳症の可能性があり受診した方がいいでしょう。

インフルエンザは倦怠感が強く受診そのものも負担となりますので、この記事を読んで、受診すべきなのか?タイミングはいつがよいか?などの目安にしていただけたら幸いです。

参考資料
※1 Performance characteristics of a rapid immunochromatographic assay for detection of pandemic influenza A (H1N1) virus in children.

※2 タミフル添付文書

※3 A randomized, controlled trial comparing traditional herbal medicine and neuraminidase inhibitors in the treatment of seasonal influenza.

2018/2019シーズのンインフルエンザ治療指針(日本小児科学会)

(パパ小児科医)

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