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2019.07.31

エナジードリンクは身体に悪い?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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スーパーやコンビニでも手軽に買えるエナジードリンク。清涼飲料水感覚で飲んでしまう方もいると思いますが、多飲すると心臓に影響を及ぼす危険もあるのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2019年のJournal of the American Heart Association誌に掲載された、エナジードリンクの心臓への影響を、ボランティアを使って検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

エナジードリンクを飲むと元気になる?

エナジードリンクは日本でも、「元気を付けるために」と飲む人が多く、高齢者でも食事が摂れない時や風邪の時などに飲まれる人が多いようです。

アメリカでは青少年を中心に多飲する人が多く、それが心臓由来の突然死や不整脈の原因ではないか、という指摘が多くあります。

ただ、仮にそうしたことがあるとして、その原因は必ずしも明らかではありません。

通常槍玉に挙がるのはカフェインですが、通常現行売られているエナジードリンクに含まれているカフェイン量は、1リットルで300ミリグラム程度ですから、それで心臓にそれほどの悪影響があるのであれば、コーヒーやお茶でも同じような影響がある筈です。
通常400ミリグラムくらいまでのカフェインでは、大きな健康上の問題は起こらないと言う点では多くのデータがあり、その点に整合性がないのです。

エナジードリンクの心臓への影響を検証

そこで今回の研究では、アメリカで市販されている2種類のエナジードリンクを、味を似せた飲み物と比較して、厳密な方法でその急性の心臓への影響を比較しています。

対象は若いボランティア34名で、市販の2種類のエナジードリンクと偽の飲み物の3種類の飲み物を、それと分からないように32オンス(ほぼ900ミリリットル)1時間以内に飲み、1週間毎に3種類を飲んで、その後4時間の血圧や脈拍、重症不整脈の発生に関連する、心電図のQTc間隔などの測定を行います。エナジードリンクに含まれるカフェイン量は、トータルで300ミリグラム程度です。

その結果、エナジードリンクはいずれも偽の飲み物と比較して、飲用後1時間で収縮期血圧とQTc間隔を延長させました。

つまり、一定の負荷を心臓に掛けることが、ほぼ確認されたのです。

エナジードリンクの含有物質に心臓刺激作用が

この影響はこれまでの報告から見て、トータルで300ミリリットル程度のカフェインの影響とは考えにくく、カフェインと他の含有物質との相互作用の可能性を含め、一体何がエナジードリンクの心臓刺激作用の原因となっているのか、より詳細な検証が必要であると考えられます。

エナジードリンクの害の問題は、そう単純なものではなさそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36