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2018.10.31

水を飲むことで膀胱炎は予防出来るのか?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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排尿時に不快感や痛みを覚える膀胱炎。女性にとってはポピュラーな病気の1つなので、経験した方も多いのではないでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

本日ご紹介するのは、2018年のJAMA Internal Medicine誌に掲載された、水を多めに飲むことが、膀胱炎の予防になるのかどうかを、科学的に検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

膀胱炎(尿路感染症)は予防できる?

これは他愛なく思えますが、臨床的には重要な知見です。

膀胱炎などの尿路感染症は女性には非常に多い症状で、その原因の多くは大腸菌の感染によるものです。

そのため、症状の早期改善のために、通常抗菌剤による治療が行われます。
ただ、この症状は繰り返すことが多く、抗菌剤を使用しても、必ずしも再発の予防効果は実証されていません。

それでは、効率的に尿路感染症を予防する方法はないのでしょうか?

一般の方と医療者の双方が、水を沢山飲むことを、日々の習慣として勧めています。
しかし、その有効性は、実はあまり科学的に検証されたものではありません。

毎日大量の水を飲めば膀胱炎を予防できるかを検証

そこで今回の研究はアメリカにおいて、過去1年間に3回以上の膀胱炎の治療歴のある女性で、1日の飲水量が1.5リットル未満である140名を登録し、くじ引きで2つの群に分けると、一方は1日1.5リットル以上の水を飲むことを指示し、もう一方は特にそうした指示はせずに、1年間の経過観察を行っています。

定期的に尿量と浸透圧を測定して、飲水量が守られているかどうかと、危険のあるような飲み方がされていないかを検証しています。

その結果、1年間の平均の膀胱炎発症回数は、1.5リットル以上の飲水指示群では1.7回であったのに対して、コントロール群では3.2回で、飲水の指示により、膀胱炎発症回数は差し引き1.5回(95%CI: 1.2から1.8)有意に抑制されていました。
抗菌剤の使用頻度も同様に抑制されていました。

膀胱炎予防には、1日の飲水量を1.5リットル以上にすると効果的

このように、特に腎臓の病気などのない方であれば、1日の飲水量を1.5リットル以上に調整することで、膀胱炎の予防には一定の有効性があるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36