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2019.01.29

【医師監修】節分の豆で肺炎?「こわい子どもの誤えん」<パパ小児科医の子ども健康事典 第12話>

ウーマンエキサイト

節分の季節がやってきました。豆まきをして、年の数だけ豆を食べて…と昔からの伝統行事ですが、小さい子どもがいるご家庭は誤えんに注意です。

「豆って誤えんするんですか?」と思われるかもしれませんが、病院では時々見かける症状です。

■子どもが豆を誤えん…どうやって起こるの?

豆は丸くつるっとしていて、幼い子どもにとってはかみ砕きにくいものです。口の中に入っている時に、笑ったり、びっくりしたりした拍子にヒュッと空気の通り道(=気道)へと吸い込んでしまうことがあります。

気道のほうに入りますと、むせてせき込みます。その時出てくればいいのですが、時に気管をふさいでしまったりすると、息が苦しくなり顔が真っ青になります。

さらに、気管をぬけて肺に入るとせきはましになりますが、豆という異物が入ることによって肺炎を起こすこともあります。ですから、飲み込んだ直後にせき込んで、そののち、せきがましになっても安心とはいえません。しばらくして、呼吸が苦しくなったり、発熱することもあるのです。

治療

せき込んでいる時は、豆が外に出るのをうながすために、下を向かせて背中を叩いて出させます。

気管の奥のほうに入ってしまったものは、細いカメラ(気管支鏡)でのぞいて取り出さなければならない場合がありますが、子どもに気管支鏡が使える病院や医師は限られており、麻酔も必要ですので大がかりになります。

豆が肺に入って肺炎を起こした場合も、酸素投与や点滴の治療が必要になるので入院しなければならないでしょう。豆の誤嚥はなかなかやっかいですので、まずは予防が大切です。

予防

まずは、幼い子には食べさせないことです。

米国小児科学会では、4歳以下に対して、誤えんしやすいものは避けるべきとしています(※)。4歳をひとつの目安として、まだ難しそうなら4歳より年が上でも、誤えんしやすい豆は避さけたほうがいいでしょう。

節分の豆まきも工夫が必要です。豆はまいたとしても、全部回収すること。ただ、目の届かない場所、意外な場所に残っていることもあるので、小袋のまま投げる、新聞紙を丸めて豆の代用とするなどの対策もあります。

節分の際は、豆まきのほかにイワシを食べる、飾るという伝統行事もありますから、子どもが小さいうちだけは、こちらだけするのでもいいかもしれません。

年齢が上になって、豆をスムーズに食べられるようになった子どもでも、歩き食べなどをしていると誤えんの危険があります。

例えば、歩いている途中で転んだりすると「あっ!」と声を出し、その時にヒュっと豆は気道へ。食べている時に驚いたり泣いたりして声を出すと、気道に入りやすくなります。

だからといって、子どもが歩きながら食べているのを見つけても「こらっ!」と怒ったりしてはいけません。その声にびっくりしたり泣いたりして、さらに誤えんの可能性を高めてしまうからです。

そんな時は、大人が怒りをしずめて「お口の中のもの、ベーしてね」と優しくさとしてください。

誤えんだけじゃない!「子どもは鼻や耳にも入れる」

豆を与えるのは4歳を目安にとお伝えしましたが、それ以上の年齢となる年長児などには別の注意が必要です。

好奇心旺盛な子どもたちは、なぜか豆を鼻や耳の穴に入れたがります。危険なこととして教えることはもちろんですが、もしもの時は自分でとろうとせず耳鼻咽喉科に相談してください。

ちなみに大人の方も誤えんに気をつけてくださいね。節分の豆を誤えんすることはあまりないでしょうが、大きな恵方巻きにかぶりついてむせ、食べたものが気管へ…ということはあります。

子どもの誤えん「豆以外にも要注意」

子どもは、豆以外にもいろいろなものを誤えんします。

とくに、豆と同じように丸くてつるっとしたものは詰まりやすいです。例えば、お弁当の定番、プチトマト。丸くてつるっとしているために、窒息が起こりやすい食品です。

小さい子どもに食べさせる時は半分にする、十字に切れ込みを入れて口の中でつぶれるようにするなどの対策をしてください。ブドウも同様に詰まりやすいので、同様に切れ込みなどを入れてください。

意外と盲点なのがクランチチョコレートです。ナッツなどが含まれているので、歩き食べなどをしていると、何かの拍子に誤えんしてしまうことがありますから注意してください。

子どもは、食べ物だけではなく小さいおもちゃなども口にするので、誤飲も心配ですね。3歳の赤ちゃんが口を開けた時の最大口径は約39mm。この大きさ以下なら、誤って飲み込んでしまいます。

一般社団法人日本家族計画協会が作成した『誤飲チェッカー』(https://www.jfpa.or.jp/mother_child/prevent/002.html)は、子どもが誤飲する可能性のあるものをチェックすることができます。

誤飲チェッカーがなくても、トイレットペーパーの芯は直径が約38mm大ですので、ここに入るかどうかで簡易的に誤飲の可能性があるものを調べることができます。

1年に1回やってくる節分は、子どもの頃からなんとなく思い出として残っています。鬼に豆をぶつけるのが仕事だった私も、最近は鬼役として子どもたちから追い回される役に徹しています。

せっかく厄を払い、福を招くイベントですので、この記事のちょっとしたチェックポイントを参考に楽しい節分にしてくださいね。

参考資料
※ 「Choking Prevention」healthy children.org(American Academy of Pediatrics)
https://www.healthychildren.org/English/health-issues/injuries-emergencies/Pages/Choking-Prevention.aspx

(パパ小児科医)

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