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2023.09.22

世界的に増加している50歳未満の大腸癌。特徴的な症状は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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50歳未満で大腸癌に罹る方が、世界的に増加しています。早期発見を心がけるためには、どのような方法があるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、Journal of the National Cancer Institute誌に、2023年5月4日付で掲載された、若年発症の大腸癌を疑う兆候についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

世界的に若年層の大腸癌が増加中

通常大腸癌は50歳以上の年齢層で増加すると報告されていて、そのため現行の大腸癌のスクリーニングは、世界的には50歳以上で施行されていることが殆どです。

一方で日本では厚労省の指針により、40歳以上で市町村の大腸癌検診が施行されています。

ただ、世界的にも50歳未満での大腸癌の診断が、増加しているという傾向があります。アメリカの統計によると、2011年から2016年の調査において、年間2%ずつ若年発症大腸癌は増加していて、2030年までには倍増すると試算されています。(※2)

そこでアメリカの専門部会では、スクリーニングの推奨年齢を2018年から45歳以上に変更しました。

しかし、若年層の検診受診率は低く、更に若年発症大腸癌の半数は45歳未満で発症しているので、これだけでは若年発症大腸癌の対策として不充分です。

それでは日本のように対象年齢を40歳まで下げれば、と思うところですが、それでは有効性が実証されず、コスパ的にも問題がある、というのが欧米の考え方です。そこで早期発症大腸癌に、特徴的な症状が何かあれば、そうした症状のある人のみを対象として、スクリーニングを施行することで、有効でコスパ的にも問題の少ない検診となるのではないか、という考えが成立します。

早期の大腸癌に特徴的な症状はあるのか

今回の研究ではアメリカの医療保険のデータを活用して、50歳未満で診断された早期発症大腸癌の事例、トータル5075例を、年齢などをマッチングさせたコントロールと比較して、診断される3か月以前2年までの間に、予め設定した腹痛などの17の症状のうち、どれが最も早期発症大腸癌の診断と関連が深いかを、比較検証しています。

その結果、単独の兆候としては、腹痛、肛門からの出血、下痢、鉄欠乏性貧血の4つが、その後の大腸癌の診断と一定の関連があり、複数あるほどそのリスクは高まるというデータが得られました。

具体的には、上記4つのうち1つがあると、何もない場合と比較して1.97倍(95%CI:1.80から2.15)、2つあると3.66倍(95%CI:2.97から4.51)、3つ以上あると6.96倍(95%CI:4.07から11.91)、大腸癌診断のリスクは増加していました。

兆候がある人だけスクリーニング検査をする方法も

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このように複数の兆候と、若年発症大腸癌との間には一定の関連があり、今後そうした兆候のある対象に絞って、若年でも大腸癌のスクリーニングを行うという方法が、議論される運びになるかも知れません。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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