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2023.07.04

抗菌剤を使わずニキビを治す!利尿剤スピロノラクトンはニキビに効くのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ニキビ治療には抗菌剤の内服薬を用いることが多いようですが、抗菌剤を長い間使うと耐性菌が増加するなどの健康リスクが心配です。抗菌剤に代わるニキビ治療薬はあるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、British Medical Journal誌に、2023年5月16日ウェブ掲載された、抗アンドロゲン作用のある利尿剤を、ニキビに使用した臨床試験についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

抗菌剤を使わないニキビ治療とは?

ニキビ(尋常性挫創)というのは、非常に一般的な症状ですが、その治療は現時点でも確立されているとは言えません。

通常過酸化ベンゾイル製剤や抗菌剤などの外用剤が使用され、それで改善が見られない場合には、内服の抗菌剤が使用されることが一般的です。ニキビに対する抗菌剤の使用は、原則として半年以内に限るとされていますが、それを超えて継続されることの多いのが実際です。抗菌剤の長期の使用継続は、耐性菌の増加などのリスクに繋がることが知られています。そのため、抗菌剤を使用しないニキビ治療が、求められているのです。

現状ガイドラインで推奨されているものではありませんが、臨床で使用されることが多いのが、スピロノラクトン(商品名アルドステロンなど)の使用です。

スピロノラクトンは利尿剤の一種ですが、抗アンドロゲン作用を持ち、それがニキビの改善に繋がると考えられています。

利尿剤スピロノラクトンにニキビ改善効果が認められた

そこで今回の臨床研究では、イギリスとウェールズの18歳以上でニキビのある女性、トータル410名をくじ引きで2つの群に分けると、一方はスピロノラクトンを1日50mgから開始して、6週以降は100 mgに増量し24週までの治療を継続。もう一方は偽薬を使用して、その有効性を比較検証しています。

その結果、治療12週の時点ではニキビの自覚的改善率には、有意な差はありませんでしたが、治療24週の時点では治療群の改善率が82%に対して、偽薬群の改善率は63%で、スピロノラクトンの治療には、一定の臨床的有効性が認められました。

今後、スピロノラクトンを選択肢のひとつに

スピロノラクトンには、無月経などの副作用があり、妊娠中や授乳中は原則として使用出来ませんから、その使用継続には限界がありますが、抗菌剤のような有害事象はない治療の選択肢として今後抗菌剤が使用継続されているようなケースにおいて、検討に値する治療になると思います。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36