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2022.11.24

メタボ改善におすすめなのは、朝の運動より夜の運動?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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現代人の多くが悩むメタボリックシンドローム。
改善するには運動が欠かせませんが、そのタイミングによって効果が変わってくるのだとか。

今回ご紹介するのは、Diabetologia誌に2022年11月1日ウェブ掲載された、運動する時間とそのメタボに対する有効性を、比較検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

運動する時間で有効性に差はあるか?

現代人は内臓脂肪が増加するいわゆるメタボが多く、その原因の1つはデスクワークのため、座っている時間が多く運動不足になるため、というように説明されています。

実際これまでの臨床研究や観察研究において、1日のうち座っているだけの時間が長いと、糖尿病などの生活習慣病が増加し、時々立って活動するような時間を取ると、その予防になることを示唆するデータが報告されています。

身体に中等度以上の負荷を掛ける運動習慣が、肝臓に蓄積された脂肪を減らし、インスリン感受性(インスリンの効きやすさ)を改善する、という報告もあります。

ただ、運動する時間によって、その有効性に差があるかどうかという点については、これまであまり明確なことが分かっていませんでした。

運動時間とその効果を測定

そこで今回の研究ではオランダにおいて、年齢が45から65歳で体格の指標であるBMIが、27以上という、海外の地域によっては過体重以上、日本においては軽度の肥満以上に相当する、775名を対象として、身体活動や座位時間を測定可能な機器を4日間装着し、中等度以上の身体活動(運動)を、どのような時間帯に行ったかと、肝臓の脂肪量とインスリン抵抗性との関連を検証しています。

その結果、運動する時間が1日の中で平均している場合と比較して、運動を12時から18時の間に集中して行うと、インスリン抵抗性は18%(95%CI: -33から-2%)改善し、運動を18時以降に集中して行うと、インスリン抵抗性は25%(95%CI: -49から-4%)有意に改善していました。

一方で座位をずっと続けていても、時々姿勢を変えたりのインターバルを作っても、インスリン抵抗性や肝臓の脂肪量に、明確な違いは認められませんでした。

夜の運動がメタボ改善につながる

これは長期間経過をみたようなデータではないので、その時点での評価に過ぎないという難点はありますが、朝より夜に運動する方がメタボの改善に結び付く、というちょっと意外な結果が得られたことは興味深く、今後のより踏み込んだ検証に期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36