メニュー

2019.01.28

【医師監修】赤ちゃんが重症化しやすいRSウイルス感染「せき・鼻水がとまらない…」<パパ小児科医の子ども健康事典 第11話

ウーマンエキサイト

RSウイルス感染症は、冬に流行する(ときにほかの季節でも流行)、せきや発熱をおこす呼吸器感染症です。とくに生後3カ月未満の乳児は呼吸困難感が強くなって、入院が必要になることも多いのです。

RSウイルス感染症とは、どのようなものでしょうか? 症状や診断、治療・ホームケア、感染予防のポイントなどを解説していきます。

RSウイルス感染症、その症状は?

最初は、せきや鼻水などの症状が数日続いたのち、発熱したり胸がゼロゼロして呼吸があらくなります。発熱は数日~1週間近く続く場合や、微熱程度の場合などさまざまです。

鼻水が多いことが特徴で、のどの奥に垂れ込んできてせきこみ、夜眠れなくなってきて、さらにひどくなると細気管支炎というものをひき起こしてきます。

細気管支とは、気管が左右に分かれ、さらに細かく枝分かれした部分。そこが炎症を起こすのが、細気管支炎です。

細気管支がむくんだり、分泌物がたまったりしますと空気の通りが悪くなってしまい、笛のようにヒューヒューと音がなる(ぜん鳴)ようになります。

空気の通りが悪いと呼吸困難感がでてきて、肩で息をしたり胸やおなかがペコペコ(=陥没呼吸。下のイラスト参照)するような症状が出てきたら酸素投与をしなければなりませんから救急受診してください。

この陥没呼吸はとても重要な呼吸困難のサインで、鼻がひくひくしたり、首のところがペコペコしたりする場合も見られます。

数日間の軽い風邪症状から次第に呼吸困難感が強まり、数日間の症状のピークがへて、せきや鼻水は徐々に改善に向かいます、全経過で1~2週間以上はかかるものと思ってください。

RSウイルス感染症「診断・治療・ホームケア」

診断

症状や経過を確認し、鼻の綿棒検査で調べます。この検査は、入院患者さんと、外来では1歳未満の赤ちゃんの場合、保険適用にて調べることができます。

治療・ホームケア

RSウイルス感染症には、残念ながら特効薬はありません。重症化に注意して症状を緩和する治療をしながら、改善するのを待ちます。

鼻水や鼻づまりがひどい場合、赤ちゃんは哺乳しながらだと息がしんどくなるかもしれませんから、休みながらこまめに与えてください。脱水にもなりやすいので、水分補給はとても重要です。

鼻やせきの症状に対して内服薬の効果は乏しい一方、鼻水吸引は効果的です。鼻水をとることで、のどへの垂れ込みを減らせば、せきを減らすことができますし、鼻づまりが改善すると哺乳もしやすくなります。

ちなみに気管支喘息で用いるような気管支拡張薬(吸入、貼り薬、飲み薬)の効果はあまり期待できません。空気の通り道を狭くしている分泌物は気管支拡張薬ではなかなか引かないので、改善には時間がかかるものと思ってください。

発熱は1週間くらい続くこともありますし、せきも長引いて数週間におよぶ場合があります。経過中に肺炎や中耳炎を合併してくる場合、抗菌薬を使う必要も出てきます。

RSウイルスと診断をうけたら、こまめに受診して小児科医に状態を確認してもらってください。とくに生後3カ月未満の乳児は呼吸困難感やときに無呼吸発作が起こる場合があり、入院治療をするケースが多いです。

かわいた空気は気道に刺激が加わり、せきも出やすくなります。加湿器などで適度な湿度をキープしてください。お風呂の中は加湿されていますから、ぐったりした様子などがなければ、入浴することはむしろ良い効果があるかもしれません(注:医師により判断は異なります)。

PSウイルス感染症「予防、登園・登校基準」

3~5日の潜伏期間があり、発症から7~10日くらいはウイルスを出しています。インフルエンザのように登園停止基準があるわけではありませんが、せきやくしゃみ、接触により感染するため、せきこみがひどいうちは登園・登校はさけたほうが無難です。

RSウイルス感染症「よくあるQ&A」

最後に、RSウイルス感染症について、よくある質問をまとめました。

Q. 大人も感染する?

A. 大人も感染します。ただし重症化することはなく通常のせきや鼻の症状です。

先に大人が風邪症状を認め、のちに子どもがRSウイルス感染症になることがよくありますので、とくに小さい赤ちゃんがいるご家庭では注意してください。

Q. 繰り返しかかるの?

A. 年齢があがれば重症化のリスクは下がりますが、残念ながら繰り返しかかってしまいます。

Q. 予防法はある?

A. 今のところワクチンは開発中ですので、予防は一般的な手洗いや、感染している人との接触を避けることです。

ワクチンとは異なりますが、早産児や先天性心疾患を持つお子さんなどリスクの高いお子さんは、重症化や入院を防ぐ目的で、 米MedImmue社のシナジスに代表されるパリビズマブという抗体薬を、あらかじめうつことができます。一部の方にこのお薬の適応があるので、流行期には医師から説明があるかと思います。

RSウイルスは毎年多くの人が感染して1歳までにほぼ半数が、2歳までにほぼ100%の人が感染するもので、誰もが通る道です。熱やせきも長引きなかなかしんどい感染症ですが、呼吸困難やとくに小さい赤ちゃんの重症化には注意しながらなんとか乗り切ってくださいね。

参考資料
※ 「シナジス投与ガイド」(提供 アッヴィ合同会社/制作 リノ・メディカル株式会社)
http://abbvie-channel.com/synagis/pdf/synagis_guide_%202014_1022.pdf

(パパ小児科医)

記事画像

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します