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2020.10.01

早期発見で9割が完治!乳がんの絶対に知っておきたい基礎知識【乳がん・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

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女性のがんでは断トツで罹患数が多い「乳がん」。日本人女性の9人に1人が発症するなど女性にとって最も身近ながんと言えるのに、検診率は伸び悩み、我がこととして危機感を持っている女性は多くありません。
乳がんは、早く見つけて適切な治療をすれば治る可能性が高いがん。早期発見のための正しい検診の受け方と、セルフチェックの方法など、女性が絶対に知っておきたい基礎知識を、国立がん研究センター中央病院乳腺外科医長の高山伸先生に伺いました。

高山 伸(たかやま・しん)先生

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国立がん研究センター中央病院 乳腺外科 医長
平成7年東京慈恵会医科大学卒業後、慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。栃木県立がんセンター外科、米国ニューヨーク州コーネル大学医学部、東京歯科大学市川総合病院外科などを経て、平成27年4月より現職。
専門医・認定医資格:日本外科学会専門医・指導医、日本乳癌学会専門医・指導医、がん治療認定医、マンモグラフィ検診精度管理中央委員会読影認定医、乳房再建用エキスパンダー責任医師

乳がんとは何か?基本の基本を知る

女性のがんで最も多いが、早期発見で9割が完治する乳がん

出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター:地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2015年)、及び人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2018年)より作成

出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター:地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2015年)、及び人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2018年)より作成

乳がんは、女性がかかる中で最も患者数が多いがんです。罹患率は世界的に増加傾向で、2000年には30人に1人だった日本人女性の乳がん患者数が、現在では9人に1人にまでなっています。
一方で、乳がんは他のがんに比べて予後(治療後の経過)が良く、特に近年は乳がん手術の進歩や効果的な薬の開発によって、早期の段階で適切な治療をすれば約9割が治る病気となっています。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より作成

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」より作成

そのため、患者数・罹患率共に1位でありながら死亡者数では第5位と低いのです。

乳がんは乳腺にできるがん

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乳がんとは乳腺組織にできるがんです。乳房には小葉という母乳を作る組織と、小葉で作られた母乳を乳頭まで運ぶ乳管がありますが、乳がんが発症する場所は多くが乳管からで、小葉から発症することもあります。乳がんにかかる女性は30歳ぐらいから増え始めて45〜49歳でピークを迎え、その後減少します。あまり知られていませんが、男性にも発生することがあります。

主な症状としてよく言われるのは「しこり」ですが、乳房にしこりを感じたからといって全てが「乳がん」ではありません。生理前に胸が張る「乳腺症」の可能性もあるので、生理周期と関係のないしこりや痛み、血液が混じった分泌物が見られた場合は、専門医を受診することをおすすめします。

乳がんのリスク因子は、女性ホルモンの被曝量、肥満、家族歴

乳がんは突然発生するように思われますが、数日で大きくなるのではなく、細胞に傷をつける毎日の積み重ねによって発生し、少しずつ大きくなります。
エストロゲンという女性ホルモンが乳腺に少しずつ刺激を与え続けることで、乳がんに至ると考えられています。
つまり、初潮から閉経までの期間に、「初潮が早い」「閉経が遅い」「出産経験がない」「初出産が高齢」などといった理由で、女性ホルモンによる被曝を受けている量が多ければ多いほど、乳がんのリスクが高くなるというわけです。

また、閉経後も女性ホルモンは脂肪から作られることがわかっており、肥満がリスクを高める要因にもなりますし、過度な飲酒や喫煙などの生活習慣の影響を受けるという研究結果もありますので、併せてご注意ください。他にも、乳がんの既往のある血縁者が身近にいる方もリスクは高くなります。

出典:木下貴之 (監修), 田村研治 (監修)『国立がん研究センターの乳がんの本』(2018),p.9の表を改編

出典:木下貴之 (監修), 田村研治 (監修)『国立がん研究センターの乳がんの本』(2018),p.9の表を改編

とはいえ、リスク因子に当てはまるからといって怖がらないでください。必ずしも乳がんになる訳ではありませんし、きちんとした知識を持って早期発見ができれば、乳がんは9割が治る病気。早期発見の方法について、これからきちんと学んでおきましょう!

乳がん早期発見のカギは検診

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乳がんを早期で発見するには、とにかく検診をすること。自治体によって異なる場合がありますが、40歳以上の女性は2年に1度のマンモグラフィ検診が推奨されていることが多いようです。
血縁者に乳がんにかかった方がいるなど、リスクの高い人は1年に1回、人間ドッグや乳腺専門クリニックでの検診を受けておくと安心です。
それぞれの検査の利点や方法については以下の通りです。

マンモグラフィ

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マンモグラフィはX線撮影による画像診断装置を用い、2枚の透明な板で乳房を挟んで薄く延ばして撮影する検査方法。乳房のしこりのほか、微細な病変である石灰化がないかどうかを確認します。
石灰化の多くは良性ですが、1ヵ所にたくさん集まっている場合などは悪性が疑われます。マンモグラフィ検査は視触診ではしこりとして確認できないような、ごく小さなしこりや石灰化した病変を見つけることができるため、乳がんの早期発見には欠かせない検査です。

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もちろんマンモグラフィだけで全ての乳がんを発見できるわけではありません。画像では乳腺もがんも白く写るため、若くて乳腺が発達している人や、乳腺が密集している「高濃度乳房(デンスブレスト)」だとがんを見分けるのが難しいと言われています。
50歳未満のアジア人の約8割は乳腺濃度が高いといわれているので、50歳未満の人や授乳経験のない人などは、マンモグラフィだけでなく超音波検査も受けることをお勧めします。

超音波(エコー)検査

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乳房に超音波をあてて病変を調べるのが超音波(エコー)検査です。マンモグラフィーのように、微細な石灰化病変を見つけることは得意ではありませんが、「高濃度乳房(デンスブレスト)」であっても、小さなしこりを見つけることに適した検査です。20〜30代と若い方でも、身内の方が乳がんになった方などは早めに超音波検査を受けておくと安心です。

入浴時のセルフチェックを習慣に!

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乳がんは自分で見つけることのできる、数少ないがんの一つですから、セルフチェック(自己検診)も有効です。
セルフチェックは、しこりを見つけようと長時間頑張る必要はありません。シャワーを浴びる時など、石鹸などで身体を洗うついでに両胸を触る習慣をつけて、細かな変化に気が付けるようにしておきましょう。

セルフチェックでわかるしこりの目安は「硬く、ビー玉のような大きさ」と言われますが、実際には塊になっていないものもあり個人差が大きいです。触ったときの「なんとなく、今までと違う」という違和感を大切にして、気になることがあったら医療機関を受診しましょう。

保険適用になった予防手術と、最新の治療法を後半で詳しく!

万が一乳がんが見つかったとしても、早期発見で9割は治るという乳がん。技術の向上や、薬の進化で予後もよくなり、術後の見た目にも大きく変化があるようです。後編では、乳がん最新治療法に加え、この4月から保険適用になり注目を浴びる「予防乳房切除術」について、詳しく解説します。

■乳がんの最新治療に関してはこちらから

参考文献

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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