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2022.09.22

超加工食品の摂取量と大腸癌リスクの関係は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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インスタントラーメンなどの超加工食品は、私たちの暮らしには欠かせない便利な食材です。しかし、健康のことを考えると多用するのは控えた方がいいのかもしれません。

今回ご紹介するのは、British Medical Journal誌に2022年8月31日掲載された、超加工食品と大腸癌リスクについての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

超加工食品とは?

超加工食品(ultra-processed foods)というのは、2016年に国連の関連する食品についての会議で提唱されたもので、食品をその加工の度合いによって、4種類に分類するNOVA分類がその元になっています。(※2)

このNOVA分類では、食品をその加工度によって、以下の4つに分類しています。

第1群:加工されていないか、最小限しか加工されていない食品
第2群:加工された調味料
第3群:加工食品
第4群:超加工食品

第1群は果物や野菜や肉、豆は牛乳など、その由来が見て分かるような食品のことです。
第2群は砂糖や塩などの加工された調味料です。
第3群は一定の加工をされた食品のことで、たとえば缶詰の桃や自然の製法で作ったパンやチーズ、ミックスナッツやミックスベジタブルなどがそれに当たります。

そして、第4群の超加工食品は、通常5種類以上の食品が組み合わされ、そこに複数の調味料などが加えられたものを意味しています。

こうした食品は他の群の食品では、使用されないような添加物や化学物質が添加されることが通常です。これは要するに、私達がお店などで手に入れることの出来る、食事の材料となる食品の分類なのです。

たとえばラーメンを食べようと思った時に、その材料として、自然の岩塩などを調味料に使い、自然の小麦や豚肉、野菜などを調達して、それを組み合わせて調理すれば、第1群のみを使用したことになりますし、塩や砂糖などの調味料は市販の物を使うと、第2群も使用したことになります。

袋詰めの麺を買い、スーパーの焼き豚などを買って、それを組み合わせてラーメンを作ると、第3群も使用したことになり、最初からカップ麺やインスタントラーメンを買って、それを使用すると第4群を使ったことになるのです。

健康のためには、極力超加工食品を減らそう、というのがこの国連の会議の、基本的な考え方です。

超加工食品は料理の手間を減らしてくれますから、確かに便利ですが、最初からパッケージ化されているので、その成分を確認することは出来ませんし、栄養バランスの調節も難しくなります。

添加物を全て危険視するような考え方にも問題はありますが、人間の手間を省くために本来は必要のない物質を、多く使用してそれを食べるということ自体が、人間本来のあり方ではないことも、また事実だと思います。

超加工食品には健康上の害はある?

それでは実際に超加工食品を多く食べることで、健康上の害はどの程度あるのでしょうか?

これまでに心血管疾患や糖尿病のリスクと、超加工食品との間に一定の関連が示唆されるデータが報告されています。(※3、※4)

癌に関しても関連があるとするデータもありますが(※5)、今回の大腸癌については、あまり明確な関連がこれまでに示されていませんでした。

超加工食品の摂取量と大腸癌リスクとの関連を検証

今回の研究ではアメリカで医療従事者を対象とした、3つの大規模疫学研究のデータを活用して、超加工食品の摂取量と大腸癌リスクとの関連を検証しています。

トータルで32万人に近い人数を、24から28年という長期間観察したところ、観察期間中に3216件の大腸癌が診断されています。

ここで超加工食品の摂取量を5群に分け、最も少ない群と比較すると最も多い群では、男性でのみ大腸癌の発症リスクが29%(95%CI:1.08から1.53)、有意に増加していました。

この大腸癌リスクの増加は女性では明確ではなく、大腸癌を遠位部(下行結腸からS状結腸、直腸)とそれより口側に分けると、遠位部でのみ72%(95%CI:1.24から2.32)有意な増加が認められました。

このように今回の大規模な検証では、男性でのみ超加工食品と大腸癌との関連が認められ、それは肛門に近い部位の大腸癌でのみ明らかでした。

健康のためには超加工食品の使用は控えて

今回の結果で、大腸癌と超加工食品との間に明確な関係がある、とまでは言い切れませんが、これまでにも多くの病気との関連が指摘されていることを考えれば、なるべくその使用を控えることは、健康のために有益であると考えて良いようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36