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2019.09.13

血糖値が気になる!糖質との上手な向き合い方

kencom公式:管理栄養士・圓尾和紀

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最近では「お米は太る」や「ごはんは糖質の塊」などと言われるようになり、広告でもお茶碗に盛ったごはんの横にイコールの記号をつけて角砂糖何個分などという表現も見かけます。こういう情報に触れると、さもお米が諸悪の根源のように思いがちですが、これはかなり偏った見方と言えます。

お米は健康を害するものなのか?

お米を取り入れた食生活が肥満リスクが下がるという研究もある

そもそも日本人のお米の消費量はどんどん下がっています。明治時代の兵隊は白米が一日6合(お茶碗約14杯分)支給されていましたし、昭和の作家宮沢賢治の「雨にも負けず」の中でも一日に玄米を4合食べるという箇所が出てきます。もし、お米中心の食生活が血糖値を上げるのであれば、昔の日本人はみんな糖尿病になっているはずです。

また、同志社女子大学の136ヵ国を対象にした国際調査では、お米の摂取量が多い国ほど肥満レベルが低いことが示されています。血糖値の上昇や糖尿病のリスクになる肥満は、お米を多く食べている国では低く、お米を食べない国では多いという結果です。つまり、お米を食べることが総じて健康に悪いわけではありません。

当然、食べ過ぎることで糖質過多になれば血糖値に問題が出ることもあるので、上手な付き合い方をしていくことが大切です。

糖質を多く含む食材とはどう向き合うべき?

特別な理由がなければ糖質を極端に避けなくてもいい

糖質にはいくつかの種類があります。この中でも強い甘みを持つ単糖類や二糖類は、果物、蜂蜜、砂糖などに多く含まれています。また、そこまで甘くないですが多糖類という糖質もあり、これはお米や小麦、いもやとうもろこしなどに多く含まれています。ただし、これらはまったく性質の異なるもので、たとえば砂糖は100g中ほぼ100gすべてが糖質で、まさに糖質の塊です。

一方お米や小麦から作られたパン、いもやとうもろこしなどはだいたいその2〜4割が糖質に当たり、糖質以外にも食物繊維やビタミン、ミネラルなど栄養素を複合的に含んでいます。ですので、冒頭でお話ししたようにごはんを角砂糖とイコールで結ぶのは荒唐無稽な話なのです。また、野菜の中でもにんじんやれんこんまで糖質が多いとして避ける方もいらっしゃいますが、何か事情があって厳格な糖質制限が必要でもない限り、糖質だけを考えて食べ物を選ぶと栄養バランスに偏りが生じやすくなるため注意が必要です。

日本糖尿病学会でも、現時点では糖質を極端に制限することは薦められないという旨の提言を示しており、糖尿病治療のガイドラインの中にも糖質制限の記載はありません。

標準的な炭水化物の目安はどのぐらい?

一食でお茶碗一杯程度を目安にしよう

厚生労働省が示している基準では、炭水化物(ここでは糖質と同じ意味です)は摂取エネルギー量の50〜65%でとることを目安としてあげています。これはたとえば一日の摂取エネルギー量を2,000kcalとすると、1,000〜1,300kcalに当たり、糖質は1g当たり約4kcalなので250〜325gが適切な量となります。

お茶碗一杯のごはんで糖質は約44gですので、一日三食一杯ずつしっかりごはんをとっても132gで決してとりすぎにはなりません。外食でごはんを大盛りにしたりしなければ、ごはんで糖質をとりすぎることはありません(ただし、健康のためにはより厳格に糖質制限をすべきという専門家もいます)。詳しくはあとで触れますが、問題になってくるのはごはんやパンなどの主食でとる糖質ではなく、間食や飲み物でとる糖質なのです。

血糖値を抑えるなら何を意識するべき?

食べるもの、食べ方で血糖値の急上昇を防ぐ工夫をしよう

血糖値は糖質の摂取によって上昇するので、たしかに糖質を減らせば血糖値はあがりにくくなるのですが、減った状態が続くと長期的には健康リスクの心配もあります。糖質を減らす以外にも血糖値対策の方法はあります。まずは何から糖質を摂るべきかということです。

たとえば同じごはんやパンでも、精製した白米や白い小麦より未精製の玄米や分づき米、全粒粉のパンなどに変えると血糖値は上がりにくくなります。

また、「ベジファースト」と言って、ごはんやパンなどの糖質を食べる前に野菜やきのこ、海藻などの食物繊維を含んだものをとると、血糖値の上昇が緩やかになる効果があります。外食でカレーライスや丼などの単品の料理を食べるときは、ぜひ一緒にサラダや具沢山の豚汁、けんちん汁などを頼んで先に食べるようにしましょう

こういったメニューはただでさえごはんの量が多く(しかもだいたい白米)早食いにもなりやすいので気をつける必要があります。早食いも血糖値を急上昇させる原因となりますので、なるべくよく噛んでゆっくり食べると良いです。

甘いものは食べてもいいのか?

食べない方が望ましい。お菓子やジュースはほどほどに

結論から申し上げると、なるべく甘いものはとらないほうが良いです。やはり甘いものには砂糖が多く使われているものが多いからです。しかも甘いお菓子や菓子パンなどは糖質が多く、カロリーも高い一方で食物繊維やビタミン、ミネラルに乏しいため、ただ余計に糖質やカロリーを摂取することになってしまうのです。たまの楽しみとして食べるのはまだいいですが、毎日の習慣にならないように気をつけましょう。

また、侮れないのが飲み物に含まれる糖質です。清涼飲料水に含まれる糖質は意外と多いですし、飲み物だからごくごくと簡単にとれてしまうところが怖いです。商品の栄養成分表示の炭水化物の量を目安として、糖質がどれぐらい入っているのかを確認してみてください。

参考文献

「糖尿病治療ガイド2018-2019」日本糖尿病学会

著者プロフィール

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■圓尾和紀(まるお かずき)
株式会社ふること代表。“伝統食の良いところを現代に取り入れる”をコンセプトに活動する管理栄養士。テレビ、雑誌、ラジオなどのメディアへの出演やYoutube「カラダヨロコブチャンネル」でも情報発信を行っている。著書に『地味だけど「ほっとする」食べ方』がある。

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