メニュー

2022.09.21

一汁一菜しばりで誕生!?お寿司大国・岡山県の「まつりずし」【ニッポン地元メシ#29】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

中国地方で「晴れの国」と呼ばれるほど天気の良い日が多い岡山県。
旭川・吉井川・高梁川の三大河川による豊富な水ゆえに、米や麦はもちろん、最近では高級な贈答品として人気の白桃やマスカット、ピオーネなどの生産量は日本一。品質がよく、国内に限らず国外でも高値で取引されています。

また瀬戸内海に面しているため、海苔や牡蠣、その他にもニシン科の小さな魚・ままかりをはじめとした様々な魚介類が豊富に獲れることで有名です。

食べ物以外では日本三大庭園のひとつ「岡山後楽園」や、県の天然記念物に指定されている全長約450mの鍾乳洞・満奇洞(まきどう)、国産ジーンズ発祥の地である倉敷・児島のデニムストリートなど人気の観光スポットも数多く存在します。

今回は数ある岡山グルメの中から、見た目も華やかで栄養も摂れる「まつりずし」を紹介します。

「まつりずし」とは

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/41_1_okayama.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/41_1_okayama.html)

名前からしても縁起の良さを思わせる「まつりずし」。
地域によっては「おかやまばら寿司」や「備前ばら寿司」と呼ばれます。

まつりずしは瀬戸内海でとれる魚介類や季節の野菜をたっぷりと盛り込んだ、見た目にも華やかなばらずしです。
なぜこのようなばらずしが生まれたかというと、そこには当時の「知恵」がありました。

江戸時代、備前岡山の藩主池田光正公は質素倹約を奨励しており、食事も「一汁一菜にする」という倹約令を布告。
これではごはんにお味噌汁、焼き魚、お浸し、といった定食スタイルをいただくことはできません。

そこで考えられたのが、一皿に具材を盛り込んだ「ばらずし」だったのです。
ここに汁物を付けることで「一汁一菜」を守ったのが発祥といわれています。

現在では祝い事や来客時などのハレの日の食事として親しまれるようになりました。

作り方は自由!食材のしばりもなし

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/41_1_okayama.html)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/41_1_okayama.html)

まつりずしは季節を問わず、食材のしばりもなく作ることができる自由なばらずしです。

例えば、春には旬である鰆(さわら)にふき、たけのこを混ぜ込んだり、秋であればきのこ類を混ぜ込むといった具合です。
そのため、季節のみならず家庭によっても具材は様々で、アナゴやエビ、イカやタコ、たまごやごぼうなどを加えてもOK!
野菜は茹でたり煮たりして下処理をしたものを添え、魚は種類によって酢で〆たり甘辛く煮たものを酢飯に混ぜ込みます。

また寿司というと冷たいイメージですが、まつりずしを蒸して温かい状態でいただく「ぬくずし」というのもあります。
ぬくずしの「ぬく」は温かいことを方言で「ぬくい」ということからきています。

盛り付けのコツは色味がきれいなものや形が美しいものは飾り用として残しておき、その他の具材を混ぜ込むということ。これで見た目も華やかでハレの日に食卓に出すおもてなし料理としての完成度がぐっと上がります。

季節によって具材や温度を変えて楽しむことができるまつりずしは、飽きることなく五感で楽しめる郷土料理ですね。

岡山県はお寿司のバリエーションが豊富!

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/41_2_okayama.html
)

出典:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/41_2_okayama.html )

まつりずしはとても有名な岡山の郷土料理のひとつですが、その他にもニシン科の小魚・ままかりを酢漬けにして乗せた「ままかりずし」や秋のごちそう「鯖ずし」、春の鰆をたっぷりと使った「鰆のこうずし」、ちらしずしの上に二杯酢で漬けた葉ワサビを散らす「葉ワサビずし」など、寿司のバリエーションが豊富なのも岡山の特徴です。

これはお米が収穫できることに加えて魚介類や農作物が豊富にとれる岡山県ならではですね。

まつりずしは県内の飲食店やスーパーの総菜コーナーにも置かれるほどメジャーなので、岡山県に行かれた際はぜひ堪能してみてはいかがでしょうか。

参考:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/41_1_okayama.html)
参考:農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/area_stories/okayama.html)

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

記事画像

管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

この記事に関連するキーワード