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2022.04.08

納豆の名産地に伝わるお手軽保存食。茨城県「そぼろ納豆」【ニッポン地元メシ#18】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

茨城県といえば、いわしやシジミ、さつま芋や干し芋、落花生、メロン、れんこん、栗…と、数多くの水産物、農産物の生産量が日本トップクラスを誇ります。
そんな茨城県の中でも有名なのが水戸の納豆ではないでしょうか。

健康食材としても人気の高い納豆ですが、第17回は納豆をさらにパワーアップさせた茨城県の郷土料理「そぼろ納豆」について紹介します。

水戸が納豆で有名なわけ

茨城県の中でも納豆で有名なのが、水戸市です。水戸市では茨城県の中に流れる数ある大きな川のひとつ、那珂川(なかがわ)の氾濫に備え、水害に強い早生の小粒大豆が栽培されています。

そして平安時代の武将・源義家が水戸市に赴いた時、わらで包んだ煮豆を食べたところ非常に気に入ったことから、その後将軍に献上されるようになりました。また、藁と大豆という手に入れやすい材料ということもあり、農民の間でも広まり定着したといわれています。

似て非なる「発酵」と「腐敗」

納豆は、現在ではどこでも手軽に手に入る発酵食品として親しまれています。
ところで「発酵」も「腐敗」も食品に微生物が働くことで元の食品から変化する現象ですが、2つの違いは何でしょうか。

微生物の働きによって香ばしい香りやうま味が増す、私たちの身体にとって嬉しい働きをするものとなった食品は「発酵食品」と呼ばれ、不快な臭いや食べたときに体調不良に陥るようなものは「腐敗した食品」と呼ばれます。
つまり人間にとって「有“益”」か「有“害”」か、という点で「発酵」と「腐敗」が分かれるのです。

納豆は加熱した大豆に納豆菌が付き働くことで香ばしさや粘り、うま味を作り出し、整腸作用などといった私たちの身体にとって嬉しい働きをするため「発酵食品」となります。

そぼろ納豆とは

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そぼろ納豆とは、納豆を使って作られる茨城県の郷土料理のひとつです。方言では「しょぼろ納豆」とも呼ばれます。
秋に収穫した大豆で納豆をつくり、近所やお寺等に配る際、余った納豆を長い間食べられるように工夫をしたことから始まったと言われています。

作り方はとても簡単です。
材料は、小粒納豆、割り干し大根、醤油です。
割り干し大根は切干大根に比べて太く噛み応えがあります。ご家庭では切干大根でも代用ができます。また、醤油は納豆のタレでも代用可能です。

割り干し大根を水で洗って戻し、水気をしっかりと絞り適当な長さに刻みます。
その後、納豆を合わせて醤油で和えれば完成です。
保存食として作られたものなので、当時は1ヵ月ほど寝かせて味が馴染んでから頂いていましたが、もちろん和えてすぐに食べることもできます。

割り干し大根は納豆や醤油のうま味をしっかり吸ってくれるだけでなく、食感が良いのも特徴です。
ただ、保存食という観点から塩味が強いため、そのまま食べるというよりもごはんに乗せて食べたり、お茶漬けのようにお茶やだし汁を注いで食べるのをおすすめします。

そぼろ納豆の栄養は?

納豆はいわずと知れた健康食品ですが、何が健康に良いとされているのでしょうか。

まずは原料である大豆。大豆は畑の肉とも呼ばれるほどにタンパク質が豊富で、筋肉や骨、髪の毛、爪、肌、抗体など私たちの身体の土台作りに欠かせない栄養素です。

さらに納豆の「粘り」は納豆菌で発酵してできるもので最大の特徴です。この粘り成分のひとつにナットウキナーゼがあります。
血管内に血栓があるとそれが血管を詰まらせる原因のひとつとなり、脳や肺、心臓などあらゆる臓器を危険にさらしかねません。
ナットウキナーゼはこの血栓を溶かす働きがあり、いわゆる「サラサラ血液」に役立ちます。

そのほかにも納豆には腸内環境を整えるのに欠かせない食物繊維や、代謝に欠かせないビタミンやミネラルが含まれます。

割り干し大根(切干大根)には食物繊維が含まれます。
そして割り干し大根の特徴のひとつ、「食感」も現代人にとって重要な役割があります。

長引くマスク生活、今までよりも人との交流が減る中で、口元を動かす機会が減っている方も多いと思います。
よく噛むことは顔周りの筋肉を使うため、表情筋のトレーニングになります。
成長期で歯の変え変わる時期では歯並びや発音といったところにもかかわってきます。
そのほかにもよく噛むことで脳への刺激となる、唾液の分泌を促すことで口腔内の衛生管理やでんぷんの消化を助けるといった嬉しい効果がたくさんあります!

材料3つだけでできる!家庭でも作ってみて

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そぼろ納豆は納豆と切干大根、醤油があればご家庭でも簡単に作れます。最近ではスーパーでも見かけることがあるほか、Webでも手に入れることができますので、ぜひうま味が凝縮した一品をご家庭でも味わってみてはいかがでしょうか。

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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