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2021.02.09

魚の王様「マグロ」は栄養でもキングレベル!脳にも効く理由とは

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

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お正月やおめでたい時など特別な日のごちそうとして思い浮かぶメニューにはどのようなものがあるでしょうか。
ローストビーフやカニ、寿司など普段はあまり口にすることのない、少し値が張るものを想像される方も多いかと思います。中でも「マグロ」はお正月の初競りがニュースで取り上げられるのが恒例となっているほど人気の食材です。

今回はそんな人気高級食材の一つでもある「マグロ」についてお話します。

下魚と呼ばれた「マグロ」が最高級食材になった理由とは

意外と古いマグロの食材史

今となっては当たり前に食べられているマグロですが、どのくらい昔から食べられていたのでしょう。
遡ること縄文時代、貝塚(縄文人が食べ終わった貝や動物の骨などを集めていた場所)からマグロの骨が見つかっています。
つまりこの時代からマグロは食べられていたと考えられています。
平安時代や鎌倉時代にもマグロに関する記録が残っていますが、このころは保存の技術が発達していなかったこともあり、マグロを生の刺身として食べることはほとんどなかったようです。

室町時代後期~江戸時代には「濃口しょうゆ」が誕生し、それに伴い江戸時代中期には赤身を濃口醬油に漬ける「マグロの漬け」が登場しました。
塩分が含まれる醤油に漬けることで保存もききますし、風味もよくなりますよね。
しかし、この頃マグロというのは庶民の食べ物で、現代では人気の「トロ」の部分は脂が多く腐りやすいという理由もあり嫌われていたそうです。
握りずしにマグロが登場したのは江戸時代後期といわれています。

明治以降も変わらずトロの部分は嫌われていたようですが、冷蔵庫や冷凍庫の普及とともに食材を良い状態で保存できる環境が整ったり、西洋の食べ物を受け入れられるようになってきたりと様々な理由からトロもおいしく食べられるようになり、今では大人気の高級食材にまでのぼりつめたのです。

マグロの脂質に世界中が注目

それでは、マグロの栄養はどんなものが中心なのでしょうか。
マグロは魚の仲間ですので「タンパク質」が豊富であるというのが大きな特徴の一つです。特にクロマグロ(生)の赤身は100gあたり26.4gものタンパク質が含まれています。
クロマグロ(生)の脂身(トロ)の部分は赤身に比べると脂肪が多いため、タンパク質は100gあたり20.1gと少なくなっています。
とはいえ、タンパク質の摂取量の目安が体重1kgあたり0.8gと考えると、どちらも100gあたり20g以上のタンパク質を摂れるのは嬉しいですね。

タンパク質は私たちの身体の土台となる大切な栄養素です。
成長期の子ども、ダイエットや筋トレを頑張る方、食が細く筋力の低下が気になる方など老若男女問わずしっかり摂れるとよいでしょう。
ちなみに炭水化物は100gあたり0.1gとほぼ含まれていませんので、糖質をコントロールされている方にも嬉しい食材ですね。

最近では大人気の「トロ」の部分に特に多い脂質にも注目が集まっています。
その訳は、DHAやEPAといった必須脂肪酸が、マグロには多く含まれているからです。

DHAは脳や神経系に存在する脂肪酸で特に子供の脳の発達に役立つといわれています。EPAは血液や血管の健康維持に役立つ脂肪酸で、いわゆる「サラサラ血」や「動脈硬化予防」などに役立ちます。

その他にもマグロには鉄が含まれています。
鉄もなかなか摂るのが難しく不足しやすい栄養素の一つです。

おいしいマグロ、でも少し気を付けたいこととは?

同じ魚なのに赤身とトロで違った味わいを楽しむことができ、栄養価も高いマグロはとても魅力的な食材です。
ですが、実は気を付けたいこともあります。それは「水銀」です。

私たち日本人の水銀摂取の80%以上が魚介類由来となっています。
海や湖などで微生物によって作られた微量のメチル水銀はプランクトンに取り込まれます。
そのプランクトンは小魚などのエサとなり、それらはさらにマグロなど大型回遊魚のエサとなります。
マグロは大型で、寿命も小魚に比べて長いため、メチル水銀の濃度も高くなりやすいとされています。

特に低濃度の水銀が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告もあることから、マグロのみならず、妊娠中の魚介類の摂食については厚生労働省によって注意事項が公表されています。
ただ、実際は平均的な日本人の水銀摂取量は健康への影響が懸念されるほど摂っている方は少ないのも事実。
また、最近では、水銀含有濃度の高い魚介類だけを偏って多量に食べることを避け、魚介類をバランスよく食事に取り入れることで、良いところを活かせるという考え方が増えているようです。
おいしくて栄養価の高いマグロ、最近では手ごろな価格で食べられるようになってきましたが、毎日マグロ三昧!ではなく、様々な食材を楽しみながらいただくとよいでしょう。

マグロの栄養を無駄なく摂るオススメの食べ方

マグロの魅力的な栄養素のひとつ、DHAやEPAは「脂質」なので煮たり焼いたりすると脂が流れ出てしまいます。
そのため、余すことなくいただくにはやはり「刺身」がおすすめです。
脂質が多いとその分時間が経って酸化することで臭いが発生したり、胃もたれの原因になったりしますので、くれぐれも「鮮度が良い状態」のまぐろをいただきましょう。

刺身が苦手、という方は煮物や焼き物(ステーキ)にするのもおすすめです。
マグロに合わせるものというとごはんが定番ですが、いわゆる「ツナ」もマグロやカツオが原料ですので、手作りのツナで自家製ツナマヨサンドにするとパン食の方もおいしく食べられるのではないでしょうか。
まだまだ鮮度は悪くないけれど、刺身は不安…というときは揚げ物もおすすめです。
魚嫌いの方でもお肉のような感覚で食べられますよ。

また、漬けマグロをアボカドや玉ねぎ、ミニトマトと和えるとハワイのポキのようなメニューに。
ごはんに乗せてポキ丼にするほか、レタスをあわせてボリューム感のあるサラダとしてもおすすめです。

マグロは鮮度がいいものを楽しんで!

味も栄養価も嬉しいことがたくさんのマグロ。
魚だけに、できるだけ鮮度の良いものをいただくことが大事です。最近では冷凍技術が進んだおかげで、日本中どこでも鮮度の良いものが食べられるようになっていますので、嬉しいですよね。
ぜひ鮮度の良いものが手に入ったら様々な調理法で楽しんでみてくださいね。

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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