2021.09.10
おうちでも作ってみたい沖縄料理!こってり甘辛な炊き込みご飯「ジューシー」【ニッポン地元メシ#4】
全国47都道府県の、美味しくて身体に良い郷土料理を紹介する本企画。
第4回はリゾート地としても人気で、歴史・食事・方言など様々な文化の違いを楽しめる沖縄県です。
「医食同源」の心が生んだ琉球料理
かつて「琉球」と呼ばれていた時代がある沖縄。諸外国との交流の中で生まれた食文化も多くあります。
琉球の時代、首里城で海外の客人をもてなすことを目的とした「宮廷料理」が生まれました。
一方で、一般家庭での料理は「庶民料理」と呼ばれ、亜熱帯の厳しい自然環境の中で取れる食材を活かした独特の料理が生まれました。これはまさに「医食同源」。普段の食事を整えることで、病気の予防から治療までできるように考えられた料理で、「クスイムン(薬になるもの)」や「ヌチグスイ(命の薬)」と呼ばれていました。
いわゆる沖縄伝統の琉球料理は、この「宮廷料理」と「庶民料理」の2つの料理を基礎として、現在に受け継がれています。
「ジューシー」ってどんな料理?
郷土料理として知られる「ジューシー」。カタカナ表記ですが沖縄の方言で、もとをたどると「雑炊」になります。
豚バラ肉やラードに、ひじき、ニンジン、昆布などの野菜や海藻類を加えて炊く炊き込みご飯で、味付けは醤油やみりん、砂糖といった和食で用いるものを使います。
ご家庭で作り方に違いはありますが、ポイントは豚の脂を使用すること。
豚バラブロックを茹で、その茹で汁を活用することでごはん全体に豚肉のうま味が染み込みます。普通の炊き込みご飯よりもコクがあり、艶やかな仕上がりとなります。
また、みりんや砂糖といった甘みのある調味料をしっかりと使うため、甘辛な味付けに。
みんな大好きな味!食堂やコンビニでも
沖縄には中国から伝わった行事が多くありますが、特に旧盆は親戚や地域の人々が集まり、食事を共にすることでより絆を深めることができる大切な行事。そこで欠かせないのが「ジューシー」です。
祝膳料理や法事料理として親しみのある料理ですが、町の食堂や沖縄そば屋さん、一般家庭でも日常的に食べられています。子どもから大人までみんな大好きな定番料理ということもあってか、沖縄のコンビニエンスストアではお弁当やおにぎりとしてメニュー化されています。
ジューシーの栄養は?
ジューシーは様々な食材をお米の中に炊き込んでいるため、栄養価も高いのが特徴です。
まずはエネルギー源となる糖質、タンパク質、脂質。これはお米と豚肉、かまぼこから摂れます。
亜熱帯の気候に負けないようエネルギーをしっかりと補給することが、元気に過ごすコツとも言えるでしょう。
また脂質は健康の敵のように言われることもありますが、腹持ちが良く、少量でもしっかりとエネルギーを確保できるという点ではとても重要な栄養素です。
太陽のパワーに負けない身体を作る栄養素も
豚肉には、エネルギー源の代謝に欠かせないビタミンB群が含まれます。
ニンジンには強力な抗酸化作用を持つβカロテンが含まれます。抗酸化作用のある食材を取り入れるということは、降り注ぐ太陽のパワーから身を守るためにとても大切です。
最近では「腸活」という言葉も出てくるほど、腸は健康の要として重要視されるようになりました。ジューシーに含まれる野菜や海藻、きのこの食物繊維は腸内環境を整えてくれます。
バランス良く栄養をとるために品数を増やすのは大変ですが、ジューシーなら1品に様々な食材を盛り込むこともできます。
忙しい朝や、小腹が空いたときの間食はもちろん、甘めの味付けなので、小食でエネルギー不足に悩んでいるお子さまのエネルギー補給食としても強い味方になります。
ジューシーをおうちでも
沖縄のご家庭で作られるジューシーは、バリエーションが豊富。大切な日から普段の日までよく食べられているからこそですね。
ジューシーの作り方は家庭によって様々です。
まずは硬さの違い。雑炊のように柔らかいジューシーは「柔ら(ヤファラ)ジューシー」又は「ボロボロジューシー」と言われます。対して、炊き込みご飯のように硬いジューシーは「硬(クファ)ジューシー」と言われます。
次に具の違い。よもぎを使ったジューシーは「フーチバージューシー」、いかすみを用いて作られるジューシーは「クリジューシー」と呼ばれます。
冬至の日に家族の健康と子孫繁栄を願って火の神や仏壇にお供えをし家族で頂くジューシーには田芋(ターンム)が入っており、「トゥンジージューシー」と呼ばれます。
健康を気遣いながら先祖を大切に思う気持ちも込めて食され続けるジューシーは、ご家庭でも簡単に作れる料理です。
旅行に行けない今だからこそ、おうちで沖縄気分を味わう食事も良いのではないでしょうか。
磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。