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2018.09.05

食事において、糖質はどの程度にするのが良い?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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最近は、ダイエットと言えば糖質制限が主流ですよね。しかし糖質制限を極端に行うと、栄養バランスが乱れて体調を崩す恐れもあります。
ダイエットをする上では、どのような食事制限が適しているのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

本日ご紹介するのは、2018年のLancet Public Health誌に掲載された、食事の糖質の比率と生命予後との関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

低糖質のダイエットを続けるのは、体にいいのか悪いのか

少なくとも短期的には、低糖質のダイエットが、体重の減少や血糖値の低下などにおいて、良い影響を与えることは間違いがありません。

ただ、その長期的な影響については、問題なく持続可能という意見がある一方で、長期継続することはリスクがある、という報告も複数見られます。

問題は糖質制限に伴い、増加する蛋白質のカロリーと、増加する動物性脂質と植物性脂質のカロリーとの、バランスをどう考えるかという点にあります。

どれくらいの糖質制限が最も良いのかを検証

最も総死亡のリスクが低かったのは、糖質の比率が総カロリーの50%強程度

今回の研究はアメリカの大規模な疫学データを活用して、どのくらいのレベルの糖質制限が、最も生命予後に良い影響を与えるのかを、検証したものです。

対象となっているのは、アメリカの4つの地域の45から64歳の住民15428名で、食事調査を行って、中央値で25年の観察期間における、総死亡のリスクと糖質のカロリーとの関連を検証しています。

その結果、総カロリーにおける糖質の比率が、50から55%が最も総死亡のリスクが低く、糖質のカロリーが40%未満であるか、70%を超えていると、有意に総死亡のリスクが増加することが確認されました。

そして、これまでの同種のデータをまとめて解析したメタ解析においても、同様の傾向が確認されました。

それを図示したものがこちらです。

縦軸が総死亡のリスクで、横軸は総カロリーに占める糖質の比率です。

オレンジ色のものは今回の研究のデータで、青い色のものは昨日ご紹介したPURE研究のものですが、ほぼ同質の結果が得られていることが分かります。

糖質以外からのカロリー摂取のバランスで検討すると、糖質を動物性脂肪や蛋白質に置き換えると死亡リスクは増加し、植物性脂肪で置き換えると死亡リスクが低下することが確認されました。

糖質の比率は40%を切らない程度に維持して

このように現状長期の死亡リスクという観点で見ると、総カロリーの50から55%くらいを糖質で摂取することが、最も生命予後に良い影響を与える可能性が高く、糖質を制限する場合には、それを植物性脂肪で置き換えることが、一番バランス的に望ましい、という結果になっています。

これはまだ確定的なものではありませんが、長期の持続的なダイエットにおいては、糖質の比率は40%を切らないレベルに維持することが、現状は妥当であると考えて良いようです。

勿論これは年単位を超える長期の場合の話で、短期的なより高度の糖質制限を、否定するものではありません。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36