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2021.09.08

欧米では失明原因の第1位!生活習慣で変わる「加齢黄斑変性」3つの予防法【加齢黄斑変性・後編】

kencom公式ライター:森下千佳

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欧米では途中失明の原因の第一位で、放置すれば失明リスクのある病気「加齢黄斑変性」。日本でも有病率が年々急増していますが、この病気の発症と進行には生活習慣が大きく関わっているそうです。
今回の記事では、加齢性黄斑変性の最新治療法と共に、症状改善と予防に役立つ生活習慣を、東京女子医大眼科教授の飯田知弘先生に伺いました。

治療方法は大きく2つ

加齢黄斑変性には、黄斑部に異常な血管(新生血管)ができる滲出型と、組織が萎縮する萎縮型の2つのタイプがあり、病気のタイプによって治療方法が異なります。

滲出型の治療

滲出型は進行が早いので、病気がわかったらすぐに治療を開始します。
滲出型の治療では、抗VEGF薬を眼球に注射する方法(抗VEGF療法)が第一選択です。
VEGF(血管内皮増殖因子)は、血管が障害されるとできるタンパク質の1つで、新生血管の発生や成長を促したり、血管から水分を漏れださせる働きがあります。
その作用を抑えるのが抗VEGF薬で、現在は主に3種類の薬が使われています。この治療で、初期であれば、歪みや視力低下などの症状が改善する効果が期待できます。

この治療は非常に有効な治療法ではありますが、根本的に病気を治す治療ではないため、継続的な治療が必要になってきます。最初は月に1回の注射を3回続け、その後は効き目を見ながら注射の間隔を延ばしていくのが基本です。なかには、薬がよく効いて抗VEGF療法をやめられる患者さんもいらっしゃいます。

目に注射をすると聞くと不安を感じる方もいらっしゃいますが、痛みはほとんどなく、1分ほどで済んでしまう治療です。抗VEGF療法は安全性の高い治療で、この治療の進化は目覚ましく失明率が大幅に下がっています。

萎縮型の治療

一方、萎縮型では、現在有効な治療法がありません。定期的に検査を受けて経過観察をしながら、生活習慣の改善をしていくことになります。

加齢黄斑変性の予防&改善3ヵ条

加齢黄斑変性の発症や進行には、生活習慣が大きく関わっています。進行を防ぐ意味でも、予防のためにも、ぜひ生活習慣の改善を実践しましょう!

Point1:抗酸化作用のある食品を積極的に摂る

加齢黄斑変性には、体内の酸化ストレスが関わっていると考えられています。抗酸化作用のある食べ物を、意識して多く取り入れる事が大切です。
具体的には、ビタミンC、ビタミンE、ルテイン、亜鉛、オメガ3脂肪酸などの栄養素です。

ほうれん草や、ブロッコリーなどの緑葉色野菜などに含まれる、ルテイン、ビタミンE、Cなどの栄養素は抗酸化作用が高く、進行を抑える作用がある事が分かっていますし、青背の魚に含まれるDHAやEPAといったオメガ3脂肪酸なども、予防効果が期待できます。また、ナッツ類もビタミンEが豊富なので、おつまみ等で取り入れると良いと思います。

こうした栄養素は、日々の食事から摂る事が理想的ですが、十分に摂れない場合はサプリメントで補うのも1つの方法です。米国の研究では、抗酸化サプリメントの摂取で25%リスクを減らせたとの結果が出ていて、有効性が証明されています。1日の摂取量を守って、賢く取り入れるのも良いと思います。

Point2: 強い日差しから目を守る

黄斑部は、光が集まる場所なので、酸化ストレスに常に晒されています。
特に、太陽の光に含まれる青や紫の波長の短い光は視細胞を傷つけます。

日差しの強い日は、外出時にサングラスをしたり、帽子やサンバイザー、日傘などで、目を守る事も大切です。

Point3: 禁煙する

タバコが加齢黄斑変性の大きな危険因子であることは、多くの研究で確認されています。
喫煙によって体内で酸化を起こす反応と、抑える反応のバランスが崩れる事が発症の誘因になると考えられています。

喫煙している方は、すぐに禁煙しましょう。
自分の意思だけでは、禁煙が難しい方は禁煙外来などを受診することも方法の1つです。

そのほか、肥満、高血圧なども、加齢黄斑変性のリスクになります。
上にあげた3ヵ条に加え、適度な運動を生活に取り入れた生活習慣は、加齢黄斑変性の予防と改善に有効です。加えて加齢に伴う様々な病気の予防にもつながります。
これを機会に、ぜひ普段の生活を見直してみましょう。

40歳を過ぎたら定期的に自己チェックを!

近年、加齢黄斑変性の治療は著しく進歩していて、早期で治療を開始できさえすれば、良い視力が維持できるようになってきています。
だからこそ、早期発見、早期治療が非常に重要です。

「年寄りがなる病気」と過信せず、40歳を過ぎたら意識して、今回ご紹介したセルフチェックをしていただいて、心配な事があれば早めに眼科を受診して欲しいと思います。

飯田 知弘(いいだ ともひろ)先生

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東京女子医科大学 眼科学講座 教授・講座主任 

【プロフィール】
1985年新潟大学医学部卒業。2003年より福島県立医科大学教授ほかを経て、2012年より現職。
加齢黄斑変性の研究を30年以上行う。専門は黄斑疾患、網膜硝子体疾患。日本眼科学会専門医。メディア出演も多く、趣味の考古学研究は玄人はだし。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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