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2021.09.08

50歳を過ぎたら要注意!ものが歪んで見える「加齢黄斑変性」を知る【加齢黄斑変性・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

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「最近、視力が落ちた」「なんだか、線が歪んで見えるかも?」。
そんな、目の不調を感じることはありませんか?

もしかしたらこれらの症状は、50歳以上の男性に多く、日本でも罹患者が急増している「加齢黄斑変性」かもしれません。
放置しておくと失明する可能性もあるだけに、早めに知っていてほしい病気です。
今回は、加齢黄斑変性の研究を30年以上研究を続けているプロフェッショナル、東京女子医科大学眼科学講座教授 飯田 知弘先生に病気の基礎知識と、早期発見のコツなどを伺いました。

飯田 知弘(いいだ ともひろ)先生

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東京女子医科大学 眼科学講座 教授・講座主任 

【プロフィール】
1985年新潟大学医学部卒業。2003年より福島県立医科大学教授ほかを経て、2012年より現職。
加齢黄斑変性の研究を30年以上行う。専門は黄斑疾患、網膜硝子体疾患。日本眼科学会専門医。メディア出演も多く、趣味の考古学研究は玄人はだし。

欧米では失明原因の第一位!

網膜の「黄斑部」に障害が発生する病気

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加齢黄斑変性とは、加齢などによって網膜の「黄斑部」というところに障害が起きる目の病気で、視野の中心が歪んで見えたり、ぼやけて見えたりすることです。
欧米では中途失明の原因の第一位で、治療しないでそのままにしていると急激に視力が落ちてしまうため、失明の恐れもある病気です。

日本でも高齢化に伴って、罹患者数やこの病気によって失明する患者数が急増していますが、早期発見&早期治療で視力の改善が可能になってきています。

視野の歪みやボケが主な症状

主な症状は、下の3つのようなものがあります。

・ものが歪んで見える
・視野の中央部が暗く見える、ぼやける
・視力が低下する

自覚症状は病気の進行具合によって異なりますが、初期は以上のような症状が多く、進行すると真ん中が真っ暗になって、最終的には失明してしまいます。
加齢黄斑変性は両目に起こりますが、左右同時に発症することはまずありません。
両方の目で見ていると、正常な目が、悪くなった目の症状をカバーしてしまいますので、気がつきにくいことがあります。

定期的に片方の目でものを見て、症状の有無をチェックする事が早期発見に繋がります。

加齢から障害につながる

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「黄斑部」というのは、網膜の中央の直径6mm程度の部分で、視細胞が集中していて、ものを見る時に一番働いている非常に重要な場所です。
ところが、加齢などの原因で、黄斑部に老廃物がたまったり、異常な血管ができて液体成分が漏れ出したりするなどの障害が起きると、網膜の他の部分に障害がなくても、視力が著しく低下したり、ものが歪んで見えたりするのです。

2つに分かれる「加齢黄斑変性」のタイプ

加齢黄斑変性は、大きく「滲出(しんしゅつ)型」と「萎縮型」の2つのタイプがあり、起こり方や経過などが異なります。タイプによって治療の進め方も異なるため、きちんと検査を受けて、どちらのタイプか知っておくことが重要です。

滲出(しんしゅつ)型

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日本人に多い型になります。
滲出型は、「新生血管」と呼ばれる、本来存在しない異常な血管が発生することによって起こります。
新生血管は網膜の外側にある「脈絡膜」から発生し、網膜に向かって伸びていきます。新生血管は非常に脆く、血液の成分が漏れたり、出血したりして、黄斑の下にたまると黄斑が障害されます。

その結果、「視野の中心がゆがむ」、「薄暗い」、「視力が低下する」などの症状が起こってきます。
日本人の患者さんの約9割はこのタイプです。
進行が早く、見つかった時点ですぐに治療を始める必要があります。

萎縮型

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一方、萎縮型では新生血管ができず、加齢によって黄斑部にたまった老廃物が網膜を萎縮させる事で、症状が現れます。
滲出型に比べてゆっくり進行し、視力の低下もゆっくりしています。

ただし、このタイプには有効な治療法がまだないので、定期的に検査を受けて経過観察をする必要があります。

リスクが高いのは50歳以上の男性

加齢黄斑変性の起こる原因として、最も大きいのは加齢で、「50歳以上の男性」に多い傾向があります。

50歳頃から発症し、年齢が高くなるにつれて発症率が上がっていきます。日本人男性の発症率は、女性の約2倍です。
「喫煙者」は、非喫煙者に比べて明らかに発症の危険性が高いのも特徴です。
喫煙によって、体内で酸化を起こす反応と、抑える反応のバランスが崩れる事が原因と考えられています。

また、「日光に当たる時間が長い」事や、「食生活のバランスの乱れ」なども影響すると考えられます。
その他、「家族に加齢黄斑変性の人がいる」とこの病気になりやすいといわれています。

ただ、遺伝的になりやすかったとしても、それだけで必ず発症するわけではありません。その他の様々な要因が重なる事で、加齢黄斑変性が起こると考えられています。

こんな症状があったら要注意!早期発見セルフチェック

【引用】公益社団法人 日本眼科医会HP 「知っておきたい加齢黄斑変性ー治療と予防ー10 見え方チェックシート https://www.gankaikai.or.jp/health/51/10.html

【引用】公益社団法人 日本眼科医会HP 「知っておきたい加齢黄斑変性ー治療と予防ー10 見え方チェックシート https://www.gankaikai.or.jp/health/51/10.html

セルフチェックで最も有名なのは、上図のような「アムスラーチャート」という碁盤の目のような図を見てチェックをする方法です。
図から30cmほど離れ、必ず片方の目を隠して、真ん中にある中心点を見ます。
普段手元を見る為にめがねやコンタクトレンズをしている場合は、装着したまま行います。

「線がゆがんで見えていないか」「中心点がはっきり見えているか」「一部が欠けていないか」の3つのポイントを、片目ずつチェックしましょう。

このチャートを使わない場合でも、障子や、カレンダー、風呂場のタイルなど、格子状のものを片方ずつ見ることでも確認する事ができますので、日常的にチェックすると良いと思います。

加齢黄斑変性 治療と予防は後半で!

セルフチェックの結果はいかがでしたか? 
何か1つでも当てはまる症状があれば、もしかしたら加齢黄斑変性が始まっているのかも。
ぜひ、早めに眼科を受診してください。

今回異常を感じなかった方も、早期発見の為に数ヵ月に一度はセルフチェックを心がけましょう。 

後半では、加齢黄斑変性の治療と、予防と改善に役立つとっておきのコツを詳しくお伝えします!

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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