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2019.05.15

失明原因1位!誰しもリスクを持つ目の病気に迫る【緑内障・前編】

KenCoM公式ライター:森下千佳

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日本人の失明原因の第1位「緑内障」。患者数は400万人。国内の40歳以上の20人に1人が患っている病気と言われています。初期の自覚症状がほぼないため、気がついた時にはかなり進行しているということも。緑内障で欠けた視野は元に戻すことができないので、早く発見して治療を開始することが大切です。
小さな兆候を見逃さず、早期発見するためのカギを緑内障の権威 北里大学の庄司教授にお話を伺いました。

庄司信行(しょうじ・のぶゆき)先生

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北里大学医学部 眼科学 主任教授・医学博士
1988年新潟大学医学部卒。日本眼科学会認定専門医指導医。日本眼科学会評議員。日本緑内障学会理事。日本視野学会評議委員。

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視界が徐々に欠けていく緑内障とは

緑内障とはどんな病気か

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緑内障とは視野が徐々に欠けていく病気です。見たものを脳に伝える神経(視神経)は、目の奥にコードのように120万本ほど束ねられていて、その先端の部分を視神経乳頭と言います。その視神経乳頭がダメージを受けて、だんだん減ってきてしまうことで見えない部分が出てくるのが緑内障です。

自覚症状が出にくいという問題点

緑内障には早期発見が大切ですが、困ったことに早期発見につながる緑内障の目立った初期症状はありません。初期段階だと視力も低下しませんし、すでに視野が欠け始めていてもなかなか気づけません。片目に欠損があっても反対の目でカバーをしてしまうからです。
中期になると、下の図のようにぼけやかすみが広がってきますが、患者さんの中には気がつかない人も多くいます。視野検査などで異常が見つかった時には、すでに視神系の半分が死んでしまっているというケースもあります。

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緑内障になると失明してしまう?

緑内障=失明という病気のイメージがありますが、ほとんどの場合は急に失明する病気ではありません。
急性緑内障という発作が起きた場合は失明する可能性はありますが、眼痛や吐き気、視力低下などの自覚症状をともなうので気づきやすく、直ちに治療を受ければ、すぐに失明することは滅多にありません。
ほとんどの場合、緑内障は何十年もかけてゆっくりと進行する病気です。しかしながら、緑内障で欠けた視野は元に戻すことができないため、早く発見して治療を開始することが大切です。

緑内障の発症原因は?

昔は「眼圧が高いことが原因で視神経が圧迫を受けて損傷する」と言われてきましたが、今は緑内障の患者さんの7割が眼圧は高くなく、正常値(10mmHg~21mmHg)の範囲内。実際には「原因が何か?」というのは研究段階で、詳しくはわかっていません。ただ、眼圧を下げると進行が遅くなる人が多いので、眼圧が緑内障と何らかの関わりを持っていると考えられています。
眼圧以外の原因としては「もともと視神経が弱い」、「血流が少ない」、「視神経に毒として働く物質が存在する」などいろいろ考えられていますが、どれも確実な証拠は見つかっていません。

「眼圧」とは?

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眼圧とは、「目の形を保つために必要な眼球の中の圧力」です。目の中にある液体(房水といいます)の量で決まります。適正な眼圧であればしっかり物が見えるけれど、眼圧が上がると視神経が圧迫され、ダメージを受け角膜も濁ってきます。一方、眼圧は下がりすぎても空気の抜けたボールのように歪みやすくなってしまい、乱視が増えて視力が下がってしまいます。
ちょうど良い眼圧というのは、目にとって必要不可欠なものなのです。

緑内障になりやすい人とは?

強度の近視

強度の近視の人は一般的に眼球が大きく、その分網膜が伸びて薄くなってしまうなど、神経の構造的な弱さがあるからだと言われています。

家族歴

血縁のある親族に緑内障の患者がいる人はリスクが高いことがわかっています。

目の打撲などの外傷

テニスや野球のボールが目に強くぶつかって房水の出口(隅角といいます)が傷つき、年単位で水が流れにくくなって眼圧が上がり、将来的に緑内障に繋がってしまうことがあります。30代〜40代で片目だけ緑内障になる人には多く見られます。若いときに、目に外傷を負った経験がある方は、早いうちからしっかり緑内障の検査を受けてください。

糖尿病

糖尿病を原因として緑内障になることがあります。

年齢

40代以上で20人に1人。70歳以上で10人に1人は緑内障になります。

緑内障の初期症状は、日常生活ではなかなか気がつくことができません。以上のどれかの項目に当てはまる方は、危機感を持ってぜひ定期的に医療機関で緑内障の検査をしてください!

やってみよう!早期発見のための緑内障チェック!

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壁やテレビの砂嵐状のザラザラした画面など(地上波のアナログ放送で見られる)の一点に、シールなどで小さな印を付けます。少し離れたところから、片目でその印をしばらく見つめます。その状態で、ぼやけている場所はないか?ハッキリと見えない所があるか?をチェックします。
必ず、片目ずつ行ってください。特に、ご家族に緑内障の方がいらっしゃる方は積極的にチェックしてください。早期発見の鍵は、目の小さな変化に敏感になることです。

見え方に敏感になることが第一歩

早期発見の鍵は、目の小さな変化に敏感になること。そして、自身のリスクをしっかりと知っておくことだと教えていただきました。
次の記事では、緑内障の検査・治療方法と、治療効果を倍増させるコツをお伝えします。

■緑内障はどう予防する?治療や対策はこちらの記事から

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。

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