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2021.06.07

健康診断の定番「胸部レントゲン検査」で何が分かる?

kencom公式ライター:松本まや

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毎年の健診で受ける胸部レントゲン検査。一体何を見る検査かご存知ですか?これだけで肺がんも発見できるのでしょうか?特に喫煙歴のある方は気になる肺の検査について、kencom監修医師である石原藤樹先生に、分かりやすく解説いただきました。

胸部レントゲン検査とは

胸部レントゲン検査とは、背部からX線を当て、胸部にある肺や心臓、大動脈などの臓器に炎症や腫瘍などがないか観察する検査です。当初は、結核を調べるために取り入れられたものですが、結核など肺の病気に限らず、心肥大などの心臓の病気、大動脈瘤などの胸部の血管の病気を発見できることがあります。

X線が通る場所は黒く、通りにくいところは白っぽく写るため、正常な状態であれば肺は黒く、心臓は白く写ります。肺がんが進行している場合、肺の中に白っぽい影が写ります。

また、高血圧などが原因で引き起こされる心肥大は、体格に対する写真に写った心臓の大きさなどで判断します。胸部大動脈瘤は、胸にある太い動脈がこぶのように膨らむ病気です。無症状のことが多いのですが、突然血管が破裂するリスクのある恐ろしい病気です。

X線は放射線の一種なので被ばくしますが、被ばく量は少なく、健康な人であれば問題のない水準です。ただ、胎児に影響を与えるおそれがあるので、妊娠している方は撮影できません。

肺がんの早期発見にはCT検査を

前述の通り、胸部のレントゲンで肺がんの疑いがあることが分かる場合もあります。しかし、心臓や骨と重なった部分の病変など場所によって発見できない場合が有り、特に初期の肺がんを発見する検査としては限界があります。

肺がんの早期発見のため、最も検査性が高いとされているのが、X線を使用して体の断面を撮影するCT検査です。胸部レントゲン検査と比較して被ばく量は多くなりますが、近年は性能が上がり、以前と比べて被ばく量が抑えられるようになりました。

肺がんは早期発見をして、手術で取り除くことができれば、比較的予後が良い病気です。ヘビースモーカーの方など、肺がんのリスクの高い方は、コストをかけてでも一度、検査をしてみると安心でしょう。
禁煙した方も、禁煙から10年程度は肺がんのリスクが高いとされています。定期的に検査することをおすすめします。

付加健診で受ける肺機能検査との違いは?

40歳、50歳の人で付加健診を受ける場合、肺機能検査を受けることになります。同じ肺の検査ですが、胸部レントゲン検査と比べて何が分かるのでしょうか。
肺機能検査では、スパイロメーターという機械に息を吐き出して、空気量などを調べます。主に、長年の喫煙習慣によって肺機能が低下する慢性閉塞性肺疾患(COPD)になっていないか調べる検査です。
レントゲン検査とは検査の対象が全く異なりますが、ヘビースモーカーの人は喫煙しない人と比べて肺がんもCOPDもリスクが高いので、どちらも検査を受けることをおすすめします。

石原 藤樹(いしはら・ふじき)先生

1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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