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2021.01.14

新型コロナウイルス感染症とインフルエンザを比べてみると?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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今年は新型コロナウイルスばかりが話題になっていますが、例年この時期はインフルエンザも多数の感染者が出ています。どちらも重症化した場合は合併症が怖いのですが、どの程度違いがあるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、British Medical Journal誌に、2020年12月15日にウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザ入院事例を、比較検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナとインフルエンザ、どれほど違う?

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、東京でも猛威を振るっています。

感染拡大は深刻な問題ですが、その一方で通常の生活をしている多くの人にとっては「新型コロナって、そこまで大騒ぎするほどのものなの?」というような意見もあります。

特にその第1波と呼ばれる流行初期の時期には、「普通のインフルエンザだって、重症化して死んでいる人はいる。新型コロナも重症化するのは一部の人だけだし、インフルエンザと変わらないんじゃないの?」というような意見も結構聞かれました。

実際はどうなのでしょうか?

新型コロナのほうが、重篤な合併症のリスクが高い

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今回の研究はアメリカにおいて、高齢者の医療保険のデータを活用して、2020年2月1日から6月17日までに新型コロナウイルス感染症で入院した3641名を、2017年から2019年に季節性インフルエンザで入院した12676名と、比較検証しているものです。

その結果、新型コロナウイルス感染症で入院した患者さんは、季節性インフルエンザで入院した患者さんと比較して、

入院中の腎障害のリスクが1.52倍(95% CI:1.37から1.69)、
透析使用のリスクが4.11倍(95% CI:3.13から5.40)、
インスリン使用のリスクが1.86倍(95% CI:1.62から2.14)、
重度敗血症のリスクが4.04倍(95% CI:3.38から4.83)、
昇圧剤使用のリスクが3.95倍(95% CI:3.46から4.51)、
肺塞栓症のリスクが1.50倍(95% CI:1.18から1.90)、
深部静脈血栓症のリスクが1.50倍(95% CI:1.20 から1.88)、
脳卒中のリスクが1.62倍(95% CI: 1.17から2.24)、
急性心筋炎のリスクが7.82倍(95% CI:3.53から17.36)、
不整脈による突然死のリスクが1.76倍(95% CI: 1.40から2.20)、
心筋障害の指標であるトロポニン上昇リスクが1.75倍(95% CI: 1.50から2.05)、
肝障害のリスクが3.16倍(95% CI: 2.43から2.88)、
横紋筋融解症のリスクが1.84倍(95%CI: 1.54から2.18)、

それぞれ有意に増加していました。

総死亡のリスクは約5倍、人工呼吸器のリスクは約4倍

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要するにインフルエンザの入院と比較して、重篤な合併症のリスクは新型コロナウイルス感染症では、有意に高いことが分かります。

そして、総死亡のリスクも4.97倍(95% CI: 4.42 から5.58)、人工呼吸器装着のリスクも4.01倍(95% CI: 3.53から4.54)、集中治療室入室のリスクも2.41倍(95% CI: 2.25 から2.59)、新型コロナウイルス感染症の入院において高くなっていました。

入院患者100人当たり、インフルエンザと比較して新型コロナウイルス感染症の入院では、16.85名(95% CI: 14.85 から18.99)死亡が多く発生するというように推計されています。

この死亡数の差は、年齢が75歳を超え心血管疾患や慢性腎臓病、認知症があるとより大きくなり、人種では白人種より黒人種で大きくなっていました。

予後にはかなり大きな差が

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このように、季節性インフルエンザでの入院と比較して、新型コロナウイルス感染症での入院では、合併症も生命予後も明確な差があり、今後この感染症も特別視はされなくなるでしょうが、その予後に差があること自体は間違いない事実であるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36