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2017.02.27

一生モノの貯蓄体質を手に入れるには?【FP馬養さんインタビュー②】

KenCoM編集部

「今年こそは貯金!」と一念発起しても、これまでと同じ考え方では1年後に何も変わっていない可能性もあります。個人のお金のアドバイザーとして書籍の執筆や講演等で幅広く活動されている馬養雅子さんに「なんとなく貯められない生活を終わりにして一生モノの貯蓄体質を手に入れる」べく、貯金や節約の基本について教えていただきました。

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<お話を伺った方>

■馬養雅子(まがいまさこ)さん
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者)
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士
・オフィス・カノン代表
「個人のお金のアドバイザー」として金融商品や資産運用などに関する書籍や新聞・雑誌記事の執筆、金融関連企画へのアドバイス、講演などを行う。実用書の編集経験を活かしたわかりやすい説明が得意。著書に『明日が心配になったら読むお金の話』、『プロが教える簡単マネーブック』など、執筆記事に日本経済新聞、日経ヴェリタス、産経新聞、朝日新聞、など多数。

「なんとなく貯められない」を止めて貯金したい!

――「なんとなく貯められない」を脱するためにはどうすればよいですか?

それには「先取り貯蓄」ですね。毎月残ったお金を貯めようと思っていると、いつまでたっても貯まりません。お給料が振り込まれたら、先決まった額を貯金しましょう。

それにはお給料が振り込まれた時点で貯金ができてしまう「財形貯蓄」が1番良いです。でも、勤務先で財形貯蓄ができなければ、自動積み立て定期預金を利用するとよいですね。
「先取り貯蓄」なら自動的にお金が貯まっていきます。

――なるほど。貯金すべき割合や金額など、目安はいくらでしょう?

いままでゼロだった人が、毎月10万円貯めようとしても無理なので、今までに毎月これくらいお金が残るという感覚があるならその額から始めて、だんだんに増やしていきましょう。可能であれば、手取り月収の10%くらいは貯金したいですね。

――毎月10%も残らない、もっと貯金が必要・・・というときは、節約ですね?

そうですね。それには家計簿をつけて支出の中身を把握する必要があります。

節約は「家計簿」からスタート。失敗しない方法は?

――家計簿ですか。それが1番難しかったりしますよね。

家計簿ってなかなかつけられないですよね。家計簿をつけている人は2割もいないという統計もあります。

――そんなに少ないんですね!なぜつけられないんでしょう?

市販の家計簿って1月から始まっていますよね。それがだめなんですよ。
1月から始めて、2月くらいまでは何とかがんばるんですけど、3月くらいに挫折していまい「また来年から!」って1年先延ばしにしてしまうんです。

――確かに、そういう記憶は何度もあります。

だから1月や4月から始めることにこだわらずに、思いついたときからスタートするのが良いですね。1ヵ月くらいダメでも、また次の月からがんばろうかなみたいな。

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――ある程度のアバウトさも必要なんですね。

そうですね。もうひとつイヤになる理由が、家計簿上の残高と、財布に残っているお金が合わないこと。でも、家計簿は支出を把握するためのものなので、残高が多少合わなくても気にする必要はありません。そして費目を細かくしすぎないこと。市販の家計簿だと、「食費」の費目の中に「主食」、「嗜好品」などと分かれていたりしますが、そんなに細かく分ける必要はまったくありません。

食費と日用品は一緒にしても問題ないですし、子供にかかるお金もひとまとめで大丈夫。 光熱費など銀行口座からの引き落としやクレジットカードで支払うものは、月に1回書き写せばすみます。

――なるほど。引き落とし分の把握には、明細を見ればわかりますもんね。

そう、手間をかけないのもコツですよね。食費だってカードで払う人もいますし、交通費はICカードですよね。現金で支払うものはスマホの家計簿アプリを活用して、お金を使うたびに入力していくのがおすすめです。

――ほかに失敗しない家計簿のつけ方ってありますか?

例えば家族で旅行へ行ったりするとその月だけ支出が多くなってしまいます。

――「今月めちゃ支出多いな・・・全然ダメだ」って思いますよね。

なので、旅行や帰省の費用、固定資産税、年払いの保険料、季節ごとのクリーニング代など、毎月ではないけれど、年単位でかかるお金は、毎月かかるお金とは別にしてつけるのがコツです。

――共働きの場合は、別々に家計簿をつけたほうがいいでしょうか。

「家計」用の財布や口座を作って、そこで管理するのがよいですね。例えば、夫が住宅費と光熱費、妻が食費や教育費を払うというふうに費目で分けていると、支出を把握しようとしたとき、2人であわせてみないと分かりません。
世帯としての支出を把握するためには、家計用の口座に2人がそれぞれお金を入れて、残りをおこずかいとして使うとよいと思います。

――夫婦で、支出を減らす時のコツってありますか?

家計簿をつけたら、夫婦で支出をチェックしながら、どの費目をどのくらい減らすか相談するとよいですね。どちらかが一方的に「あれを減らせ、これを減らせ」といったらケンカになりますから。そうやって、大まかな支出の割合を見て、「初めてじゃあどこを減らそう?」と優先順位を考えながら削っていくと良いと思います。

――夫婦喧嘩に発展しそうですよね。

イメージでやるとそうなるので、数字で把握することですね。それを踏まえて、「じゃあ何パーセントにする?」といったやり方をしたほうがスムーズですよね。

そうやって、大まかな支出の割合を見て、「初めてじゃあどこを減らそう?」と優先順位を考えながら削っていくと良いと思います。

いま節約するならどこを削るべき?

――いま削るとすればこれがおすすめ!というものはありますか?

通信費は格安スマホへの乗り換えで大きく削ることができます。私の場合、大手キャリアの契約で月々8000円だったのが、格安スマホに乗り換えてから2500円位になりました。こんなに節約できるのは今ほかに無いと思います。家族全員で乗り換えたら大きな額の節約になりますよね。

――格安スマホの使いやすさはいかがですか。デメリットは?

私の場合は今までどおりで特に無いですね。あえて言うなら、キャリアメールが使えないことだけです。

――ほかにおすすめの節約ポイントはありますか?

生命保険の保険料です。子供が小さいときは、死亡保障もたくさん必要ですが、子供が成長するにつれて必要な保証額は下がっていきます。40代、50代で、子供が小さいときのまま保険を見直していないと、必要額以上の保障のために必要以上の保険料を払っている可能性があります。

会社の団体保険に入っているのに、別の保険に入っていて保障が重複しているようなケースもあるので、一度チェックしてみるとよいですね。自分がどんな保険に入っているのか分かっていない人も多いです。保険は、自分で請求しないと保険金や給付金が受け取れません。自分がどんな保険に入っていて、どんなときに保険金・給付金が受け取れるか分かってないと何かあったときに請求できず、保険金・給付金を受け取りそびれる可能性もあります。

――保険も、支出と一緒で把握しておくことですね。

タイミングとしては子供が中学生くらいのときに1回見直したほうがいいですね。子供が大きくなったら大きな保障は必要ないので、保障額を減らすことによって保険料が節約できる可能性があります。

一生モノの節約習慣を身に着けよう

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――実際に相談に来られた方には、どんなアドバイスをするんでしょう?

共働きで子供がいないカップルがこられました。平日は全部外食なんだけど、土日も外食だというので、土日のどちらかは自分たちで食事を作ったらとアドバイスしましたね。

――すでに習慣化された支出は、人に言われないと気づかないものですよね。

そうですね。毎日スーパーに行くのが習慣になっている主婦には、行く回数を減らしては、と提案しました。

――それはありますよね。今日は卵が安いから、明日は日用品だ・・・と言ってスーパー通いになってしまうという。

スーパーに行けば必ず何か買ってしまうので、必要以上に買い物をしてしまいがちです。用もないのにコンビニに行くとか、特にコーヒーが飲みたいわけじゃないのに、毎日スタバに行ってしまうとか。自分を客観的に見るというのが大切ですよね。買い物をするとき、これは本当に必要なのか、と考える習慣を身につけるといいですね。

――今の時代は、ネットで「ポチっと」買い物できてしまいますしね。

ついつい買わせる仕組みがどこにでもありますからね。

――ネットショッピングは、やはり浪費しやすいでしょうか。

ネットショッピングが悪いって言うわけではありません。これを買おうと決めて、「ついでにこれもどうですか」という表示が出たときに、いかに惑わされないようにするかが重要です。「プラス1000円で送料が無料」だったとしても、送料のほうが安いかもしれません。

「wants」なのか「needs」なのか。それが必要だから買うのか、消費欲を満たすために買うのか。買い物カゴに入れる前に、立ち止まって考えることですね。

――すべての買い物に言えそうですね。

無駄な買い物はしない、消費欲を満たすだけの買い物はしないと決めておくことが大切です。気に入ったお洋服があったら色違いで2枚買うという人がいました。でもそのうち1着は結局着ないと言うんですね。これは無駄な買い物だったということです。こういう習慣を止めるだけでも違ってくると思いますよ。

――ほかに浪費しやすい人の特徴はありますか?

冷蔵庫の中がごちゃごちゃしていると、同じものを買ってしまうことがあるし、まとめ買いしたものが使い切れずに腐らせてしまったりすれば、ムダなお金を使うことになります。

家計簿をつけたり整理整頓を心がけたりすれば、ムダな支出が減り、家計にゆとりをもたらすことにつながります。

今回のポイント

家計簿をつける意義は、1円単位で収支をきっちりあわせることではなく、自分の支出の傾向を把握することだと分かりました。また日々の節約のためには、誰かと同じものが欲しいと思ったり広告に心を惑わされたりしない、一歩引いて見る目も必要。自分の生活の軸をしっかり持つことが大切ですね。

・家計簿の目的は、支出を把握すること

・家計簿は1月や4月から始めなくても大丈夫。思い立った時に始めよう

・家計簿の残高と、財布の中身が違っていても大丈夫

・買い物では本当に必要なものか、消費欲を満たすだけのものか立ち止まって考える

――次回は、いよいよ老後破産について聞いてみました!

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