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2024.03.14

わが子との関わりに悩む…そんな時に使いたい〈奇跡の質問〉とは?|臨床心理士が解説

ヨガジャーナルオンライン

悩むお子さんの姿を目の前にし、一生懸命アドバイスをしようとしてもうまくいかない、それどころか『うるさい!』『黙ってて!』なんて言われて途方に暮れてしまう…そんな経験をしている親御さんは少なくないと思います。お子さんとの関わりがうまくいかず、『もうどうしたら良いのか分からない…』と思った時に、解決のヒントになるかもしれない、心理学的スキル『ミラクル・クエスション』をご紹介。ミラクル・クエスションとは何か、どんなメリットをもたらしてくれるのか、心の専門家である臨床心理士が解説します。

困難を乗り切るための、【ミラクル・クエスション】とは

ミラクル・クエスチョンとは『奇跡の質問』とも呼ばれ、非現実的にはありえないと思われる質問を相手、あるいは自身に問いかけることにより、現在陥っている困難な状況の解決を目指す心理学的なスキルのことです。ミラクル・クエスションは、心理療法家のインスー・キム・バーグとスティーブ・ド・シェイザー夫婦を中心に開発され、ブリーフセラピーという心理療法で使われています。例えば、困り事を抱えている人を目の前にした時に、以下のような質問を投げかけます。

『あなたが寝ている間奇跡が起こり、朝起きたらすべての問題が解決していたとします。でもあなたは寝ていたので奇跡が起きたことを知りません。朝起きて、昨日とのどのような違いがあることで、奇跡が起きたとわかるでしょうか?』

この質問を目にした第一印象として、『言っている意味が分からない』『そんなの現実的にあり得るわけない』そう思った方もいるでしょう。これをお子さんにかける言葉に変えるとしたら、以下のような声かけができます。

【お子さんにかける場面と言葉の具体例】

① 宿題をやろうとしないお子さんに対して、『もし知らない間に宿題が全部終わっていたとしたら、どんな気持ちになる?何がしたい?』

② 悩み事を抱えているお子さんに『朝起きて、その悩み事が消えていたとしたら、どんな気持ちで1日を始めることができるかな?』

ミラクル・クエスションのメリット

解決の道へ近づく

問題や困難に直面すると、どうしても私たちの中に『何が原因なのか』という問題・原因探しや、『あの時のこれが行けなかったのではないか?』という過去に起きたことを掘り下げることをしがちです。そうすると、解決どころかネガティブな感情が増幅し、辛くなってしまって余計に行動できない、そしてまた同じ選択をとってしまうという悪循環になってしまうことも。しかし、ミラクル・クエスションをすることによって、過去のことをいったん片隅に置いて、今現在・あるいは未来に軸が切り替わり、『解決のために何ができるのか、何が必要か』という方向に向くことができます。

主体性を持ちやすい

宿題をやらないお子さんとお母さんの例ですが、お母さんから『宿題をちゃんとやらないとダメでしょ』と注意されることがいつものパターンになっているのだとすると、心理的リアクタンスという『自分のことは自分で決めたい』という反抗心が湧き、かえって宿題に手を付けなくなるということが起きてしまいます。しかし、このミラクル・クエスションを問いかけることで、主軸が本人に変わるため、同じ宿題のことを言われるのでも、お子さんの中で受け入れやすさが変わるでしょう。また、ミラクル・クエスションは、未来についてのポジティブなイメージを促すので、それに向かってどんな行動を取ればいいのかが見えやすくなり、主体的に行動するのに役だちます。

自分の本音が見えてくる

ミラクル・クエスションは一見、非現実的とも思える印象を持ちますが、普段気づかなかった自分の欲求への気づきを得るのに役立ちます。私たちは様々な関係性の中で日々を過ごしているので、『こうあるべき』『これが当たり前』といった先入観に知らないうちに影響されて、自分の欲求や本音が隠れてしまっていることが多いです。ミラクル・クエスションをすることにより、そういった先入観などを一時的にでも取っ払うことができるため、実は思っていたけど見えないようにしいていた自分の本音を引き出すことができるのです。

ミラクル・クエスションを、お子さんとの関わりのヒントに

ミラクル・クエスションを使う上で注意点をお伝えするとしたら、ミラクル・クエスションは無理やりポジティブな気持ちを促すためのものではないということです。ポジティブな気持ちにすることを目的にしてしまうとうまくいかないことも多いので、『お子さんとのやり取りの悪循環を切り替えるエッセンスのひとつ』くらいの軽い気持ちで使ってみてください。最初は違和感を覚えるかもしれませんが、慣れていくとうまく使えるようになっていきますので、気長に試してみてくださいね。

【参考文献】

若島孔文(著)『短期療法実践のためのヒント47 心理療法のプラグマティズム』遠見書房(2021)

日本ブリーフサイコセラピー学会(編)『ブリーフセラピー入門 柔軟で効果的なアプローチに向けて』遠見書房(2020)

AUTHOR

南 舞

公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。

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