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2022.07.20

野菜たっぷり!ハフハフしながら食べたい山梨県「ほうとう」【ニッポン地元メシ#25】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

南アルプスや富士山、八ヶ岳など日本を代表する山々に囲まれた山梨県。きれいな水にも恵まれていることから農作物の栽培が盛んです。

特に山梨県は1日の気温差が大きく、降水量は少なく、さらには日照時間が長いということもあり、ぶどうや桃といった果物の栽培が盛ん。フルーツ王国ともいわれることもあります。
また、甲州ワインや勝沼ワインといった国産ワインの製造も盛んなことから「ワイン県」とも呼ばれています。

今回は数ある山梨県の中の郷土料理のなかでも、特に有名な「ほうとう」について紹介します。

「ほうとう」とは

山梨県のほうとうは全国的にも有名な郷土料理なので、食べたことがある方もいるのでは。

小麦粉で作られた麺と様々な野菜を一緒に味噌で煮込んだ麺料理で、材料や見た目は味噌煮込みうどんに似ており、温かい状態でいただきます。

うどんとの一番の違いは麺に塩を加えないこと。
うどんでは小麦粉の生地を安定させるために塩を入れるのですが、ほうとうは塩を加えないため、煮込んでいる間に小麦粉がじわじわと汁に溶け出て、汁自体に自然なとろみがつきます。
このとろみには、温かいほうとうが冷めにくいというメリットがあります。

武田信玄の陣中食だったという説

ほうとうの発祥には諸説ありますが、その一つが武田信玄にまつわるもの。

戦国時代、甲州地方(現在の山梨県)ではお米が大変貴重であり、それに代わる陣中食として開発した、というものです。
戦う武士のチカラめしとなっていたのかもしれません。

県内の峡南地域では「のしいれ」「のしこみ」とも呼ばれており、稲作が適さない山間で、米に代わる主食として古くから親しまれてきたそうです。

ほうとうの作り方

ほうとうに欠かせないのが「ほうとう麺」。うどんのように見えますが、塩を入れず、小麦粉にぬるま湯を少しずつ加えてまとまったら濡れ布巾をかぶせて少し(30分程度)寝かせます。

ほうとう麺を寝かせている間に鍋の準備をします。
まず鍋に水と煮干しをいれ、あらかじめ出汁を取っておきます。
使用する具材はお好みですが、かぼちゃ、大根、にんじん、椎茸、白菜、長ねぎ、じゃが芋などが定番です。一口大に切っておきましょう。
さらにコクやうま味をプラスする油揚げも加えます。

鍋には火の通りが遅い食材から加えていきます。具材に火が通ったところで寝かせておいたほうとう麺をうどんより幅広の平打ちにし、直接鍋に加えます。
味付けに味噌の半量を加え、油揚げもこのタイミングで加えます。ほうとう麺に火が通ったら残りの味噌を加えます。

ほうとうのお手軽ポイントはこの「ほうとう麺」です。うどんと違って塩が入っていないため、事前にゆでて塩を抜く必要がなく、直接鍋に入れられるのです。

野菜たっぷり!ほうとうの栄養

ほうとうがほかの麺料理と大きく違うのは、圧倒的な「野菜の量」ではないでしょうか。

にんじんやかぼちゃにはβ-カロテンという強力な抗酸化作用をもつ成分が含まれます。
さらにβ-カロテンは体内で必要な分だけビタミンAとなり、粘膜の潤いを保ったり免疫力アップに役立ったりと重要な働きをします。

また、じゃがいもに含まれるビタミンCは熱に弱い性質があるのですが、芋類に含まれるものはでんぷんに守られていることで壊れにくいという特徴があります。
椎茸や長ねぎも入っているため、食物繊維もしっかりと摂ることができます。

ビタミンやミネラルは水に溶け出やすいものも多いのですが、汁物であれば汁ごといただくため、栄養素を丸ごと摂り入れることができます。

ほうとう麺でエネルギーを補給しつつ、野菜でビタミンやミネラルをチャージ、そして発酵食品である味噌をたっぷりと使い腸内環境もサポート。
ひとつの鍋でバランスよく栄養を取ることができるのは嬉しいですね。

また、ほうとうは冬のイメージがありますが、夏でも室内の冷房で体が冷え切った時には芯から温めるのにも活躍しそうな料理です。

種類の違いで楽しむほうとう!

出典:「小豆ほうとう」農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/azuki_houtou_yama_nashi.html)

出典:「小豆ほうとう」農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/azuki_houtou_yama_nashi.html)

ほうとうは味噌煮込みの温かい麺料理ですが、小麦粉と水で作った麺を使った料理が山梨県にはたくさんあります。

ほうとうと具材は同じですが、ほうとう麺の形を変えた「みみ」。
みみは小麦粉をこねてのばし一口大に切った正方形の生地の、片側の二つの角をくっつけて三角にしたもので富士川町十谷地域の料理です。

そのほかにも盆や正月、祭りのときに食べられる「小豆ほうとう」という甘いほうとうもあります。

出典:「おざら「農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/ozara_yama_nashi.html)

出典:「おざら「農林水産省Webサイト(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/ozara_yama_nashi.html)

暑い季節に食べられるほうとうが「おざら」というもの。
これは少し細めのほうとう麺を一度茹でて冷水にとり冷やしたものを醤油ベースのつゆにつけていただく料理。冷たくのど越しもよいおざらは夏のごちそうだったとか。

このように、ほうとうをベースとして、TPOにあわせて様々な食べかたがあると、飽きずに楽しんで続けられますね。

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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