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2022.03.04

2種類あるって知ってた?真鯛の名産地・愛媛県の「鯛めし」【ニッポン地元メシ#16】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

四国地方、瀬戸内海に面した愛媛県。

県のイメージアップキャラクター「みきゃん」にも表れているように、瀬戸内の温暖な気候からかんきつ類の生産が大変盛んです。
かんきつ類の生産においては100年以上の歴史があり、最近では新しい品種も続々と登場しています。主なものだけでも伊予柑やデコポンなどを含め、約11種類にもわたるとのこと。

そんなフルーツ王国でもある愛媛県は海の幸にも恵まれています。
今回は愛媛県の県魚でもある鯛を使った「鯛めし」について紹介します。

愛媛県の鯛がおいしいのには理由がある

鯛が有名な愛媛県ですが、中でも養殖真鯛の生産量は1990年から不動の1位!

養殖技術はもちろんのこと、宇和海(うわかい、愛媛県と大分県の間にある豊後水道の愛媛県側)にはミネラル豊富な黒潮が一部流れ込むことで自然と海水の入れ替えが行われ、衛生面でも栄養面でも良い状態をキープし続けられることもあり、質の良い魚が育つと言われています。

2種類の鯛めし文化

恵まれた漁場で育った美しい鯛はどのように調理しても美味しくいただけますが、愛媛県の郷土料理として親しまれている鯛料理のひとつが「鯛めし」です。
しかし鯛めしも、県内で全く異なる2種類の作り方があるのをご存知でしょうか?

中予・東予は、土鍋で豪快に炊き込むスタイル

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愛媛県はかつて「伊予の国(いよのくに)」と呼ばれていたことから、地域を分ける際は中予・東予・南予という呼び方をします。

伊予市や松山市のある中予や今治市や新居浜市のある東予で食べられる鯛めしは、「鱗を取り内臓を除いた鯛をそのまま土鍋で炊き込む」というものです。
これは、神功皇后が朝鮮出陣の必勝祈願のため鹿島明神(現在の松山市)に立ち寄った際に、地元の漁師から献上されたのが始まりとも言われています。(諸説あり)

材料は米、水(醤油やみりんなどの調味料)、昆布、鯛を基本に、家庭によってにんじんやごぼう、油揚げなどを加えることもあります。
炊きあがったら昆布を外し、鯛の身をほぐし、三つ葉などの薬味を添えていただきます。

南予は、刺身と醤油で漬け丼スタイル

豪快な土鍋スタイルに対して、宇和島市のある南予では「刺身の状態の鯛を醤油ベースのたれに漬け込みネギなどの薬味とともに熱々のごはんにかけていただく」というスタイル。鯛自体に火を通さないこの鯛めしは「宇和島鯛めし」とも呼ばれています。

これは、宇和海にある日振島を根拠地にしていた伊予水軍が、船上で醤油と刺身を混ぜ合わせて食べたことがはじまりとも言われています。
鮮度の良い美味しい鯛だからこそ叶う食べ方ですね。

鯛めしの栄養

真鯛は私たち日本人には昔から親しみのある魚です。生まれた子どもの100日をお祝いする「お食い初め」では祝い鯛、離乳食でも「白身魚」から始まります。もしかしたら、みなさんが初めて口にした魚介類かもしれませんね。
加熱をするとふっくらと柔らかい上に、癖がなくうま味も凝縮されているため、味の面でも人気が高い食材です。

真鯛(天然)のエネルギーは129kcalです。タンパク質は17.8g(可食部100gあたりの数値)と高タンパク質であることがわかります。

そして意外なことにカリウムが440mgも含まれています。
カリウムは、摂りすぎるとむくみの原因となる余分なナトリウムを調整する役割があるため、ダイエットや血圧に気を付けている方には強い味方となる栄養素のひとつです。
カリウムは野菜や果物にも多く含まれる栄養素ですが、実は魚や肉にも含まれているのです。

鯛めしのうま味として使われる昆布にはフコイダンと呼ばれる食物繊維の一種が含まれています。
食物繊維は糖の吸収を穏やかにして血糖値の急上昇を防いだり、腸内環境を整えたりする働きがあります。

そして鯛めしの土台となる米には脳や身体にとって良質なエネルギー源となる炭水化物が含まれています。

にんじんやごぼうを炊き込む場合は食物繊維も一緒に摂ることができます。
鯛めしの材料はシンプルですが、質の良い栄養素とうま味がぎゅっと詰まっているため、身体も喜ぶ1品となるでしょう。

鯛めしはお米と魚が主となりますので、どうしてもビタミンや食物繊維は少なめになりがち。
青菜のおひたしや野菜の煮物、具だくさんの汁物といった副菜を付けたり、季節の果物をデザートに添えることで補えます。

愛媛県の名産でもあるかんきつ類にはビタミン・食物繊維が含まれ、デザートとしてはもちろんですが、サラダにプラスしてもおいしくいただけます。

春は旬の「桜鯛」を楽しんで

3~4月頃の鯛は、産卵に向けて栄養をしっかりと蓄えきれいな桜色に染まることから「桜鯛」とも呼ばれ、特に美味しい時期となります。
ぜひ、旬の鯛を使って栄養たっぷりの鯛めしで春の食卓を囲んでみてはいかがでしょうか。

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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