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2022.02.19

大人になってからも起こる!ぜんそくってどんな病気【気管支喘息#1】

kencom公式ライター:松本まや

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咳や痰が止まらず呼吸が苦しくなる呼吸器の病気、ぜんそく(気管支喘息)。「子どもの病気」というイメージを持つ方も多いと思いますが、実は大人になってから発症するケースも非常に多く、成人の1割が有病と言われることもある誰にとっても身近な病気です。そんなぜんそくのメカニズムや症状について、呼吸器疾患に詳しい帝京大学医学部附属病院の長瀬洋之教授に教えていただきました。

長瀬 洋之(ながせ・ひろゆき)先生

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帝京大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー学教授。医学博士。東京大学医学部卒業。東大病院、国立国際医療センター、日本学術振興会特別研究員等を経て現職。日本内科学会総合内科専門医・認定医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医・代議員、日本呼吸器学会専門医・代議員、日本がん治療認定医など。気管支喘息、COPD、肺癌等の呼吸器疾患全般を専門。

ぜんそくは気道の炎症による慢性疾患

そもそもぜんそくとはどのような病気なのでしょうか。

ぜんそくは口から肺への空気の通り道である気道に炎症が起きることで、気道内の粘膜がむくんで気道が狭くなり、咳や痰、息苦しさや呼吸する際に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という特有の音の出る喘鳴などの症状が現われる慢性疾患です。

炎症を起こして過敏になった気道では、刺激を受けると気道の周りにある「平滑筋」という筋肉が収縮し、さらに気道が狭くなって息がしづらくなります。これがぜんそくの発作です。

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環境再生保全機構の調査によると、2012年時点で成人の約9%が有病(ぜんそくと診断を受け、治療中または症状がある状態)とされる身近な病気で、成人の有病率は増加傾向にあると言われています。

一方で、ぜんそくが原因で亡くなる人の数は減少傾向にあり、年間1500人程度になっています。うまくコントロールすることで日常生活を継続することができる病気でもあるのです。

ぜんそくの症状の特徴は?

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「気道の炎症」と言っても、風邪などのウイルス感染が原因で気管支が炎症を起こし、咳が続くような経験がある人もいるのではないでしょうか。ぜんそくとの違いはどこにあるのでしょう。
ぜんそくの特徴は、よい状態と悪い状態を繰り返しながら症状が続いていくことです。

特に気温の低下による影響を受けやすいと言われており、気温が変化しやすい秋や春に悪化しやすくなります。一方ですごく暑かったり、寒かったりして過ごしづらい時期であっても、気温の変化の少ない夏や冬は比較的症状が安定しやすいと言われています。このように状態に波がある点が、COPD(慢性閉塞性肺疾患)など他の気道の病気との違いです。

理由についてははっきりとは分かっていませんが、身体を活性化させる交感神経とリラックスさせる副交感神経が切り替わるタイミングである明け方に、調子が悪くなりやすいことから自律神経のバランスと関連性が指摘されています。

ぜんそくの原因は?

ぜんそくの原因は様々ですが、個人の特徴である個体因子と環境因子が掛け合わさって発症します。
個体因子は本人が持つ先天的な特性で、アレルギーがあるなど患者本人の体質の他、性別や両親がぜんそく患者であるなどの家族歴のことです。
環境因子は後天的な要因で、喫煙、大気汚染やハウスダスト、ストレスなどの生活環境や生活習慣などです。

ぜんそくに種類はあるの?

ぜんそくには複数の分類方法がありますが、アレルギーが原因となるもの(アトピー型)とそうでないもの(非アトピー型)での区分することが一般的です。
小児ぜんそくの約9割はアレルギーによって引き起こされるアトピー型ですが、大人になってから発症するぜんそくは非アトピー型が約4割で、アレルギーが確認されないぜんそくの割合が高くなります。

最近ではその他に、炎症が起こっている際に分泌されるタンパク質の種類に応じた分類法も最近注目されつつあります。アレルギーに反応して分泌される特定の物質が確認された場合に2型ぜんそく、それ以外を非2型ぜんそくとしています。このような分類は最適な治療を選択する際に役立ちます。

どんな人が発症しやすい?

一概にリスクを定義することは難しいですが、遺伝することが多いため、家族にぜんそく患者がいる方はリスクが高いでしょう。また、アレルギー性の鼻炎などと併発することが多いため、アレルギーをお持ちの方や花粉症の方も注意が必要です。
その他にそれほど大きな差はみられないものの、女性の方がやや発症しすいと言われています。

子どもの頃に発症した場合には、成長するに伴って半数以上が完治します。ただし、完治しない場合には重症化しやすく、注意が必要です。また小児ぜんそくだった人は一時完治したように見えても、成人してから再発する例があります。

大人になってから発症した場合には完治が難しく、完治を目指すよりも可能な限り日常生活に影響を与えず、重症化させない治療を行っていきます。

ぜんそくの悪化は気道の構造を変化させる

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ぜんそくの初期は、気管支拡張薬を使用して気道を広げることで対処します。
ですが、発作を繰り返すうちに気管支が狭くなったまま固定化してしまうことがあります。このように気管支の構造が変化してしまった状態を「リモデリング」と言います。

リモデリングは、気道の周りの筋肉である平滑筋の肥大や、痰のもととなる粘液を分泌する杯細胞の過剰な増加、気道にコラーゲンなどが沈着してしまう線維化など複数の原因によって引き起こされます。

日進月歩で研究が進んでいるものの、現時点では一度進んでしまったリモデリングを、効果的に治療する方法は確立されていません。
発作を繰り返すとリモデリングが起こりやすくなるため、軽い発作であっても薬を使用して確実に症状を抑えることで、リモデリングを予防する治療を行っていきます。

第2編では、病院にかかった場合の診断方法と、このような重症化を防ぐ治療法について詳しく紹介していきます。

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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