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2019.01.28

逆流を阻止せよ!食道の守り方【増えてます!逆流性食道炎#3】

KenCoM公式ライター:黒田創

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近年ピロリ菌に感染している人が減った結果、胃の状態は改善していますが逆に食道に疾患のリスクが高まっています。特に逆流性食道炎が原因と考えられる食道がん(食道腺がん)の発生数が増えている中、その予防策は押さえておきたいところです。今回も日本消化器内視鏡学会指導医で医学博士の近藤慎太郎先生にお話を伺いました。

どう防ぐ?どう治す?逆流性食道炎

健康な胃ほど逆流性食道炎になりやすい?

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おさらいになりますが、胃はピロリ菌が除去されて健康になると、胃酸の分泌が活発になります。この状態が続くと逆流性食道炎が起こりやすくなる可能性があります。
もちろん、胃がんなどの疾患リスクを考慮するとピロリ菌の除去をやめるわけにはいきません。この点は医師にとっても悩ましい部分です。

もうひとつ悩ましいのが、ピロリ菌を除去するとご飯が美味しく感じられる場合がある点。実際、胃炎などでピロリ菌を殺菌した経験のある方の多くはそう実感するそう。それで食欲が増進した結果、食べ過ぎたり内臓脂肪が増えたりすることで胃酸が逆流しやすくなり、逆流性食道炎を引き起こしてしまう可能性もあるのです。

ならば少しでも症状が出たときに軽く考えて漫然とやり過ごすのではなく、早め早めに対処することが必要となってきます。

よくあるその症状、逆流性食道炎を疑った方がいいかも?

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食べた後頻繁に胸やけしたり、ウッとなって嘔吐したり吐き気を催す人は逆流性食道炎の可能性が高いです。特に胃酸をたくさん出したり、胃酸の逆流を助長させるラーメンや焼き肉などの脂肪の多い食べ物や、チョコレートそしてコーヒーやエナジードリンクなど、カフェインを多く含む飲み物を摂った後にそうした症状になりがちな人は、食道炎を疑った方がいいでしょう。また、辛い物や甘いお菓子を食べるとその症状が出る方も要注意です。

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逆流性食道炎の予防法と改善策、治療法は

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逆流性食道炎の予防策としては、まずは上で例に挙げたような胃酸をたくさん分泌したり、胃酸の逆流を助長させる食べ物や飲み物をできるだけ避け、あまり食べ過ぎないこと。お酒の飲みすぎで頻繁に嘔吐している人は酒量を抑えることも必要ですし、喫煙習慣がある人はタバコを控えた方がいいでしょう。

また睡眠不足などの不規則な生活習慣や、#1の記事でも触れましたが、夜遅い食事で食べた物が胃で十分消化されないうちに就寝してしまうのも逆流性食道炎を助長します。食後3時間以上空けてから寝るようにしましょう。さらには筋トレでお腹に圧をかけることで胃の内容物が逆流するケースも。運動によって内臓脂肪を減らすことは予防策としてはおすすめしますが、そうした傾向がある方はハードな腹筋運動は避けたほうがいいでしょう。

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次に逆流性食道炎と診断された場合の治療法ですが、症状が強い場合、タケプロンなどの制酸薬を処方します。まずは胃酸の分泌を抑えて症状を緩和し、そのうえで食生活や不規則な睡眠などの生活習慣を改善していくのが一般的です。あくまで胃酸は必要があって分泌されているので、あまり長期間薬に頼り続けるのはおすすめしません。

もうひとつ、食道と胃のつなぎ目にある下部食道括約筋が一度緩んでしまうと、自然には元に戻らず、胃酸や胃の中の食べ物が逆流しやすい状況が続いてしまいます。その場合、内視鏡手術でわざと下部食道括約筋に傷をつけ、傷が治癒する際に筋肉がキュッと締まる作用を促すこともあります。

もし食道がんになってしまったら……?

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現時点では食道がんよりも胃がん患者の方が多いですが、逆流性食道炎から食道腺がんに至ってしまった場合、その治療は胃がん以上に厄介であることも知っておきましょう。食道は肺や心臓と言った命に関わる臓器がそばにあり、食道の手術後に肺や心臓に合併症が引き起こされるリスクも考えられます。また胸の前部には胸骨がありますから、それをこじ開ける形で食道に手をつけるのは非常に手間がかかるんです。反対に胃がんの場合は開腹手術をして胃の悪い部分を切除しますが、そちらの方が手術としては難易度は低いのです。

最後になりますが、現状を鑑みると逆流性食道炎は、もはや高血圧や花粉症と並んで新しい国民病になりつつあると言っても決して過言ではありません。誰にでも罹患リスクのある病気であることを自覚し、先に挙げたような症状を繰り返している方は専門医の診察を仰ぎ、食生活や生活習慣を見直しましょう。

生活習慣の見直しが逆流性食道炎予防のポイントに

夜更かしや、食べ過ぎなどついつい軽く見られがちな生活習慣が思わぬ病気を招くことがわかったのではないでしょうか?
逆流性食道炎は一度なると、なかなか治りません。まずは、予防から心がけて生活していきましょう。

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近藤慎太郎(こんどう・しんたろう)先生

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東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部付属病院を経て山王メディカルセンター内視鏡室長、クリントエグゼクリニック院長などを歴任。消化器専門医として多くのがん患者を診療し、年間2000件以上の内視鏡検査・治療を手がける。著書に『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』(日経BP社)など。今年東京・渋谷に近藤しんたろうクリニックを開院。

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

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