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2022.02.19

大人も要注意。ぜんそくの診断と治療【気管支喘息#2】

kencom公式ライター:松本まや

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重い発作が続くと、最悪の場合死に至ることもあるぜんそく。今では医療の発達により、適切なコントロールを続けることで、ほとんど日常に影響を与えずに過ごすことができるようになりました。ぜんそくの診断方法から最新の治療法まで、引き続き長瀬洋之教授に詳しく教えていただきます。

ぜんそくはどのように診断する?

ぜんそくを診断する際には、問診が特に重要になります。
問診では、症状の種類やどのくらい続いているか、繰り返しているかなどの状態だけでなく、家族のアレルギーの有無やぜんそくの有無などの家族歴、ペットを飼っているかどうかなどの住環境についても詳しく聞いていきます。

あわせて血液検査を行い、アレルギー疾患を示すような物質の有無を確認します。
また、スパイロメーターという機械を使用し、一定の時間内に吐き出せる空気の量を調べる呼吸機能検査を行うこともあります。ぜんそくの場合、気道が狭くなっているため1秒間で吐き出せる空気の量が少なくなります。

胸部X線検査を行い、肺に他の疾患がないか確認する場合もあります。ぜんそくの場合、X線検査では異常が見つからないことが特徴です。

大人になってからのぜんそくの治療は「完治を目指さない」

前述の通り、小児ぜんそくは半数以上が治癒または長期間症状の出ない状態になる一方で、残念ながら成人ぜんそくは完治が難しい病気です。治療は症状を抑え、可能な限り「日常生活への影響が出ないこと」を目指して行っていきます。
そのため【1:薬物治療によって気道の状態をコントロールすること】、【2:可能な限り、気道の状態を悪化させるような環境にしないこと】の2点が重要です。

薬物治療は気道の拡張と炎症の抑制の2軸

ぜんそくの薬物治療は、気道に起きている炎症の抑制と狭くなってしまっている気道の拡張の2軸で行っていきます。炎症を抑えるためには、主に吸入ステロイドを使用し、気道を広げるために長時間作用性β2刺激薬や長時間作用性抗コリン薬などの気管支拡張薬を使用します。

発作が起きないように状態を管理するため、原則としてこれらの薬を吸入する形で毎日使用します。最近は複数の薬剤を配合し、1日に1度の吸入で治療できるようになったため、以前と比べて負担が小さくなっています。
前編で紹介した通り、ぜんそくの発作を繰り返すとリモデリングが起きやすくなります。重症化を防ぐためには薬の適切な使用を続け、症状をコントロールすることが非常に重要です。

日常的な吸入薬とは別に、発作が起きてしまった場合には狭くなった気道を広げて呼吸を楽にするため、短時間で作用する発作治療薬を使用します。

薬の副作用は?

医療が発達して薬の安全性も上がったため、気道のみに作用する吸入薬は副作用が抑えられ、長期間使用することができるようになりました。

ただし、ステロイドを経口投与している場合には、全身に作用するため、体重の増加や糖尿病、骨粗しょう症など様々な副作用に注意が必要です。

治療の選択肢を広げる最新の医療も

ぜんそく治療をする際には症状の重症度に合わせ、薬の種類や量を調整します。症状が出ない状態が続けば、薬の量を減らすことも可能です。
一方で、炎症を抑える吸入ステロイドを高用量使用しても症状の収まらない重症者の場合は、さらに治療の工夫が必要となります。

最新の治療では、生物学的製剤を取り入れるようになってきました。例えばアレルギー反応を引き起こしてぜんそくを悪化させるIgE抗体という物質の働きを抑制する効果のある、オマリズマブなど4種類の生物学的製剤の有効性が認められています。

新しい治療法のため治療費が高額になり、定期的な通院と注射も必要となりますが、重症化して生活に支障が出ているような場合には有効な治療の手段となり得ます。

その他に手術による治療法もあります。「気管支温熱療法」では気管支の中に内視鏡を入れ、気管支の内側を65度に温めることで厚くなってしまった平滑筋を薄くし、気管支が狭くなりづらい状態を目指します。症状の改善が期待できますが、治療費が高額なだけでなく、複数回の入院も必要となるため、やや負担の大きい治療法です。

第3編では、吸入薬によるコントロールと並行し、治療のポイントの2点目、悪化させないために生活習慣で気を付けるべきことについて取り上げていきます。

長瀬 洋之(ながせ・ひろゆき)先生

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帝京大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー学教授。医学博士。東京大学医学部卒業。東大病院、国立国際医療センター、日本学術振興会特別研究員等を経て現職。日本内科学会総合内科専門医・認定医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医・代議員、日本呼吸器学会専門医・代議員、日本がん治療認定医など。気管支喘息、COPD、肺癌等の呼吸器疾患全般を専門。

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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