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2022.01.21

栄養バランスばっちりの家庭料理!北海道「鮭のちゃんちゃん焼き」【ニッポン地元メシ#13】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

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日本の国土のおよそ22%をも占める、広大な土地を有する北海道。積雪期間も長く、避暑地や観光地としても名高いこの土地には、独自の歴史や文化が根付いています。

そしてそれは食文化としても数多く残っています。土地の半分が山地、そして太平洋・日本海・オホーツク海の大海原に囲まれた恵まれた環境により、季節によって様々な食材を楽しむことができます。

第13回は数ある北海道の郷土料理の中から、ご家庭でも作りやすい「鮭のちゃんちゃん焼き」を紹介します。

ちゃんちゃん焼きとは

北海道は海に囲まれていることからも新鮮な魚介が多く獲れることで有名ですが、ちゃんちゃん焼きは秋から冬にかけて獲れる鮭をメインに使った郷土料理で、漁師町の石狩町が発祥といわれています。

鮭の歴史は古く、かつてはアイヌの人々にとって貴重な食糧源でした。

サケ漁(石狩市)

サケ漁(石狩市)

ちゃんちゃん焼きは、昭和の初期に漁師の方たちが釣った鮭をドラム缶で作った鉄板を用いて焼いたというのが始まりといわれています。
「ちゃんちゃん」という可愛らしい響きの語源は、「お父ちゃんが作るから」「ちゃちゃっと手早くできるから」「焼くときにヘラが鉄板にチャンチャンとあたる音がするから」など諸説あります。いずれにしても季節の食材を使ってできるお手軽な料理だったということがうかがえます。

鮭・野菜・味噌・バターがあればすぐ作れる

出典:農林水産省・鮭のチャンチャン焼き(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sakenochanchanyaki_hokkaido.html)

出典:農林水産省・鮭のチャンチャン焼き(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/sakenochanchanyaki_hokkaido.html)

ちゃんちゃん焼きの作り方はとても簡単です。
主役の鮭は半身(フィレ)の状態で豪快に。さらにキャベツやにんじん、玉ねぎ、きのこなどの季節の野菜もたっぷり使って一緒に鉄板で焼いていきます。

味付けの特徴は「味噌」と「バター」。加えてみりんや砂糖で少し甘さをプラスします。
鉄板で焼くことでこれらの香ばしさと鮭や野菜のうま味・甘みが混ざり合い、なんとも香ばしい1品となります。

鉄板がなくともホットプレートを使ったり、アルミホイルに切った野菜、鮭、みそだれ、バターの順にのせ包み、フライパンで蒸し焼きにしたりして作るというお手軽な方法もあります。

鮭を半身の状態で手に入れるのは大変なので、ご家庭では鮭の切り身を使うと1人分から手軽に作ることができます。
最近ではその手軽さから全国に広がり、多くの方に親しまれている料理です。

鮭のちゃんちゃん焼きは栄養バランスばっちり

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鮭のちゃんちゃん焼きは、旬の鮭と季節の野菜をたっぷり使うことで、1品でバランス良く栄養を摂取できる優秀おかず。
鮭には身体の土台となるタンパク質はもちろんのこと、DHAやEPAといった良質な脂質も多く含まれます。DHAは脳機能を助ける役割、EPAはコレステロールの調整などに役立ち、近年注目され続けている成分です。

また、鮭にはビタミンDも多く含まれます。ビタミンDはカルシウム吸収アップや免疫力、精神的な健康面にも関わっている栄養素です。

長期間不足した状態が続くとすると、子供ではくる病、大人では骨軟化症や骨粗鬆症の原因とされていたり、精神的にも不安定になりやすいと言われています。

このビタミンDは、紫外線に当たることにより皮膚で合成されます。しかし冬場は日照時間が短かったり、年中日焼け対策をしっかりと行っている方、1日中UVカットガラスの建物の中で生活することが多く、太陽の光を浴びる機会がない方は特に不足しやすい状況です。
コロナ禍で外出する機会がめっきり減り、家で過ごす時間が増えたという方には意識してほしい栄養素のひとつでもあります。

ビタミンDは油と一緒に摂ることで吸収されやすいという特徴がありますので、ちゃんちゃん焼きのように良質な脂質を含む鮭や香りのよいバターと一緒に調理するというのはとてもよいでしょう。
ビタミンDは鮭以外にもきのこ類に含まれています。きのこ類を使う時は30分程度太陽の光に当てることできのこのビタミンDが増えます。

また、鮭のきれいなオレンジ色は「アスタキサンチン」という成分によるもので、抗酸化作用があります。

ちゃんちゃん焼きに使うそのほかの材料も栄養面でとても優れています。キャベツには腸内環境を整えるのに役立つ食物繊維や免疫力アップ・美容に欠かせないビタミンCが、にんじんには抗酸化作用を持つβカロテンが含まれています。
野菜はお好みのもので代用が可能ですので、彩りが豊かなパプリカやピーマン、ヘルシー食材の代表格でもあるきのこ類やもやしなどを加えてアレンジして作るのも良いでしょう。

鮭を使った郷土料理はまだまだたくさんあります!

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日本の中でも鮭の漁獲量がトップを誇る北海道には鮭を使った郷土料理がまだまだあります。

鮭やマスを凍らせ、解凍しないまま刺身でいただく「ルイベ」、鮭をはじめとした魚介をたっぷりと使った「石狩鍋」、春から夏にかけての季節外れの時期に遡上してきたシロザケ(通常は秋~冬にかけてくるため、「時知らず」といいます)を使った「トキ鮭の焼漬け」、塩漬けにした鮭やニシンを野菜と一緒に煮た汁物「三平汁」など、様々な調理法で郷土料理として残っています。

鮭はスーパーでも手に取りやすい食材で、老若男女問わずに人気のある魚ですので、皆さんもぜひ鮭を使った北海道の郷土料理を楽しんでみてくださいね!

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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