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2021.12.27

高齢者の1人暮らし。サポートできる人の有無で生命予後が変わる?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生  

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少子高齢化や核家族化などの暮らしの変化により、1人暮らしの高齢者は増えています。親戚や友人など、身近にサポートしてくれる人がいるかどうかで、健康に与える影響が変わってくるのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Internal Medicine誌に、2021年11月15日ウェブ掲載された、独居の高齢者の予後に与える、親戚や友人のサポートの効果についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

1人暮らしの高齢者もさまざま

独居の高齢者が増加していることは、日本のみならず世界的にも高齢化が進行する社会の、大きな公衆衛生上の問題です。

1人暮らしの高齢者は1人暮らしではない場合と比較して、心血管疾患の予後が悪く、うつ状態を来しやすく、トータルな生命予後も悪いことが報告されています。

ただ、1人暮らしの高齢者といっても、その実際の生活は様々で、本当に身よりも友人もいない孤独な高齢者から、何かあれば助けてくれるような友人も多く、近くに親族も生活しているような、自分の意思で1人暮らしをしているだけ、というような人もいます。

それを一律に「独居の高齢者」として解析することは、正確な知見に至らないのではないでしょうか?

サポートしてくれる人の有無が健康へも影響する?

そこで今回の研究ではアメリカにおいて、65歳以上の1人暮らしの高齢者で、登録の時点でADLの自立している4772名を、何かあった時にサポートしてくれる友人や親族がいるかどうかで分類し、平均で4.9年の経過観察を施行。その予後を比較検証しています。

このうちの38%に当たる1813名が、サポートしてくれる友人や親族はいないと、アンケートで回答していました。そして観察期間中に、そのうちの63%に当たる3013名が、入院や癌の診断、脳卒中や心臓の発作を来していました。

ここで、観察期間2年の時点で老人ホーム(ナーシングホーム)に入所しているリスクは、友人や親族のサポートがない場合が6.7%であった一方、サポートのある場合は5.2%で、社会的サポートは老人ホーム入所のリスクを、有意に低下させていました。

入院やがんの診断、脳卒中や心臓発作を来した場合、2年を超える期間での老人ホーム入所のリスクは、友人や親族のサポートのない場合が14.2%であった一方で、サポートのある場合は10.9%で、社会的サポートは2年を超える期間での老人ホーム入所のリスクも、有意に低下させていました。

しかし、入院などの健康問題が生じていない場合には2年を超える期間での老人ホーム入所のリスクには差は認められませんでした。また、死亡のリスクやADL低下のリスクには、社会的サポートのあるなしとの有意な関連は認められませんでした。

頼れる友人や親族がいれば、予後改善にも影響が

このように、頼れる友人や親族のいることは、独居の高齢者の予後改善に、一定の影響を与えることは間違いがなさそうです。ただ、その影響は限定的なもので、今後独居高齢者への有効な対策を考える上では、より詳細な検証が必要と考えられます。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36