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2021.08.20

呼子のイカはなぜ透明?一度は食べたい佐賀県「イカの活き造り」【ニッポン地元メシ#2】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

全国47都道府県の、美味しくて身体に良い郷土料理を紹介する本企画。

第2回は、唐津焼、有田焼(伊万里焼)など、歴史ある焼き物の生産地である佐賀県です。

海・山・甘味に恵まれた地

長崎県と福岡県に挟まれた佐賀県。江戸時代唯一の貿易拠点であった出島から小倉を結ぶ長崎街道の中間に位置していたこともあり、この一帯は海外から砂糖や菓子づくりの技法が多く伝わりました。そのため、カステラ(長崎県)やマルボーロ(佐賀県)など、長崎街道一帯には砂糖がふんだんに使われた銘菓が数多くあります。

また、佐賀県の名所といえば「浜野浦の棚田」です。佐賀県の北部に面する玄界灘の海岸から階段のように連なるこの棚田は、戦国・江戸時代から延々と受け継がれてきたもので、「日本棚田百選」にも認定されているほど。

玄界灘では、新鮮な海の幸が豊富にとれます。中でも朝市で有名な呼子のイカは格別。今回はそんな呼子のイカの魅力に迫ります。

呼子のイカは何がちがう?

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イカの刺身やイカを使った料理は特に珍しいものではありませんが、呼子のイカは見た目から別物。

イカの刺身と言うと白くて艶のあるものをイメージされる方が多いと思います。しかし、呼子のイカの刺身は白ではなく、「透明」なのです。その透明度は皿に盛られると、イカを通して皿の色が透けて見えるほど。

その理由は鮮度の良さです。海から揚がっていけすで生かしておいたものを、提供する直前に捌く「活き造り」にすることで、イカが透明なまま私たちのもとへやってくるのです。
また、ここのイカ刺しの多くは目やげそも一緒に盛られるため、イカを丸ごと味わうことができます。お店によってはイカのげそを自分でカットして食べられるところもあるようです。

イカの活き造りの発祥は諸説ありますが、いけす料理屋「河太郎」の初代が呼子で漁師をしている友人の船に乗り、玄界灘でとれた釣りたてのイカを捌いて食した際に、その見た目と味に感動。これをより多くの方に届けたいという思いから、日本で初めて店内にいけすを設置した料理店を始めたことがきっかけとされています。

透明なイカを保てる理由は?

佐賀県と福岡県にまたがる玄界灘は、対馬海流と黒潮が入り交じる場所であるため、美味しい魚介が多く水揚げされることで有名です。

この美味しいイカが、お店でも海から水揚げされた時と変わらぬ鮮度を保てる秘密は、店に備え付けてある「いけす」です。
このいけすで水質や温度管理などを徹底することで、イカの鮮度が落ちにくい上に、イカ自体も大きなストレスを感じることなく、調理される直前まで生きた状態を保つことができるのです。

高タンパク低脂質!イカの栄養

あっさりと淡白な中にも甘みとうま味を感じられるイカには、どのような栄養素が含まれているのでしょう。

ケンサキイカのおよそ80%が水分でできています。可食部100gあたりのエネルギーは77kcal、タンパク質は17.5g、脂質は1.0gとエネルギーはあまり高くないものの、高タンパク低脂肪な食材であることがわかります。
タンパク質は筋肉だけでなく、骨や髪の毛、爪、肌など身体の土台に必要となる大切な栄養素です。

また、むくみ予防に役立つといわれる「カリウム」が330mgと豊富に含まれます。カリウムは野菜や果物に多く含まれることで有名ですが、実は魚介類にも多く含まれています。バナナ100gに含まれるカリウムは360mgなので、イカも引けを取らない量であることがわかります。

心のケアに役立つと最近話題になっているビタミンB群のひとつ、ナイアシンも含まれます。
そして、イカに含まれるアミノ酸の一種・タウリンには肝臓の機能を助ける働きもあります。肝臓=アルコール代謝のイメージが有名ですが、そのほかにもコレステロールの代謝や解毒作用など健康な体作りには欠かせない、まさに「肝(キモ)」となる臓器です。

おうち時間が増えてトレーニングを始めた方、美容に力を入れ始めた方、筋力を落とさないためにタンパク質をとりたいけれど肉はたくさん食べられないと悩んでいる方、むくみが気になる方にもおすすめです。

季節によって違うイカを楽しんで

ひとくちにイカといっても、季節によってさまざまなイカが味わえます。

呼子では、夏と冬で大きく2種類に分けられます。夏場(春~秋)はケンサキイカ。冬場はアオリイカです。
ケンサキイカはイカの中でも特に甘味と旨味が濃厚で人気のイカです。
アオリイカはケンサキイカと比べると見た目が丸みを帯びています。身が厚く甘みがあり、食べ応えもあるのが特徴的なイカです。

呼子では1年中おいしいイカの活き造りが食べられますが、刺身以外にも人気なのが、イカのすり身を使って作られる「いかしゅうまい」。通常のしゅうまいは豚肉を使うのに対して、いかしゅうまいは低脂肪のいかを使うことであっさりとした味わいが特徴。柔らかく旨味も凝縮されているため、肉の脂身が苦手な方にもおすすめです。
お土産としても人気で、小さなお子様からお年寄りの方まで幅広い層で楽しめます。

豊かな自然の恵みの中で育った鮮度抜群の呼子のイカの活き造り。
自宅で食べることは難しいですが、佐賀県を訪れる機会があったら、イカの活き造りを試してみてはいかがでしょうか。

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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