メニュー

2021.01.23

感染症の専門家が伝授 冬がピークのノロウイルスから家族を守る予防法と対処法【冬の食中毒・後編】

kencom公式ライター:森下千佳

記事画像

冬に一番のピークを迎える、ノロウイルス感染症。今年は、コロナウイルスの感染拡大もあるので、あらゆるウイルスへの感染対策をより抜かりなく、徹底していきたいものです。
家族が感染した時に、家庭内感染が広がらないための対処法と、予防法を詳しくお伝えします。お話を伺ったのは感染症の専門家・順天堂大学大学院の堀賢教授です。

正しい対処法を知ることが予防の第一歩

家族が感染した時の正しい対処法

ノロウイルスは一回のおう吐物中に60億〜70億個も含まれており、しかもその中のわずか数個が体内に入っただけで感染するほど強力な感染力を持っています。
家族が感染した場合は特に、感染対策を十分に行わないと容易に家庭内感染しますので、対処法をしっかりと学んでおきましょう。

正しい汚物の処理方法

記事画像

汚物の処理をする場合は、まず、使い捨てのマスク、手袋、エプロン、ヘアキャップ(使い捨てがない場合は、のちほど洗濯する)などの防護具を身につけ、吐いたものに直接触れたり、飛散したノロウイルスを吸わないように準備をします。
次に人を遠ざけ、部屋の換気を十分にします。床などが汚れた場合は、まず、新聞紙やペーパータオルなどで汚れを覆い、染み込ませて汚れを拭き取ります。
取りきれないものは、さらにペーパータオルか雑巾で綺麗にします。その上で、塩素系の消毒薬を吹きかけ、消毒をしていきます。アルコール消毒剤はノロウイルスには効果がないので注意してください。

次に、トイレや蛇口、ドアノブなど、感染した人が触ったものは、全て塩素系消毒薬とペーパータオルで拭きます。ウイルスは広く飛散し、高く舞い上がるため、広範囲の壁や床の消毒も必要です。

掃除や消毒が終わったら、手袋やマスク、掃除に使ったペーパータオルなどはポリ袋に入れたうえで消毒薬をゴミ全体にかかるように注ぎ、密封して燃えるゴミに出します。
衣服やタオルなどが汚れた場合は、まず洗剤で手洗いし、薄めた消毒薬に数十分つけて消毒します。その後洗濯機で洗いますが、ほかのものと一緒に洗わないようにしてください。

最後に、手洗いとうがいをしっかりと行いましょう。

トイレの使い方にも工夫を

トイレは感染拡大の原因となりやすい場所で、ウイルスにまみれていると認識しましょう。
ノロウイルス対策として、トイレの便座、レバー、ふた、ペーパーホルダー、ドアノブなど、「人の手が触れるあらゆる場所」の消毒が必要です。
また、ウイルスを飛び散らせないように、必ずフタをしてから流すこと。

それでも、トイレには必ずウイルスがいると考えて、使用後は石鹸と流水でしっかり手を洗うことが大切です。手を拭くときは、タオルではなくペーパータオルを使用しましょう。

お風呂に入る際の注意点

次にお風呂ですが、感染した人は最後に入ることが大事です。
ノロウイルスは、湯船の温度では死滅しません。入浴後は、中性洗剤で浴槽と、壁面、ドアノブなど全てを洗い流し、その上から塩素系漂白剤などを使って消毒をします。
大変ですがここまでやれば安全です。

大掃除をする良い機会だと捉えて、ウイルスから家族を守りましょう。
タオルは共有しないようにし、感染した方の衣類とタオルは消毒してから洗濯機で洗いましょう。

食事は別室が基本

ノロウイルスは飛沫感染を起こすので、別室で食事をとるのが理想的です。感染者が使った食器類は、ウイルスが付いていると考え、中性洗剤で洗った後にしっかりと塩素系漂白剤で消毒をします。

食事は、水分の多い「おかゆ」などがオススメです。固形物は刺激になりおう吐してしまうこともあるので、水分補給になり胃に優しい食事を心がけましょう。
水分補給さえしっかり出来ていれば、無理に食べる必要はありません。

家庭でできる食中毒予防3つのポイント!

食中毒対策の基本は、①持ち込まない! ②つけない! ③やっつける!の3つです。それぞれにすべきことを見ていきましょう。

①持ち込まない!

ノロウイルスの感染を防ぐ基本は、「石鹸と流水によるこまめな手洗い」です。
家の中に持ち込まないためには、最低でも、帰宅した後、トイレやオムツ交換の後、調理や食事の前には念入りに手洗いをしてください。

手洗いの後、さらにアルコール消毒などをする必要はありません。
石鹸で皮脂が取れている上にアルコールを添付すると、皮膚が乾燥し、亀裂の間からばい菌が入りやすくなってしまうからです。クリームなどを使って手のスキンケアをしておくことも感染予防に繋がるのでおすすめです。

最近はデリバリーの食事を利用する方も増えていますが、基本的には袋を開けていなければ安全だと考えて良いでしょう。ただし、外側の袋にはウイルスが付いている可能性がありますから、中身を取り出したらすぐに袋を処分し、食べる前にしっかりと手を洗うことが大切です。

②つけない!

無症状で感染していることもあるので、調理する前にはしっかりと手洗いとマスクの着用をしましょう。また、サラダなどの加熱しない食品や調理済みの食品などは、調理する場所から離して食品同士を接触させないようにすること。

まな板と包丁は、野菜と肉・魚介類で使い分けてください。特に二枚貝の調理には注意が必要です。調理の際にまな板などがノロウイルスに汚染される恐れがあるので、ほかの食材とは全ての調理器具を別にして、最後に調理します。
使い分けができない場合は、野菜を先に切りますが、もしお肉や魚介類のあとに野菜を切る場合は、しっかりまな板を洗って、消毒してから使ってください。

③やっつける!

ノロウイルスは、80度以上で1分間以上加熱すると死滅します。冬の間は火をしっかり通したものを食べるようにし、サラダや刺身、サンドイッチ、カットフルーツなど、生で食べるものはなるべく避けることが賢明です。特に乳幼児や高齢者がいるご家庭は、感染する危険性を考慮して加熱調理することを心がけましょう。

調理後は調理器具を熱湯などで消毒し、しっかり手洗いをしてください。ご家庭に食洗機があれば、調理器具や食器類を食洗機にかけるだけで、高温殺菌されますから手軽でオススメです。

3つのポイントでノロウイルスを撃退!元気に冬を乗り切りましょう!

新型コロナウイルスの感染防止対策でも石鹸による手洗いの大切さが呼びかけられていますが、実は、食中毒の場合も「手洗い」は大切な予防対策の一つです。
「持ち込まない」ために、手を洗う。「つけない」調理を心がける。「やっつける」ためにしっかりと火を通して殺菌をする。
この3つのポイントを心がけ、コロナ対策と共に食中毒対策をして、元気に冬を乗り切りましょう!

堀 賢(ほり・さとし)先生

記事画像

順天堂大学大学院 医学研究科 感染制御科学 教授
1991年順天堂大学卒業、1995年同大学大学院修了(学位授与)、1999年から英国ノッティンガム大学微生物・感染症学リサーチフェロー、2001年ロンドン大学衛生熱帯医学大学院修了。2004年順天堂大学大学院感染制御科学講師を経て、2013年より現職。英国感染制御専門資格、ICD制度協議会認定感染制御ドクター。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。