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2019.03.20

「朝食抜きは太る」というウワサ、本当?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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朝食抜きという生活をしていると太る…というウワサ、よく耳にしますよね。今回はこのウワサの真偽に迫ります。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

▼石原先生のブログはこちら

朝食を抜くと本当に太るのか?

「朝食を抜くと太る」というのは、比較的良く聞く食生活の常識的意見です。
そのために、1日3食をしっかり摂るという食生活が推奨されます。
しかし、そこにはどれほどの科学的根拠があるのでしょうか?

こちらをご覧下さい。

これはその問題についての代表的な知見の1つで、2013年のPublic Health Nutrition誌に掲載されたものです。(※1)
スウェーデンにおける16歳の年齢から27年という、長期間の疫学データを活用して、16歳時の朝食抜きの食生活が、43歳時の肥満やメタボリックシンドロームと、どのような関連があるのかを検証したものです。

その結果、朝食を食べないことは、中年期のメタボリックシンドロームのリスクを、1.68倍(95%CI: 1.01から2.78)、中心性肥満のリスクを1.71倍(95%CI: 1.00から2.92)、空腹時血糖のリスクを1.75倍(95%CI: 1.01から3.02)、それぞれ相関は弱いものの有意に増加していました。

このように、朝食抜きの食生活は、肥満やメタボの誘因になるというデータはあるのですが、時間がかなり経ってから影響する、というようなやや回りくどいもので、差が付いていると言っても、かなり微妙な差というレベルです。

朝食の有無と体重の関係を検証したデータでは

朝食を摂る人は、摂取カロリー増加により体重増加していた

今回の研究では、これまでに報告された臨床データをまとめて解析する、システマティック・レビューとメタ解析という手法を用いて、この問題の検証を行なっています。(※2)

所得の高い地域で行われた、これまでの13の介入試験をまとめて解析した結果として、朝食を摂らない生活をする人は、きちんと摂る人と比較して、やや体重の多い傾向はあるものの明確ではなく、朝食を撮るかどうかで比較した試験では、朝食を撮ることによりトータルな摂取カロリーは増加し、それは体重減少よりむしろ体重増加に結び付いていました。

朝食を抜くと太るのは科学的な事実ではない

このように、朝食を撮る習慣自体は健康的なものですが、朝食を撮らない人に摂るような指導を行うことは、体重減少には逆効果である可能性が高いようです。

朝食を抜くと太る人もいるとは思いますが、「朝食を抜くと太る」というのは、科学的な事実とは言えないようなのです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36