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2022.08.18

日本でも報告「サル痘」とは一体どのような病気なのか【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナの第7波もまだまだ収まらない最中ですが、今度はサル痘が身近に迫ってきたようです。サル痘とは一体どのような病気なのでしょうか。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2022年7月21日ウェブ掲載された、日本でも患者が報告された「サル痘」の、500例以上の世界の事例をまとめた論文です。

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感染拡大中のサル痘とはどんな病気?

サル痘はポックスウイルス科のDNAウイルスである、サル痘ウイルスによる感染症で、サルやウサギ、リスなどのウイルスを保有する動物との接触により、人間に感染すると考えられています。

その人間への感染は1970年にアフリカのコンゴで初めて確認されました。その後、アフリカでの散発的な流行はあったのですが、その地域に留まったもので推移していました。

撲滅された天然痘と類似性があり、その免疫に一定の有効性があると考えられています。

それが、2022年5月以降に西ヨーロッパ全域、北米のカナダ、アメリカ、南アメリカ、オーストラリアで、人間から人間への感染が急速に拡大。WHOが非常事態宣言をするまでに至りました。日本でも感染事例が確認されたという報道もありました。

サル痘の事例の特長は

今回の論文では、5大陸16か国で診断された、トータル528のサル痘確定診断事例をまとめています。

事例の98%はゲイかバイセクシャルの男性で、75%が白人種、41%はHIVの感染者です。年齢の中間値は38歳です。事例の95%では水疱瘡のような、水疱性の湿疹があり、73%は肛門及び性器に病変を持ち、41%では口腔などの粘膜に病変があります。

黒人男性の事例ですが、性交渉でおそらく感染が成立してから、4日後に性器周辺に水疱性の湿疹が出現。梅毒が疑われペニシリンが投与されるも改善せず。湿疹は複数に増加し、びらんとなり、その部位から採取した検体の遺伝子検査により、サル痘と診断がなされています。

湿疹に引き続いて、発熱や関節痛、頭痛、全身のリンパ節腫脹などが認められます。発熱は62%の事例で報告されています。29%は他の性行為感染症を併発していました。

感染機会が確認される23事例において、潜伏期の中間値は7日で、95%は3から20日に分布しています。精液の遺伝子検査を施行した32例中29例において、サル痘遺伝子が検出されています。入院は主に疼痛などの症状によるもので、今回の事例中に死亡事例はありません。

HIV感染症と似た性質が

このように、症状は違いますが感染形態としては、サル痘はHIV感染症とかなり似通った性質があり、特定はまだされていませんが、性交渉により感染する可能性が高いようです。

特に性器や肛門周辺に初発する水疱病変については、先入観を持つことなく、この病気の可能性も常に想定する必要がありそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36