メニュー

2022.02.25

“QOLを高める食事”ってなんだろう。生きがいを感じられる食との向き合い方

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

記事画像

「QOL」という言葉をご存じでしょうか。Quality of Life(クオリティ オブ ライフ)の略称で「生活の質」「生命の質」などと訳されます。

医療の分野でいわれることが多い言葉ですが、昨今ではそこに留まることなく、広く使われるようになりました。
「活力があるか」「生きがいを感じているか」「日々の生活に満足しているか」といったことが判断の指標となることが多く、総合的にみて“精神的にも生きがいなどを感じられているか”が大切とされているようです。

食生活についても例外ではありません。そこで今回は、「QOLを高める食事」についてお伝えしたいと思います。

「QOLを高める」とは何か

「QOLを高める」とは何でしょうか。先述したように“精神的にも生きがいなどを感じられているか”が指標となっているとすれば、何を得ればQOLが上がるのかは最終的には人それぞれ、ということになってしまいます。

しかし、一般的には“健康な状態で、自分の生活を楽しむこと”が条件となってくるのではないでしょうか。だとすれば、健康的かつ精神的にも満足できる食事がそうであると言えるでしょう。

精神的に満足できる食事とは

続いて「食べる」とはそもそも何でしょうか。空腹を満たす、生命に必要な栄養素を体内に取り込む、といった物理的なことが注目されがちですが、そこにとどまらないことは誰しも感じているのではないでしょうか。

普段は栄養素について紹介していますが、本記事では精神的に満足できる食事について考えていきましょう。

「おいしさ」とは何か

「おいしさ」は、調理学上でいうと、まず食べ物の状態(客体)と食べる側の状態(主体)に分けられます。
食べ物の状態には、味(味覚)、香り(嗅覚)、温度・テクスチャー(触覚)、外観(視覚)、音(聴覚)の五感から得られるものに分類されます。

食べる側の状態では、心理的要因(喜怒哀楽、緊張等)、生理的要因(空腹感、健康状態)、先天的要因(人種、体質、年齢)、後天的要因(気候、風土、文化、宗教)、環境的要因(季節、時間、明暗、テーブルセッティング)とその要因は様々で、沢山の条件が絡み合って形成されていることが分かります。

その中でも視覚、味覚、触覚と心理的要因からほんの一部をご紹介します。

目で見て楽しむ

「おいしさ」の中でよく言われるのが“見た目”です。綺麗な料理を見て心が踊るような感覚をもつ方は多いのではないでしょうか。

視覚は、五感の中でも特に情報が大きいと言われています。かといって懐石料理やフランス料理のような盛り付けは難しいですよね。
しかし難しく考えなくても大丈夫です。例えば、いつもは一皿に無造作に盛り付けている食事を、お気に入りの小鉢や皿に分けて盛り付けるだけでも見た目はぐっと変わるものです。

色で言えば、赤や黄色、緑が入るとそれだけでも華やかになります。ミニトマトやブロッコリー、レタスを付け合わせで添えてみたり、ゆで玉子を半分に切って盛り付けるだけでも違います。また、これらは栄養素的にもプラスになるものばかりなので是非取り入れて欲しいと思います。

色々な味つけを試してみる

見た目はもちろんですが、食べて美味しいと感じると気持ちが上がるものです。

いつもの定番の味つけはホッと安心しますが、マンネリ化してしまうことも。しかし、食べたことのないような味つけに挑戦するのはハードルが高く、外食のような味つけは塩分や脂質が高い傾向にあるので積極的におすすめはできません。

そこで無理なく変化をつけるのにおすすめの方法は“いつもの味つけにプラスαをする”こと。プラスαするなら、シソやにんにく、生姜やみょうが、カレー粉などの香りが特徴的なものがおすすめです。
これらはベースとなる味つけを変えなくても変化がつけやすいのですぐに試せますし、また香りのある物を加えると減塩効果も期待できるという嬉しいポイント付きです。

あたたかいものはあたたかく

料理は「温度」によっても美味しさの感じ方に違いがでるものです。

その温度は個人差や夏と冬などの環境等によって異なりますが、焼いたお肉や魚など、いわゆる「主菜」となるものはあたたかい方が美味しく感じられる傾向にあります。その反対にサラダなどは冷たい方が美味しいと感じる傾向に。

料理によってあたたかいものはあたたかく、冷たいものは冷たいうちに食べる方が良いでしょう。難しく考えず、料理を作る際は冷たくして食べたいものを最初に作り冷蔵庫に入れておき、あたたかく食べたいものは最後に料理をすればよいだけです。

あたたかいものは美味しそうな香りがでるのも特徴で、嗅覚から食欲を促してくれる効果もあります。

人と一緒に食べる

視覚や味覚以外でも、親しい人と一緒に食べることも精神的な満足につながります。

家族をはじめ、友人や親戚など、誰かと一緒に食事することを「共食(きょうしょく)」と言います。これにはどのような効果があるのでしょうか。

共食の回数が多い人や孤食が少ない人は、そうでない人に比べて心の健康状態が良いことや、ストレスがなかったり、自分が健康だと感じている人の割合が高いという報告があります。

共食には精神的に良い影響を与えることはもちろん、健康で規則正しい食生活や、生活リズムに関係しているともいわれています。

高齢者については、ひとり暮らしでも誰かと一緒に食事をする頻度の高い高齢者ほど、色々な食品を食べていることが報告されています。「共食」することは心身の健康に大きく影響するのです。

ひとり暮らしだと誰かと一緒に食事をする機会はなかなかないかもしれませんが、地域の活動に参加する、友人と積極的に食事の機会を持つ、といった工夫は大切なことだと言えるでしょう。

「食事のQOLを高める」ことで、はつらつと元気に

「QOLを高める食事」というのは抽象的ですが、精神的に満足できる食事が、健康感、満足感や充足感をもたらし、食事を介して人や社会とのつながり等とも深く関係していると言えます。しいては生活全体のQOLを高めることにつながる、とも言えるのではないでしょうか。

食事に対する楽しみの割合が増える傾向のシニア層には、精神的に満足する食事は特に大切といえるでしょう。

日常の食生活を楽しむ工夫は、活動的な日常を送ることや生きがい、活動的な高齢期(アクティブエイジング)を過ごすことにも繋がります。はつらつと健康に過ごすためにも、食事の持つ「精神的な効果」について考えるのも良いのではないでしょうか。

▼過去の記事もあわせてチェック!

前田 量子(まえだ・りょうこ)

記事画像

管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた「ロジカル電子レンジ調理」が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

この記事に関連するキーワード