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2022.02.18

おうちで真似したい!あったか具だくさんの香川県「しっぽくうどん」【ニッポン地元メシ#15】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

香川県は四国地方で瀬戸内海に面し、47都道府県では一番面積の小さな県です。
「うどん県」で有名ですが、オリーブで有名な小豆島、アートに溢れた直島などの島旅も特徴的で、観光でも人気の県です。

今回は、うどん県が誇る郷土料理のひとつ、「しっぽくうどん」を紹介します。

あったかくて具だくさん!「しっぽくうどん」

提供:(公社)香川県観光協会

提供:(公社)香川県観光協会

普段の食事でも食べることが多いうどん。温かくしても冷たくしてもよし、さらには肉、天麩羅、油揚げなど様々な具材との相性もよく老若男女問わず人気の料理のひとつです。

うどんの有名な地域の筆頭である香川県では、年末の年越しそばの代わりに食べられることもあります。
しっぽくうどんとはそんな香川県の郷土料理のひとつで、秋から冬にかけてとれる野菜や油揚げを使った寒い季節に食べられる温かい具沢山のうどんです。

長崎の卓袱(しっぽく)料理が由来という説も

写真提供:(一社)長崎県観光連盟

写真提供:(一社)長崎県観光連盟

「しっぽく」という言葉からは長崎の「卓袱(しっぽく)料理」を思い浮かべる方も多いかと思います。
卓袱料理は本連載でも紹介しているので、気になる方は読んでみてくださいね。

「卓」は円卓(テーブル)を指し、「袱」は布を指す言葉で、卓袱というのはテーブルクロスという意味となります。そこから派生して大皿料理を指す言葉として使われます。
香川県の「しっぽく」の由来には諸説あるといわれていますが、その一つが長崎県の卓袱料理の特徴である大皿に盛られた麵料理からヒントを得たというものです。

しっぽくうどんを家庭で再現!

しっぽくうどんには香川県の名産がたっぷりと詰まっています。

まずはうどん。
香川県は瀬戸内の温暖な気候に加え、雨量が少ない地域ということで、うどんの原料でもある小麦の栽培に適していました。そのためこの土地ではうどん作りが盛んになったと言われています。
香川県のうどんは「讃岐うどん」と呼ばれており、表面はつるりとしていて、噛むと弾力とコシをしっかりと感じられるのが特徴です。

次に出汁。
通常はかつおだしや昆布だしなどが定番ですが、しっぽくうどんの基本は「いりこだし」です。(家庭によって昆布やカツオを使うところもあります)
いりこ(煮干し)はカタクチイワシを乾燥させたものです。伊吹島を中心とした瀬戸内海の島々ではカタクチイワシが豊富に獲れることから、いりこも名産となっています。

そして味付けに欠かせない醤油。
香川県、特に小豆島では味噌や醤油といった発酵食品が作られています。これは原料のひとつである塩づくりが盛んだったことも理由のひとつとされています。

作り方はとてもシンプルです。

油揚げや豆腐と季節の野菜をいりこだしで煮て醤油やみりんで味付けをし、茹でたうどんの上から具と汁を一緒にかけて盛り付けます。
しっぽくうどんに使う具材は秋冬に旬を迎える大根、にんじん、里芋、ねぎなどが主となりますが、家庭によって使う野菜はまちまちです。
家庭によっては鶏肉やきのこ類を加えることもあります。

具材は自由なのでその時冷蔵庫に残っている旬の野菜や食材を使えるのが嬉しいところですね。
大根やにんじんは大きさをそろえておくことで火の通りも均一で食べやすくなります。

県内では多くのうどん屋さんがありますが、しっぽくうどんは寒い時期の季節限メニューとして提供されているところも多いそうです。

しっぽくうどんは一皿で栄養バランスよし!

小麦粉で作られるうどんは、スタミナ源として欠かせない炭水化物です。
さらに油揚げや豆腐でタンパク質を摂ることができます。食べ盛りのお子さんがいらっしゃるご家庭なら、鶏肉などの動物性タンパク質をプラスすることでボリュームアップも叶います。

冬野菜のにんじんはβカロテンが豊富で、強力な抗酸化作用があります。そのほかにもお好みでチヂミホウレンソウや小松菜などを使うと、栄養はもちろん色味も鮮やかに仕上がります。

出汁に使ういりこからはうま味成分、アミノ酸を摂ることができます。
だしを取った後のいりこは甘辛く煮て佃煮のようにすることで無駄なくいただけます。骨ごと食べられるため、カルシウムの補給にも役立ちますし、何よりフードロス削減にもつながりますね。

麺類は栄養が偏ってしまい、特に野菜が摂れないと思われがちですが、そこをクリアできるのがしっぽくうどんです。

讃岐うどんの特徴である「コシ」はよく噛むことにもつながります。
よく噛むことは唾液をしっかりと出して糖質の消化を助けるだけでなく、小さくかみ砕くことでその後の胃への負担も軽くなります。

最近は柔らかいものやとろけるような滑らかな食感のものも多く、またマスク生活で口元の筋肉を使う機会が減りつつあります。
口回りの筋肉を使うとともに栄養の消化吸収もスムーズにするためにも「よく噛むこと」を習慣づけたいところです。

香川県の小麦を使った料理

小麦の生産が盛んな香川県には、しっぽくうどんのほかにもたくさんの小麦を使った麺料理があります。

年明けに食べる「年明けうどん」は、長寿を祈る縁起物として親しまれている太くて長いうどん。小麦と水だけでさっとこねて打ったうどんを煮込んで作る「打ち込みうどん」、小豆島の特産であるそうめんと茄子を合わせた「茄子そうめん」、婚礼の際に作られる伝統料理「鯛そうめん」など。

いろんな食べ方でうどんを楽しんでいる香川県の郷土料理。ご家庭でも参考にして、具材を変えて季節によって様々な麺料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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