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2021.11.05

具だくさんで栄養豊富!サラサラ食べられる鹿児島県「鶏飯」【ニッポン地元メシ#8】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

鹿児島県といえば、日本で初めて指定された国立公園のひとつ「霧島錦江湾国立公園」があります。

公園北部の霧島には大小20以上の火山が連なっていて、火山活動に伴って誕生した火口湖、温泉や高原などとともに手つかずの自然が多く残されています。また宮崎県の回でもご紹介したように、霧島地域の高千穂峰は天孫が三種の神器をたずさえ降臨した地とされる霊峰。天孫降臨神話が宿る神秘の山々としても知られています。

九州ラストの第8回は、そんな活発な火山の残る鹿児島県です。

世界遺産、温泉、焼酎。見どころ満載な鹿児島県

写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟

写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟

霧島や桜島など、鹿児島県には活火山が11あり、これは全国の活火山の1割を占めるほど。
そんな火山の影響もあり鹿児島県には温泉も多く、中でも砂蒸し温泉は有名ですね。

さらに鹿児島県は世界遺産としても有名な屋久島、宇宙センターのある種子島、奄美群島など、日本一離島の数が多い県なのです。

雄大な自然に囲まれた鹿児島県はグルメも豊富!さつま芋、さつま揚げ、黒豚、白くま(フルーツと練乳が乗ったかき氷)、きびなごやかんぱちなどの魚介類、本格焼酎など。数あるグルメの中からご紹介するのは地元給食の人気メニュー「鶏飯」です。

「鶏飯」と「とりめし」は別物!

写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟

写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟

皆さんは「鶏飯」を何と読むかご存じでしょうか。
知らない方だと「とりめし?」と思われるかもしれませんが、これは「けいはん」と読みます。

鶏飯は鶏肉とお米を使った奄美地域を代表する郷土料理のひとつです。
江戸時代に鹿児島本土から奄美群島にやってくる役人たちをもてなすために作られたのが始まりだといわれています。これとは別に、威圧的な態度を少しでも和らげるために、贅を尽くした料理を作ったという説もあります。

当時の奄美群島の人々は自宅で鶏を飼っていることも多かったようですが、大切に飼っていた鶏を絞めて食卓に出すことはとても貴重なことでした。そのため、鶏肉はもちろん、そのほかにも数多くの食材を使って作る鶏飯でおもてなしをするということは、極めて贅沢なことであったと考えられます。

このような歴史を経て、今では多くの人に親しまれるようになった鶏飯は、2007年に農林水産省が選定した「農山漁村の郷土料理百選」のひとつとして選ばれました。

自宅でも作れる!鶏飯の作り方

鶏飯に欠かせないのが「鶏肉」。
部位はささ身が使われることが多く、鶏ガラや生姜、ネギと一緒に茹でて、手で裂いた状態で使います。ご家庭によってはささ身ではなく胸肉を使ったり、茹でるのではなく蒸して裂くなど作り方は多少変わります。

茹で汁には鶏のうま味がたっぷりと溶け込んでいるので、汁物など別の料理に使うのが良いでしょう。

干ししいたけは水で戻し、戻し汁、醤油、みりんで甘辛く煮て細切りにします。そのほかにはパパイヤの味噌漬けや、錦糸卵、ねぎ、みかんの皮、焼き海苔などが主な具材として使われます。

ごはんの上にこれらの具材を色よく盛り付け、鶏ガラのスープを濾したものをかけていただきます。スープをたっぷりかければ、お茶漬けのようにサラサラと食べ進めることができます。

パパイヤの漬物は市販では手に入りにくいので、ほかの漬物で代用も可能です。鶏ガラからスープを取るのが難しい場合は、鶏ガラスープの素を使うと自宅でも手軽に挑戦できますね。

鶏飯はヘルシーな健康食

写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟

写真協力:公益社団法人 鹿児島県観光連盟

鶏飯のメインとなる鶏肉、中でもささ身や胸肉は高タンパク・低脂肪な部位です。

タンパク質は私たちの身体の土台となる大切な栄養素。筋肉はもちろんですが、骨の土台、健康な爪や髪の毛、お肌に至るまで健康を維持するためには必須です。

卵はタンパク質以外にも粘膜の潤いや目の健康に欠かせないビタミンA、免疫力アップやカルシウムの吸収に欠かせないビタミンD、若返りのビタミンともいわれるほどの抗酸化作用を持つビタミンEなどを含みます。`

食物繊維も豊富。具材たっぷりで栄養UP

丼ものはなかなか食物繊維を取るのが難しいのですが、鶏飯は食物繊維やビタミンDが含まれる干し椎茸を筆頭に、海苔、パパイヤ、ネギなど食物繊維を多く含む野菜を一緒に摂ることができます。

また、鶏飯はうま味や栄養素が溶け込んだスープも余すことなくいただくため、水に溶けやすい栄養素も無駄なく取り入れることができます。
食べ過ぎた翌日や胃腸の調子がよくない時でも、鶏の栄養やうま味がたっぷりと溶け出たチキンスープと柔らかいご飯であれば食べやすいですね。

ちょうど今の時期は新米も多く出回り、お米がおいしい季節ですので、ご自宅で楽しむ良い機会かもしれません。
最近は鶏飯のセットなどもお取り寄せできるので、ぜひ食欲の秋を楽しむメニューとして取り入れてみてはいかがでしょうか。

栄養のバランスが取れた食事が、健康長寿に繋がる

出典:農林水産省Webサイト( https://www.maff.go.jp/j/use/link.html )

出典:農林水産省Webサイト( https://www.maff.go.jp/j/use/link.html )

奄美群島は長寿の島としても知られています。

平成21年10月時点で、人口10万人あたりの100歳以上の人数が全国平均で31人程度なのに対して、奄美群島では116人以上もいたことが記録されています。これには様々な要因があると思われますが、その一つは「食」にあると考えます。

自然の恵みを大切にいただくこと、そうすることで自然と栄養のバランスもとることができ、日々を穏やかに過ごせるヒントにつながるのではないでしょうか。

「ニッポン地元メシ」過去連載はこちら

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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