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2021.09.20

秋はきのこに注目!シニアに欠かせない骨や腸に必要な栄養素がたっぷり

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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秋になると「きのこ」がたくさん出回ります。しかし、スーパーで購入できるきのこの多くは、実は旬はないと言えます。

ご家庭でよく使われるしめじやえのきたけ、舞茸、エリンギ、マッシュルームなどは、現代は人工栽培によって通年購入できます。本来旬とは、自然の中で育った作物や実の収穫の時期であり、いちばん美味しく栄養も豊富になる季節を言うので、その観点だと、これらのきのこには旬がないと言えるのです。

きのこの旬は、松茸から

では、きのこ=秋のイメージはどこから来たのでしょうか。

「松茸」などの菌根類は、生きた樹木の根から養分を受け取り育つため人工栽培が難しく、ほぼ天然でしか出回りません。天然物の旬は9~11月で、松茸がこの時期しか出回らないのはこれが理由です。
そのため、松茸が出回りはじめると秋の合図となり、”きのこの旬は秋”と認識されるわけです。

とはいえ、この時期になると店頭やレシピサイトではきのこを使った料理で賑わいますから、きのこは秋の食材の代名詞であることは間違いありません。

シニアに必要なきのこの栄養素とは?

きのこ類の栄養は一般に、糖質を代謝して神経系統の調整を行ってくれるビタミンB1、タンパク質・脂質・炭水化物の代謝に働いてくれるビタミンB2、体内の全酵素の約20%のサポート役を担っており皮膚や粘膜の正常化にもかかわるナイアシン、骨・歯の原材料となり筋肉の収縮作用にも重要な役割をもつカルシウムなどを含んでいます。

加えて、特にシニアに必要なビタミンDと食物繊維を多く含んでいるのが特徴です。さて、どうしてこれらの栄養素が大切なのでしょうか。

元気な骨に欠かせない「ビタミンD」

食べ物から摂取したビタミンDは、肝臓と腎臓の酵素により活性型ビタミンDに変換されます。活性型ビタミンDは小腸でカルシウムとリンの吸収を促してくれる役割をしています。つまり、カルシウムの吸収率をあげてくれる、というわけです。

カルシウムは元気な骨や歯に欠かせません。もともと不足しがちな栄養素の上、吸収率は年を重ねると低下していきます。吸収率のピークは12歳~17歳で45%、18歳以降どんどん下がりシニア世代の65歳以上では約25%にまで減少します。

骨がもろくなると転倒などのちょっとしたことで骨折が生じ、寝たきりとなる場合もあるため、特にシニア世代は気をつけなくてはいけません。骨粗しょう症にはカルシウムだけでなく、吸収率を高めてくれるビタミンDをとることが大切なのです。

きのこの中では乾燥きくらげに豊富に含まれており、水で戻したきくらげには生しいたけの60倍ものビタミンDが含まれています。ビタミンDの摂取を目的に選ぶなら「乾燥黒きくらげ」がおすすめです。

食物繊維は血糖値を抑え、腸内環境の改善に

きのこは平均で約3%の食物繊維を含んでいます。

食物繊維は便秘予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、特にシニア世代に嬉しい多くの生理機能があることが明らかになっています。

厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、一日あたりの食物繊維の目標量(生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっています。しかし最近の報告によれば、平均摂取量は一日あたり14g前後と言われているように、意識しないと十分にとれないのです。

シニア世代は腸の蠕動(ぜんどう)運動が低下していくのも特徴です。食物繊維を積極的にとることで、腸内細菌を増やし、腸内環境を整えるのはとても大事なことなのです。

シニアに食べやすい、きのこの調理法とは?

食物繊維が豊富なきのこは、一度に大量にとると消化不良をおこすこともあるため、毎日の食事で“ちょこちょこ”摂ることがおすすめです。

冷凍しておけばちょい足しに便利

傷みやすいきのこは、すぐに使いきれない時は冷蔵庫ではなく冷凍庫で保存するのが便利です。きのこの石づきを取り除き、ほぐしてからジッパー付き保存袋に入れて冷凍へ。こうすることで食事の支度ごとに下処理をすることなく、使う分だけ取り出すことができます。

また冷凍してから加熱すると、細胞膜が壊れて酵素の働きによってうまみが増すといわれているため、美味しさの意味でも一石二鳥です。

とりあえず困ったら汁物に

毎日どのように取り入れればいいの?と困った時は、とりあえず汁物に入れましょう。

きのこに含まれる水溶性食物繊維は腸内でゲル状になってコレステロールの排出を助けてくれるため、水分と一緒にとるのは理にかなっていると言えます。また、きのこの旨味成分グルタミン酸やグアニル酸は水溶性なので、煮汁に溶けだし美味しさもアップします。

どんな料理にも合わせやすい!低カロリーだからかさましにも◎

汁物に限らず、炒め物や煮物、和え物など、様々なおかずにプラスしてみましょう。きのこは100g当たり20kcalと極めて低カロリーな食品です。きのこでかさましをすれば、カロリーダウンに一役買ってくれますし、歯ごたえがあるため咀嚼の強化にも。シニア世代に嬉しいことがいっぱいあるのです。

きのこの下処理

きのこは洗わない方が香りが逃げず美味しいと言われています。また、人工栽培のものがほとんどですから土もあまりついていないため、買ってきたらキッチンペーパーでふき取る程度で大丈夫。

しかし、洗いたい場合は洗っても差し支えありません。気持ちよく食べることが一番です。軸は石づきのかたい部分以外は基本食べることができます。軸にも食物繊維が豊富なので、千切りにして炒め物に入れるなど工夫してみてください。

日々の食事にきのこをプラスしよう!

年中出回っているきのこですが、やはり秋に沢山楽しみたいもの。秋は美味しいものが沢山あり、ついついカロリーオーバーになる季節でもあります。きのこを取り入れるとカロリーセーブに役立つため、日々の食事で”ちょこちょこ”食べて健康に過ごしましょう。

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前田 量子(まえだ・りょうこ)

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管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、最新著書『おうちで一流レストランの味になるロジカル洋食』(全て主婦の友社)が好評発売中。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

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