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2020.01.29

40代以降が意識したい胃がんとは?リスク検査もチェック

ILACY

日本人に多いがんのひとつ、胃がん。ピロリ菌の除去による予防や内視鏡検査・手術など、医療の進歩によって、罹患数や死亡数は減少傾向にあるものの、早期の胃がんは自覚症状に乏しく、ほかの消化器系疾患の症状とも混同しやすいため、発見が遅れることが少なくありません。

ここでは、40代以降に意識しておきたい胃がんの基礎知識から検査方法まで、東京ミッドタウンクリニックの消化器内科医師・古川真依子先生に教えていただきました。

早期の胃がんは自覚症状に乏しく発見しにくい

――まずは、胃がんの概要と分類について教えてください。

一般的な胃がんは、何らかの原因で胃壁の内側にある粘膜ががん化して発生する悪性腫瘍です。中高年以降、特に40代後半から急激に増加し、60代から70代にかけて発症のピークを迎えるといわれています。

胃がんは、胃の内側の粘膜に発生し、進行すると次第に粘膜の外側にある粘膜下層(ねんまくかそう)、固有筋層(こゆうきんそう)、漿膜下層(しょうまくかそう)、漿膜(しょうまく)へと広がっていきます。

その深達度(どこまでがんが進んでいるか)によって、「早期がん(T1a~T1b)」「進行がん(T2~T4)」に分けられます。

早期がんは、がんが粘膜内および粘膜下層にとどまっているもの。進行がんは、粘膜下層を越えて浸潤しているもの。

進行がんという言葉は誤解を招くことがありますが、この分類はあくまでも「がんがどこまで浸潤しているか」を示すものであり、進行がんが末期がんを意味するわけではありません。

――「スキルス胃がん」という名前をよく聞くのですが、これはどういうものなのでしょう?

胃がんには、加齢に伴う細胞の老化によってできるものと、遺伝子の変異によって起きるものがあります。前者は、比較的進行が緩やかですが、後者は若い人でも罹患する可能性があり、進行も速いのが特徴。

スキルス胃がんは、その後者にあたります。発症原因が不確かで若年層の罹患も多く、胃壁の内側で沁み込むように広がっていくため、診断されたときにはかなり進行していることが多い、厄介ながんとして知られています。

――胃がんの早期発見につながる自覚症状はあるのでしょうか?

胃がんは、早期に治療できれば比較的予後が良いとされていますが、早期は自覚症状が出にくく、発見しにくいのも事実です。早い段階から感じることがある消化不良や膨満感、胃痛、胸やけなどは胃炎、胃潰瘍にも共通する症状なので、即座に胃がんと結び付けて考える人が少ないことも、発見の遅れにつながっているのでしょう。

食欲不振や倦怠感、体重減少、黒い便など、わかりやすい症状が出たときにはすでにかなり進行している可能性があります。

胃がんの原因の9割以上を占めるピロリ菌を除菌してリスクを下げるとともに、定期的な検査で早期発見に努めましょう。

ピロリ菌と胃がんの関係と検査方法、および除菌方法については、次の記事を参考にしてください。

バリウム検査だけでは、早期がんの発見にはつながりにくい

――胃がん検査の種類について教えてください。

胃がん検査には、自治体の胃がん検診でも早期発見に有効として推奨されている胃内視鏡検査、バリウムを使ったX線検査のほか、胃がんのリスクを判定するリスク検査(ABC分類)、血液中の成分を判定して発見や診断の足がかりにする腫瘍マーカーなどがあります。

また、異常が判明して進行度を診る場合には、超音波検査やCT検査が行われます。

――検査方法はどのように選べばいいのでしょう?

バリウム検査は、空腹時に飲んだバリウムが食道から胃を流れる様子を見て、流れが滞る場所がないかを確認するものです。外側から変化を見るので、胃壁を厚く硬くしながら広がっていくスキルス胃がんなどは見つけやすい反面、わずかな粘膜の変化は見つけにくかったり、炎症(胃炎)だけでは経過観察に振り分けられたりしてしまい、ピロリ菌感染や早期がんの発見につながりにくいというデメリットがあります。

一方、胃にカメラを挿入して直接内部を確認する内視鏡検査は、単なる胃炎でもピロリ菌感染によるものかどうかを診断することができるので、胃がんの予防につながります。ピロリ菌がいないことがわかっていれば、自治体によるバリウム検査をベースとして、2年に1度を目安に内視鏡検査を受けるという方法でもいいかもしれません。

――バリウム検査で要経過観察だった場合は、そのままにせず内視鏡検査をするべきでしょうか。

バリウム検査でA判定であれば、現時点で胃がんの心配はありませんし、ピロリ菌もいないと思っていいでしょう。ピロリ菌がいれば、少なくとも胃炎の診断はつくはずだからです。

BやCなど経過観察をすすめる判定がついた場合は、一度専門医に相談して、内視鏡検査をすべきかどうか判断するようにしましょう。ピロリ菌がいないことが明らかな人でも、ピロリ菌と無関係に発症する胃がんのリスクはあるので、一度専門医に相談することをおすすめします。

胃がんのリスクを検査する方法も

――胃がんのリスクを事前に知ることはできますか?

ピロリ菌の感染有無を確認する血液検査と、胃の萎縮(老化)の度合いを診るペプシノゲン検査を組み合わせて、胃がんリスクをA・B・C・Dの4段階で判定するリスク検査(ABC分類)は、私が勤務する東京ミッドタウンクリニックでも行っています。

2つの検査がともに陰性であれば胃がんリスクが低い「A」と判断されますが、あくまでも入り口の検査ですから、結果を過信せず、定期的に内視鏡検査やバリウム検査を受けることが大切です。

また、がん発生に伴って血液中に増える「腫瘍マーカー」と呼ばれる物質を調べ、発見や診断の足掛かりにする検査もあります。ただし、腫瘍マーカーの数値が高いからといって必ずがんがあるわけではありませんし、がんがあれば必ず腫瘍マーカーの数値が上がるわけでもありません。

しばらく胃がん検診をしていない方で、腫瘍マーカーの数値が高ければ内視鏡検査をする、腫瘍マーカーの数値が高くても内視鏡検査で異常がなければ胃がん以外の検査をするなど、指標のひとつと考えましょう。

――早期発見のポイントがあれば教えてください。

予防という意味では、ピロリ菌の検査と除菌が最も有効です。がんと闘うために必要な免疫力も、年齢とともに低下していきますが、ピロリ菌がいないだけで胃がんのリスクはかなり低減されます。

ピロリ菌は大人から子供への口移しで感染することも多いので、胃がんの家族歴があれば早めに検査を受けましょう。明らかな体重減少などの症状があって、1年以内に胃がん検査を受けていない場合は、速やかに専門医を受診することをおすすめします。20代より30代、30代より40代と、自分の体に対する意識を高め、チェックを怠らないことが大切ですね。

この記事を監修した人

参照元:https://www.ilacy.jp/maiko/post_191224.html

参照元:https://www.ilacy.jp/maiko/post_191224.html

古川 真依子 (ふるかわ まいこ) 医師

医学博士/日本内科学会 総合内科専門医、日本消化器病学会 消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医、日本消化管学会 胃腸科専門医、日本ヘリコバクター学会 ピロリ菌感染症認定医 、日本カプセル内視鏡学会 カプセル内視鏡認定医、日本人間ドック学会 人間ドック認定医
専門分野:消化器内科・内科

2003年東京女子医科大学卒業
東京女子医科大学附属青山病院消化器内科で医療錬士として関連病院等にて診療にあたり、2008年帰局後は助手として指導にも尽力。2013年より東京ミッドタウンクリニック勤務。胃がん・大腸がん・腫瘍など消化器系の疾患だけでなく、便秘や産後の痔など女性ならではの悩みにも詳しい。

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