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2020.04.04

原因は生活習慣にあり?ドライマウスの予防と改善のコツ

kencom公式ライター:森下千佳

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普段気にすることのない唾液ですが、唾液の量が少なくなるとQOL(生活の質)が大きく低下するだけでなく、様々な病気の一症状として現れることがあると、前回の記事ではお伝えしました。では、もしドライマウスの症状が現れたらどうしたらよいのでしょうか?

後編では、病院での治療方法と、自宅でできる改善方法&予防方法をお伝えします。教えていただくのは、前回に引き続き、鶴見大学歯学部附属病院准教授の中川洋一先生です。

ドライマウスの検査方法

問診・視診・唾液の検査が基本

ドライマウスが疑われる場合は、原因を探る検査と、口の中の状態を確認する検査を行います。

ドライマウスは原因によって対処方法が違うため慎重に検査を行います。問診では、服用中の薬や病気がないかどうか、生活習慣でのストレスの有無などについて確認。視診では、口の中の乾き具合や炎症があるかどうかを見ます。その上で、決められた時間でどれだけの唾液が分泌されるかを調べる唾液分泌検査によって、ドライマウスか否かの診断をします。

万が一、シェーグレン症候群が疑われる場合には、血液検査、唾液腺の造影検査や病理検査なども行います。

ドライマウスの治療方法は?

原因となる薬や生活習慣などの改善プランをたてる

ドライマウスの原因が判明した場合には、その原因を取り除く治療を行います。
糖尿病、腎疾患、貧血などの基礎疾患がある場合は、そちらの治療が優先です。薬の副作用によってドライマウスの症状が出ているのであれば、担当医と連携して薬剤の変更や減量の調整をしていきます。

ストレスが原因である場合は、生活習慣の改善を考えていきます。もし、出社できない、不登校などの重度のストレスを抱えている場合は、心療内科の医師や、カウンセラーと連携を取りながら改善していくこともあります。

こうした原因別の治療をした上で、唾液分泌促進薬や、ドライマウス用のケア用品を使った対症療法も合わせて行っていきます。

ドライマウスは予防&改善できる!自宅でできるセルフケア

よく噛んで咀嚼回数を増やす

ドライマウスは、生活習慣を見直すことで予防や症状の改善をすることができます。唾液の量が減っている場合は、分泌量を増やす工夫をすることが重要です。

唾液は、咀嚼や味覚の刺激で分泌されます。そのため、食事は抜かずに、メニューも柔らかいものばかりではなく固めのものを選んでしっかりと噛むようにしましょう。虫歯や歯周病があったり、入れ歯が合わなかったりすると咀嚼回数が減ってしまいます。その場合は、歯科医院で噛み合わせや口の状態を改善することが大切です。

マウスウォッシュ、保湿ジェル、保湿スプレー

口内を潤すマウスウォッシュや、保湿スプレーなどはドラッグストアでも手に入るので、それらを利用しても良いでしょう。甘味や、酸味がついているものも多く、唾液の分泌を促す効果も期待できます。

口の力を抜く姿勢を身につける

仕事中やパソコンを使っている時に、舌に力が入ったり、舌を上あごに押し付けるような癖がある人は、姿勢を直すだけで改善することがあります。

背筋を伸ばし姿勢を良くして、あごを少し引くようにします。あごの先端を突き出さないようにするのです。そうすると、自然に歯の噛みしめが緩み、舌の力が抜けて緊張がとれてきます。こうなると、舌の奥が上あごから離れ、舌に押されることで薄くなっていた唾液の膜が元の状態に戻り、乾燥感が和らいできます。

ストレスをなくす

誰もが、緊張すると喉が渇きますよね?
これは自然な生理反応で、緊張すると脳が唾液の分泌を止めるよう自律神経に指令を出すからです。ストレスがかかると、同じようなメカニズムで慢性的に唾液の分泌が少なくなってしまいます。

ストレスを発散するように休日の過ごし方を変えてみたり、家族や同僚の力を借りてストレスの原因となるものを取り除いたり、リラックスできる時間を意識して作ることが大切です。

マウスピースを使う

夜寝る時に口が渇く人は、マウスピースを使うことも検討してみましょう。上顎にはたくさんの唾液腺があるので、ここをマウスピースで覆うことで、寝ている間の唾液の蒸発を抑えることができます。

マウスピースの内側に、保湿ジェルを塗ってから装着するとより効果的です。マウスピースはオーダーメイドのため、かかりつけ医や歯科医院で相談してみてください。

セルフケアで改善しない時は、早めの受診を

よく噛むこと、ストレスをなくすこと。ご紹介したセルフケアを心がけるだけで、ドライマウスの予防・改善を目指すことができます。

唾液は、口のみならず全身の臓器を守る役目を担う大切な身体機能です。セルフケアによって改善が見られない場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

中川洋一(なかがわ・よういち)先生

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鶴見大学歯学部附属病院准教授 
1980年鶴見大学歯学部卒業。同病院のドライマウス外来、口臭外来、口腔粘膜、舌痛外来の主任も務める。専門は、ドライマウス、口臭、口腔粘膜疾患、口腔外科疾患全般。日本口腔外科学会認定専門医・指導医。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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