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2020.04.04

口臭・味覚障害の原因にも。意外と知らないドライマウスの基本

kencom公式ライター:森下千佳

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「最近、喉が乾いて口の中がネバネバする」「口臭が気になる」「食事が美味しく感じられない」。これらの悩みは、唾液の分泌量の減少などによる「ドライマウス」(口腔乾燥症)によるものかもしれません。

私たちの基本的な活動を支えるのに欠かせない唾液が減少すると、QOL(生活の質)は大きく低下します。それだけでなく、ドライマウスは様々な病気の一症状として現れることもあります。

ドライマウス治療の先駆者である鶴見大学歯学部附属病院准教授の中川洋一先生から、症状や病気の基本を教えてもらいました。

中川洋一(なかがわ・よういち)先生

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鶴見大学歯学部附属病院准教授 
1980年鶴見大学歯学部卒業。同病院のドライマウス外来、口臭外来、口腔粘膜、舌痛外来の主任も務める。専門は、ドライマウス、口臭、口腔粘膜疾患、口腔外科疾患全般。日本口腔外科学会認定専門医・指導医。

ドライマウスとは?

唾液の分泌が減ることで、様々な不調が起きやすい状態

ドライマウス(口腔乾燥症)とは、唾液の量が減って、口の中が乾燥したり、喉が乾いたりする症状のことです。何らかの原因で唾液の量が減ってしまったり、唾液が過剰に蒸発して、口の中が乾燥することによって起こります。

それにより、舌がうまく回らなくなったり、水分の少ない食べ物が食べにくくなったり、痛みや、口臭、歯周病、味覚障害などが引き起こされることもあります。

男性よりも女性の方が多く、特に高齢者になると唾液の分泌量が減る上に、常用されている薬の副作用によってドライマウスになりやすいのです。昨今の超高齢化社会の動きに合わせ、今後は患者数が増えていくと言われています。

唾液の働きとは

唾液の分泌量は、成人では1日に約1〜1.5Lです。

主な唾液の働きは、
・ものを洗い流す、洗浄作用
・食べ物のでんぷん質を糖に変えて、体への吸収を助ける消化作用 
・口の中のウイルスや細菌の増殖を抑える抗菌作用 
・酸によって歯から溶け出したカルシウムを歯に戻して修復する再石灰作用
・食べ物をとかして、舌に味を伝える作用
・粘膜の表面をカバーして、舌が摩耗しないようにする湿潤作用

などがあり、唾液が減るとこれらの働きが妨げられるため、虫歯や歯周病になりやすいなど、舌の粘膜に炎症が起きたりすることがあります。

ドライマウスの原因は?

加齢、ストレス、薬の副作用が影響する

ドライマウスの主な原因としてあげられるのは、加齢によるものです。加齢によって唾液を作る唾液腺の機能が低下し、唾液の分泌量が減ることで起こります。他にも「強いストレス状態が続いている」「抗うつ薬や抗アレルギー薬など口が渇く副作用を持った薬剤を服用している」などの理由により、唾液の分泌量が低下することもあります。

生活習慣の中では、口を開けて寝ていたり、鼻炎などがあって口呼吸をすることで、唾液が蒸発してしまい口の中が乾燥することもあります。また、舌を上あごに強く押し当てるくせがある人も要注意です。あごの間に隙間ができなくなるため、舌の粘膜に唾液が行き渡らず、乾きやすくなります。

全身の病気が原因となることがある

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特に、気をつけなくてはいけないのは、全身の病気との関係です。糖尿病や肝臓病などの病気が重症化した時にも、ドライマウスに現れることがありますし、自己免疫疾患の難病、「シェーグレン症候群」は唾液腺や涙腺の細胞が壊されてしまうため、唾液の量が減ってしまいます。

ドライマウスはどんなリスクがある?

口腔内の疾患に加えて生活習慣病が見つかることもある

パンなどの乾いたものを食べると、口の中がパサついて飲み込みにくい場合は、唾液が減っている可能性があります。ドライマウスの自覚症状は、口の中の乾燥感、痛み、味覚異常が一般的ですが、中には舌が膜を張った感じがするとか、ザラザラした感じがするなどの訴えも少なくありません。ひどくなると、会話や食事がしにくくなったりもします。

ドライマウスは慢性化すると辛いだけでなく、まれに他の病気が隠れていることがあります。唾液が減少することで、唾液の抗菌作用や自浄作用が妨げられ、口の中の細菌層に変化が起きます。例えば、常在菌であるカンジダ菌が増加すると、粘膜に炎症が起きたり誤嚥性肺炎を引き起こしたりします。

喉や口の中が慢性的に乾く状態が続く場合は、糖尿病や腎疾患が隠れている場合がありますし、同時に目も乾く場合はシェーグレン症候群の可能性もあるのです。

自覚症状をチェック

ドライマウスになると、下の表のような症状が出るときがあります。誰しも緊張したときなど、一時的に口が乾くことがありますが、慢性的に症状がないかどうかを確認してみましょう。

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ドライマウスへの対処は、原因究明と正しい治療!

セルフチェック項目の症状が3ヵ月以上にわたり続いたり、痛みなどが辛く感じたような場合は、歯科や内科、皮膚科、またはドライマウスに詳しい医療機関を受診しましょう。後半では、ドライマウスの具体的な検査方法や治療方法、そして、未然に防ぐための予防方法を詳しくお伝えしますので、ぜひご一読ください!

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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