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2018.01.31

人は何故白髪になるのか?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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髪の毛は目立つ場所にあるだけに、他人の視線が気になるもの。
加齢に伴い、白髪が増えることに悩んでいるかたも多いのではないでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「石原藤樹のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2017年のGenes & Development誌に掲載された、白髪に関連する遺伝子の働きについての論文です。これは昨年結構話題になり、医療ニュースなどでも取り上げられた知見です。

▼石原先生のブログはこちら

白髪に脱毛。髪の毛の悩みは尽きない

白髪の原因はいまだに不明

髪の毛の悩みというのは命に関わることはない反面、男女を問わずその個人にとっては、結構深刻なものではあることは、大して効くとも思えない育毛剤が莫大な売り上げを上げていたり、白髪染めが多くの人にとって手放せない物になっていることからも分かります。

脱毛の仕組みも白髪になる仕組みも、研究は進んでいますがまだ不明の点を多く残しています。
そして、ちょっと意外な気もしますが、より分かっていないのが白髪の原因です。

そもそも、髪の毛になぜ色があるのか

髪の毛に色が付いているのは何故でしょうか?

これは髪の毛の根元にメラニン色素を産生する、色素細胞があって、そこで作られたメラニンが、毛の元になる毛母細胞に伝達されてゆくからです。

毛母の色素細胞がメラニンを産生するには、造血機能の初期段階で働く造血細胞成長因子である、幹細胞因子(SCF)というタンパク質が働くことが分かっています。
しかし、それがそのようにして働くのかについては、あまり明確なことが分かっていませんでした。

白髪の仕組みや条件を検証

SCFの遺伝子が欠損すると、色素がない毛が成長する

今回の研究はネズミを利用した動物実験において、その体毛が白くなる条件や仕組みを検証しています。

上記論文の研究者がSCFと共に注目したのは、毛包の上皮細胞で発現している転写因子の1つである、KROX20というタンパク質です。

このKROX20という転写因子の遺伝子が欠損したネズミは、毛母細胞が増殖せず、毛幹の成長自体が起こりません。
一方でKROX20は発現している状態で、SCFの遺伝子が欠損したネズミでは、毛は成長しますが色素のない、人間であれば白髪の状態となります。

毛の成長と色素が入ることには密接な関係が

それを図示したものがこちらになります。

毛包の上皮細胞のうち、KROX20という転写因子を発現している細胞が、SCFを分泌して色素細胞を刺激し、メラニンを賛成しつつ毛母細胞を分化し増殖して、毛が成長するのです。

ポイントは毛の成長と毛に色素が導入されることとは、かなり密接にリンクしているということです。

SCFの調節が可能なら、白髪を元に戻せる可能性も

ただ、毛に色素が入るかどうかは、SCFによって決定されているので、毛髪の周期に合わせてその遺伝子の調節が可能となれば、白髪を元に戻すことも、可能ではないかと考えられるのです。

今後の知見の積み重ねに期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36