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2024.03.17

破傷風ワクチンは「大人でも必要」だと知っていますか?破傷風ワクチンが誰に必要なのかを皮膚科専門医が解説

Lumedia

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まとめ

●破傷風は傷などから破傷風菌が入り込んで発症し、命を落とすこともある怖い病気ですが、ワクチン接種で予防できます。
●1967年以前に生まれた方は破傷風ワクチンを接種していない場合が多いので、積極的にワクチン接種をご検討ください。
●破傷風ワクチンで得た免疫の効果は徐々に落ちていきます。1968年以降生まれの方もワクチンの定期的な追加接種を検討しましょう。

『破傷風』という病気をご存知でしょうか?

災害の復旧や屋外活動に関するニュースで耳にしたことがある人もいるかもしれません。
この破傷風という病気は、命を落とすこともある怖い病気ですが、現代は非常に有効なワクチンが存在します。

今回の記事では、破傷風について、そしてワクチンはどのような人が接種するべきか解説します!

この記事を書いた医師

江畑 慧(Satoshi Ebata)
医師 / 皮膚科専門医 / 医学博士

Lumedia編集長。静岡皮膚科(2024年3月開業/静岡駅徒歩3分)院長。Yahoo!ニュース公式コメンテーター
Lancet姉妹誌などに多数論文掲載。東大病院病院長賞などを受賞。適切な科学的根拠に基づくスキンケア情報を発信中。

【目次】
1.破傷風ってどんな病気?ワクチンがある?
 1.1.破傷風は命を落とすこともある怖い病気
 1.2.破傷風による死亡はワクチン接種で防げる!
2.破傷風は過去の病気?昔ワクチンを打っていれば大丈夫?
 2.1.破傷風は過去の病気ではない
 2.2.1967年以前に生まれた人は要注意!ワクチンを打ってないかも?
 2.3.定期的なワクチン接種が大切!
3.破傷風を正しく予防しよう!

破傷風ってどんな病気?ワクチンがある?

破傷風は命を落とすこともある怖い病気

破傷風菌という細菌が作る毒素によって起こる感染症です (参考文献 1,2) 。
破傷風菌は空気が苦手で、土の中などに存在します。

土で汚れた傷などから破傷風菌が入り込むと、破傷風にかかって様々な神経の症状が出ます。まずは口が開きにくい、アゴが疲れるといった症状が現れます。
次に少しずつ歩行や排尿・排便の障害などが起こります。
最終的には、全身の筋肉が固くなって体を弓のようにそり返らせたり、息ができなくなったりして、残念ながら命を落とすこともあります。

破傷風による死亡はワクチン接種で防げる!

昔は、破傷風で亡くなる赤ちゃんが多く、大きな問題となっていました (参考文献 1,2) 。

しかし、日本では1968年から、破傷風を防ぐワクチンの定期接種を子供が受けることになりました。
ワクチンを受けるスケジュールとしては、標準的に生後2-12ヶ月の間で3回、1,2歳の頃に追加で1回、そして11,12歳のときにも1回注射します。
破傷風ワクチンの名前は他の感染症に対するワクチンも合わせた4種混合 (DPT-IPV) ワクチン、3種混合 (DPT) ワクチン、2種混合 (DT) ワクチンなどです。打っているか不安な人は母子健康手帳にこれらのワクチンの接種歴があるか確認してみましょう。

破傷風ワクチンの定期接種が日本で広がって以降は、破傷風で命を落とす赤ちゃんの数は激減しています!
破傷風はワクチンを正しく打てばほぼ 100% 防げる病気です。
日本で赤ちゃんが破傷風で亡くなった例は、21世紀では一度も報告されていません。

破傷風は過去の病気?昔ワクチンを打っていれば大丈夫?

破傷風は過去の病気ではない

21世紀に入ってから、日本での破傷風による赤ちゃんの死亡例はありません。
しかし、破傷風は「過去の病気」ではありません (参考文献 1,2) 。

今でも日本では年間で約100人の方が破傷風を発症します。
そのうち、5名から9名程度の方が、破傷風が原因で命を落とされています。

近年、破傷風を発症することが多いのは、赤ちゃんではなく30歳以上の大人です。
現代日本では、破傷風は「大人の病気」との要素が強いのです。

1967年以前に生まれた人は要注意!ワクチンを打ってないかも?

破傷風の発症に特に気をつけていただきたいのは、誕生日が1967年 (昭和42年) 以前の方です (参考文献 1) 。つまり、2024年の誕生日を迎えた時点で、年齢が57歳以上になられる方々ですね。

先述したように、日本で赤ちゃんへの破傷風ワクチンの定期接種が始まったのは、1968年 (昭和43年) です。したがって、それよりも前に生まれた人は、破傷風のワクチンを1回も接種していないケースが多くあります。

破傷風に対して、ワクチン無しで自然に免疫がつくことはありません。
破傷風で命を落とすリスクを防ぐため、破傷風ワクチン未接種の方は積極的にワクチン接種をなさると良いでしょう。

定期的なワクチン接種が大切!

一方、破傷風ワクチンの接種を子供時代に済ませた方でも、追加の破傷風ワクチン接種は有効です。

実は、破傷風に対する免疫 (抗体) は、最後のワクチン接種からの間隔があくにつれて低下していくのです。
そのことを具体的に示した研究があります。2009年から2010年にかけて国立国際医療研究センター病院の救急外来を怪我で受診された方々について、「十分な量の抗体を持っているかどうか」を調べたところ、

●20歳以下の患者 ⇒ 全員が破傷風に対して十分な抗体を持っている
●21~30歳の患者 ⇒ 6.7% の方が、破傷風に対して十分な抗体を持っていない
●31~40歳の患者 ⇒ 15.6% の方が、破傷風に対して十分な抗体を持っていない

との結果でした (参考文献 3) 。

子供時代にしっかりと破傷風ワクチンを打った年代でも、年齢を重ねるにつれて破傷風への免疫が不十分になっていきます。
免疫を下げないためには、1968年以降に生まれた大人でも破傷風ワクチンを追加接種する必要があります。

日本では、大人が破傷風ワクチンを追加接種するタイミングについての規定はありません。

参考までに、アメリカでは大人は「10年おき」に追加接種を行うことになっており、そのスケジュールを守っている方ではほぼ破傷風の発症はありません (参考文献4) 。
「何年おきに破傷風ワクチンを受けるのがベストか?」について明確なデータは出ていないのですが、アメリカの指導に準じて10年おきに破傷風ワクチンを追加接種しておけば破傷風を発症するリスクを下げられます。

先述したように、破傷風は命をうばうこともある怖い病気です。
日本では11歳か12歳を最後に破傷風ワクチンを接種していない方が多いでしょう。
本記事を読んでいる時点で22歳以上の方は、今後は10年おきに破傷風ワクチンを接種しておけば安心だと言えそうですね。

また、ガーデニングが趣味という方は、破傷風への注意が特に必要です。

ガーデニングと破傷風の関係に関しては、2000年から2014年にかけて行われたフランスの研究が有名です (参考文献 5) 。
フランス各地の集中治療室へ破傷風で入院した70人の患者について調べたところ、なんと「44%」もの方がガーデニングでの傷がありました。

土いじり中の傷は破傷風を招く原因となりますから、ガーデニングをなさる方は破傷風ワクチンをしっかり接種するほうが良さそうですね。

破傷風を正しく予防しよう!

以上、今回は破傷風について説明しました。

1967年以前に生まれた方はぜひすぐにワクチンを接種いただきたいですし、それ以外の大人でもワクチン接種の間隔が空きすぎないようにご注意くださいね。

破傷風はワクチンを適切に打てば防げる病気なので、正しい知識に基づいてご自身やご家族の健康を守って頂けますと幸いです。

COI

本記事について、申告すべき COI はありません。

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参考文献

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